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とりあえず、塩か?〜大なめくじ〜その2

少し短めですが、、、。


楽しんで頂ければ幸いです。


 民家らしき建物の中は、がらんとしていた。埃が積もり、タンスや棚であったのだろうものは風化し、かろうじて崩れずに済んでいるという、有様だった。


 ローガンは油断なく周囲を見渡しながら、中央に据え置かれたテーブルへ手をついた。

 埃がつくのも厭わずに、ゆっくりと体重をかけていったが、テーブルは思ったよりも頑丈だったようだ。


 みしりと軋む音を奏でつつも、ローガンの重さに耐えることが出来たのは優秀だ。

 

「使えそうだな。」


 頷いたローガンはローブの裾で上に溜まった埃を落としていった。

 



「ふう。」


 ユーリエふわふわと火照った顔を煽ぎながら、机へと腰を乗せた。

 

 だがどうしたことだろう、あまりおさまる様子がない。


「おい、嬢ちゃん。大丈夫か?随分と熱っぽい感じだが。」


「えっ?はい。」


 心なしか頭もぼうっとしている気がする。いつもならすぐに反応出来る会話も、薄い膜を一枚重ねたように、言葉が浮かばなかった。


「どれ。」


 ふと、近づいて来たアレクトラがユーリエの額に手をやった。

 アレクトラの手はひんやりとしていて気持ちがいい。



「ハァ。気持ちいい。」


 気持ち良さそうに目を細めるユーリエに、アレクトラは気不味そうに手を離した。彼女の方もまた、自分の反応がそうさせたのだと気付くとわたわたと慌てふためいた。


「あっ、いえ、違うんです!なんだか熱っぽくて、それで、その手がひんやりで、ひやひやで、あの!」


「どうやらまじもんの熱みたいだな。旦那、多分疲れが出たんでしょう。まだ時間としては早いですが、今日はここで一泊しよう。」


 くっくっと喉を鳴らし笑うローガンをユーリエは上目遣いに睨みつけた。だが熱のせいで潤んだ瞳では、迫力に欠ける。


 足は引っ張りたくない。そうは言いながらも、決定権を持つのはアレクトラであり、断る術はなかった。


 敷物をしき、ユーリエが横になれるように場所を整えた二人に礼を言って彼女は横になった。


「むう。」


 やはり疲れていたのだろう。横になった途端すぐに寝息を立て始めたユーリエをみて、心配そうに唸り声をあげるアレクトラの肩をローガンは叩いた。


「まあそんなに心配しなさんな。」


「だが・・・・・・むう。」


「どうやら旦那は心配性なようだな。」


「ああ、病気にかんしては、な。」


「ああ、悪い。」


「いや、問題ない。」


 ローガンは内心で舌打ちをした。


(バカ、そりゃ心配性にもなるだろ。俺は旦那の話の何を聞いていたんだ。)

 

 だがここで更に詫びたとしてもおかしな話だ。申し訳ないという感情を抱きながらも、ローガンはこと更に明るい声を出した。


「さて、んじゃあ俺らは周囲を探索でもするか!」


「むっ?だが彼女をこのままには出来まい??」


「大丈夫だ。この遺跡にはデカい魔物はいるが、人を襲う奴はいない。それに、熱が出てるんだ、水も調達したいしな。」


「なるほどな。では少し辺りを見るか。」


 二人は身軽になり、散策しやすい用意を整えると、ユーリエを起こさないようにゆっくりと建物を出た。

 



 二人が探索を始めて半刻ほどだろうか。


 水はすぐに見つかった。中央の広場のようなところに、地下の湧き水を利用した噴水があったのだ。

 ローガンとアレクトラ互いに歓声をあげて噴水へと近づいた。

 二人としても、水分はありがたかった。


 近付き、噴水の状態を確認する。

 水自体は汚くはない。だが貯水部分が問題だった。長年で発生した苔やカビが、そこかしこにへばりついていたのだ。

 これでは少しでも混ざると腹を壊す可能性がある。


 ローガンはそれらを舞い上がらせないように慎重に手のひらで水を掬うと、それを口に含んだ。


 一応口の中で転がしてみるが、至って普通の水のように思える。


「問題はなさそうだ。」


「そうか。」


 水を飲み込んだローガンは頷いて、皮の水筒を取り出し、先程と同じようにそっと水を汲み始めた。


 アレクトラも後に続こうと水筒を取り出した時だった。噴水の周りに積み上げられた石、その隅の方で何かが動いているのがみえた。


 もぞもぞと緩慢な動きで伸縮しながら前に進むそれは、どうやら自分たちと同じように噴水の水を飲みに来たようだった。


 だが、アレクトラは思わず息を呑んでいた。


(大きい・・・・・・!)


「どうした?旦那・・・・・・ああ、アレがさっき言ってたやつだな。」


 それはアレクトラの腰くらいの大きさがあった。てらりとぬめりを持った身体と、頭上から真っ直ぐ伸びた二本の触覚。

 ずるずると緩慢な動きで進んではいるが、その歩みはあまりにも遅かった。


 二人の見ている前で触覚の下のあたりを噴水に沈めて水を飲んでいるそれは、アレクトラから見て気持ち良さそうに見えた。




 思いがけない魔物との遭遇に、まだ口を開けてそれを眺めているアレクトラに、ローガンはニヤリといつもの調子で口角を上げた。



「旦那。大なめくじだ。」






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