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来た!ドラゴン肉!〜エルフは意外とハイテンション!?〜その1

お待たせ致しました。

楽しんで頂ければ幸いです!!


「何だってまたこんなところに。本当にこっちに里があんのかね。」


 生い茂る草を掻き分けながら進むローガンは手をとめずにぼやいていた。

 後ろからはアレクトラとユーリエの二人だ。


 三人は遺跡を楽しんだ後、今度は旅の直後と同じく再び森の中にいた。

 しかしながら今度は遭難したわけではない。


 準備も整っているので、五日くらいは食料を調達しなくても過ごせる段取りでいた。

 

「隠れているわけではないのだから、本当にあるのだろうよ。ほれ、早く進もう。」


「っちぇ、冒険者使いの荒い爺さんだ。」


「ローガンさん、それは流石に言い過ぎかと。」


「なに、構わんよ。ほれ、ローガン、もっと歩きやすい道にしてくれ。」


 かっかっと笑うアレクトラにローガンは苦虫を噛み潰した表情で草を掻き分ける範囲を増やした。


 本当に仲が悪いわけではないだろうわかるユーリエはくすくすと二人を見て笑った。


 三人の目的、それはエルフの村だった。


 事の起こりは単純で、遺跡から戻った三人はその途中珍しいことにエルフの行商人と出会った。

 魔物に興味があると伝えると、エルフは元々魔物をよく食しているから、行ってみるといい、と村の場所を教えられたのである。


 それで森に入ったが、近いと聞いていたのにもかかわらず、二日ほど目的の村の影一つ見つけられていないので、冒頭のローガンの言葉が出たわけだった。


 だが今回は準備している上に方向を聞いて、朝晩二回太陽と星を見ているので、間違えてはいない筈だ。


 だからこそ、二日も歩いてないもないことに、もしかしたら騙されたのではないかと、ローガンは不安な気持ちを覚え始めていた。


 そろそろ戻るかどうかを決めないと、帰りに新たに食料を調達する必要も出てくる。

 ローガンとしては、少しばかりボヤきたくなったとしても、しょうがない話、ということだ。


 それがわかっているからアレクトラもローガンの言葉を不快に思うこともない。何となれば、申し訳ないと思っているのは彼の方であり、村よ早く見つかってくれと願うのは彼もまた同じであるからだった。


 


 しばらく進み続けていると、不意にローガンが二人に見えるように手を振り上げた。


「どうしたん・・・・・・。」


「しっ!」


 怪訝な声を上げるアレクトラに、振り向いて己の口元に人差し指をあてたライアンだった。

 その眼差しは鋭く、油断なくチラチラと周囲へと散りばめられていた。


「・・・・・・気のせい、か?」


 どれくらいの時間が経ったのだろうか。ローガンの声と共に一斉に肩の力を抜く一同だったが、突如草むらを動く騒がしい音と共に、ユーリエから悲鳴が上がった。


「きゃあっ!」


「お嬢!」


「ユーリエ!!」


 慌てて彼女の方に顔を向けた一同が目にしたものは、ユーリエの首元に鏃を突きつける一人のエルフと、緊張で身体を硬直させている彼女だった。


 すでにその榛色の瞳には薄らと涙も滲んでいる。


「くそっ、てめえ!」


「彼女から手を話すが良い、下郎。」


 瞬時に男二人の身体から強烈な怒りが滲み出た。それらは全てユーリエに鏃を突きつけているエルフの男に向けられているが、彼もまた己の村に勝手に踏み込もうとしているチグハグな雰囲気の彼等に不審な感情を顕にしていた。


「貴様らは何者だ。何の用があって、誰に聞いてここへ来た。返答次第では、この女の命は無いものと思え。」


 言い切ると同時にユーリエを羽交い締めしている腕に力を込めた。

 ユーリエの表情が更に強張った。


 前に出ようとするローガンを手を制して止め、アレクトラは一歩前に出た。



「儂の名はアレクトラ三世、エクロニアの国王だったものだ、といえば分かりやすいか?隠居し、共の二人と共に各地を回っている。エルフの村へも、先日会ったエルフの行商人リリカカから話を聞いてやってきた。理由は、そなた達が魔物を普段から食べていると聞いたからだ。」


 男はエクロニアという単語を耳にした瞬間大きく目を見開いた。それもそうだろう、エクロニアといえば曲がりなりにも自分達が所属する国だ。しかも過去からの盟約で、外に出た者達以外からは税金も問わないし、その他の権利も行使しないと取り決められていた。他国と比べて破格と言ってもいい待遇を与えてくれている大国なのだ。


 目の前の初老の男の言うことが正しければ、ここで判断を間違えることは出来ない。


「・・・・・・貴殿の言葉を証明する方法はあるか?」


 男はそれでも油断なく観察しながらも、腕の力をやや緩めた。

 ユーリエがホッとしたように身体の力を僅かに抜いた。


 アレクトラは思考する。旅に出るときに金銭以外の物は持ち出していない。実際権力を行使することなど考えていなかったのだから、当たり前といえば当たり前であるが、もしもの為に何か一つくらいは身分を明らかにする物を身につけておけば良かった、と後悔した。


 そこへ、今度はローガンが一歩前に出た。エルフの視線がローガンの方は向いた。


「俺はローガン・マクベリウス。S級冒険者をしている。エルフの戦士ククリューと冒険を共にしたこともある。俺自身を持って身元及び話を信用して貰えないだろうか。」


 両手を上げて、戦意がないことを見せつけながら、ローガンは堂々とした口調でエルフに語りかけた。


 エルフの冒険者の知り合いがいた事は初耳だったが、やはりローガンという男は優秀だとアレクトラはその認識を深くした。



 エルフの男は思案する様にローガンとアレクトラに交互に目を向けていたが、信じる気になったのだろう、ユーリエの首元の鏃を下ろした。


「信じよう。女性を人質にした無礼、謹んで詫びさせてもらう。」


 言い切るとユーリエの身体を離した。その場に崩れ去りそうになるユーリエを、駆け寄ったアレクトラとローガンが支える。


「ありがとう、ございます。緊張、しました・・・・・・!」


 ふうっと大きく息を吐いたユーリエに、気遣う視線を向けていた二人は、思わず微笑んでいた。

 

「それでは村に案内させてもらうが、完全に信用したわけではない。くれぐれも変な事はしないで欲しい。」


「わかった。」


「ありがとう、何と呼べば?」


「アレクトラで良い。」


「俺もローガンと呼び捨てで。」


「わかった。先程は女性の貴方に失礼をした。お名前を、伺っても?」


「ユーリエ・シャルマです。」


「そうか、アレクトラ殿にローガン、それにシャルマ殿。俺の名前はレカラタという。村まで案内しよう。」


「わかった、よろしく頼む。」


 ローガンがそういうと、レカラタと名乗ったエルフは緊張を解くかのようにふっと、頬を緩めた。


 途端にエルフが本来持っている見目の整った風貌と合わさり、悪いことにはならないだろうと三人に思わせるくらいには、レカラタはその瞬間には信用を勝ち得たのだった。


 こうして一行は、それから数刻後には、エルフの村へと足を踏み入れたのだった。

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