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〜マンイーター〜果実パイは甘くて苦い その6

なんとか予定通り、次回実食です。


本日、王様は今日も考えるの幕間も投稿しております!是非ご確認ください!!


楽しんで頂ければ幸いです。


 ローガンと別れたユーリエは残った朝食を平らげながら、何を作るか考えていた。


(あの果実は甘味が強いから、あまり砂糖なんかを使わないのがいいわね。そうなるとクリームやジャムはダメね。男性だし、量も多少あった方がいいわね。うーん、何がいいかしら。)



 素材の味を活かせて、満足出来る食べ応えのもの。

 せっかくの大きい果実なのだ、風味をつける程度で使ってしまったら勿体がない。


 ユーリエは考えていても仕方がない、と街に出ることにした。


 



 時刻は昼前ということもあって、街には多くの人がいた。

 ユーリエは気になるもの見つけては立ち寄り、わからないことは聞いていった。


「これはなんですか??」


 五件ほど覗いたあと、ユーリエは再び気になるものを見つけて足を止めた。

 店番をしている老婆へと声をかける。



「いらっしゃい。これはタルトパイというものだよ。果実を上に乗せたり中に入れたりしてるんだ。」


「へえ。」


「味見してみるかい?」


 そういうって老婆は苺が乗ったタルトパイを一口大に切り取るとユーリエに手渡した。


「いただきます!」


 初めてみる食べ物だ。ユーリエは期待を胸にパイを齧った。


「っ!!美味しい!」


「ありがとうよ。本来なら下にクリームやジャムを敷くんだけどね、砂糖は高いからみんな買えないだろう?だから生地を薄くして甘味や酸味の強い果実を使っているのさ。」


 老婆がにこやかに説明するとユーリエは勢いよく老婆の手を握りしめた。

 これだ!ユーリエは自分の目的のものだと確信した。


 驚く老婆に頼み込む。


「お願いします!!お金ならお支払いしますから、作り方を教えてください!!」



「こりゃあ驚いたねえ。うーん、どうしようかね。」


「お願いします!お願いします!!」


「はぁ、わかったよ。じゃあちょっと早いけど明日の分を仕込むから、手伝いながら覚えるといいさね。」


「っ!!!ありがとうございます!!」


 最初は渋っていた老婆も、ユーリエの熱意に絆されてついには承諾した。

 やれやれと首を振る老婆にユーリエは大きく頭を下げるのだった。







 ユーリエが、老婆の店を出る頃には昼をゆうに周り、空は少し黄ばみ始めていた。

 手伝いをしていた為、衣服は小麦粉がついていて所々白くなっていた。


 ユーリエは白くなっている所を叩くと、宿への帰り道を急いだ。

 

 宿屋の入り口の手前でちょうど酒を抱えながら帰ってきたローガンと出くわした。


「おお、嬢ちゃん。なんだか汚れてるな。」


「ローガンさん!ちょうどいいところに!あの果実をください!」


「こら、落ち着け。わかった、取ってくるから下で待ってな。」


「ありがとうございます。」


 ローガンは苦笑を浮かべながら階段を登っていった。


 その間にユーリエはカウンターの向こうでカップや皿をふいている店の主人らしき人間に声をかけた。


「あのう。」


「ん?なんだ?」


 店主はぎろりと強面の顔をユーリエの方に向けた。

 一瞬気圧されてしまうユーリエだったが、気を取り直し前のめりになってカウンターに腕をついた。


「厨房を使わさせてください!」


「ああ??」


 店主が胡乱な表情で手を止めた。


「料理を、作りたいので。厨房を貸して頂けないかと・・・・・・。」


「どれくらいの時間だ?」


「何度かにわけて作業しますので、そんなには。」


「・・・・・・材料は?」


「お金は払います。」


「わかった。後で何をどれだけ使ったか教えてくれれば構わない。」


「ありがとうございます!」


 ユーリエが満面の笑みを浮かべると、店主は照れたように視線をそらし、再び洗い物を拭き始めた。


 そこへ、ちょうどローガンが果実を持ってやってきた。


「ユーリエ嬢ちゃん。はいよ。」


「ありがとうございます。」


「いいってことよ。それじゃあ、頑張んな。」


 ローガンはそういってユーリエの頭をポンと叩くと、自分の部屋へと戻っていった。


 果実を受け取ったユーリエは鼻息も荒く、厨房へと入っていった。



 果実を台の空いているスペースに置き、周囲をみわたした。

 まずは生地だ。

 手早く作業スペースを確保するとサラダボウルのような容器を手に取った。


「後は小麦粉と・・・・・・。」


 材料を用意してそれぞれを台の周りに確保していく。


「あっ、バター!!」


 パイにはバターが欠かせない。なくても構わないが、食感と風味が大きく変わる。

 さっぱりとしたものが好きだという人は無い方が好みなのかもしれないが、ユーリエのイメージの中では必須であった。


 慌てて厨房から顔を出して、再び店主に声をかける。


「あの!」


「あん?今度はなんだ。」


「その、バターって、ありますか?」


「ああ、端っこの方に棒の刺さった長い桶があるだろ、そこに入ってるよ。」


「ありがとうございます!!」


 ユーリエは言われた場所を確認して胸を撫で下ろした。

 質はそこまで良いとは言えないが、使えそうだ。近くにあった器に握り拳大のバターを掬うと、台のところまで戻った。


 材料が揃えば、後はこねて、寝かして、伸ばして、また寝かせて、という単純作業だ。


 ユーリエは腕まくりをすると気合いいれるために大きく頷いた。


いつも読んで頂きありがとうございます!

誰かが読んでくださっているということが毎日本当に励みになっております。


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