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ラーノ回収

【リセットの意思】発動にギンガたちが立ち向かいます。ここからヤマ場です。そう書きたいと思っています。

41.ラーノ回収


 アークフェニックスはラクエンド星系外縁部に到着。ラクエンド星系の防衛艦は拘束され、星海連合の治安維持艦隊がラクエンド星周辺および星系内要衝を遊弋している。


 ギンガは星海艦隊の司令とコンタクト。調査権の確認と行動の自由を確保。奇病の解明に着手する。


 状況は刻々と悪化。行政はストップし、治安も悪化。星海連合はやむを得ず治安と医療のためロボット部隊を投入した。

 転送される画像を確認しながら、渋い表情のギンガ。


 「まずいな。これほど簡単に文化環境が悪化するとは・・」。

 『文明の表面的繁栄は達成されていましたが、耐久力というか危機対応能力に問題がありましたね』。

 ファザーのコメントは辛らつである。


 「メカ体は【リセットの意思】の影響を受けないの?」。

 至極もっともな疑問をネーロが漏らす。

 「わからないな・・。安全装置は幾重にもついているが、【リセットの意思】の浸食能力は未知数だ」。


 

 ショートジャンプでラクエンド本星周回軌道に入る。


 このタイミングでラーノ自身に黒い病変が現れた旨の連絡が入った。

 「現時点で体調自体は変化はありません。症状の進んでいるラクエンドの方には、運動中枢や自律神経系の機能低下が見られるようです。そして、こちらでペットとして人気のあるモフドッグにも症状が出ているようです」。

 「ラーノ、植物に変化はないか?」。


 「植物ですか?今のところ・・・えっ?・・花に、花びらに黒点があります!」。

 「やはりな」。

 「どういうことでしょう?」。

 「【リセットの意思】が発動した場合おそらく該当生態系の全生命の消去を目指す可能性がある」。

 「どうして・・?」。

 「主たる知的生命が自分たちに何か手を加える前にやると想定されることは何だ?」。

 「・・自分たちの周囲にある生命体での実験・・」。

 「そうだ。だから汚染をすべて消去するためには該当生態系の全生命の消去になるんじゃないかな」。

 「そんな・・・・こと・・」。


 「ラーノ、搭載艇を送る。君自身が調査検体だ。搭載艇に乗ってくれ。内部の隔離ポッドにその鉢植えを入れることも忘れるな」。

 「了解しました」。


 『搭載艇射出』。

 シスターの報告に続き、

 「マザー、通常のセンシングの他に可能な限り、次元、空間、時間属性の要素を調べてくれ。相手は【リセットの意思】だ」。

 『指定の属性が作用した場合、宇宙空間にある艦艇にも【リセットの意思】が作用するかもしれない、そういうことですね?』。

 「そういうことだ」。


 『ラーノが搭載艇に搭乗しました。直ちに回収に入ります』。

 「アークフェニックス収容はしばらく待て。近接浮遊状態で診断を頼む』。

 マザーとシスターが了解する。


 『ギンガ、ラクエンド主席から連絡です』。

 「出してくれ」。



 「コマンダー・ギンガ、状況を教えてもらえないか?」。

 非常にやつれた雰囲気で主席がスクリーンに現れる。


 「・・・今からお話しすることはコードΩ、最高機密レベルに属します。漏洩のリスクを考慮しその一部のみをお話しします。主席以外の退席を求めます」。

 「そんなレベルかね?」。

 「【魔帝の乱】との関連が濃厚です」。

 「聞かなかったことにしよう。解決後に報告を期待する」。

 あっさり引き下がった。


 『簡単に引き下がりましたね』。

 ファザーにも意外だったようだ。AIに意外なんてあるのかとチラッと思うギンガ。


 「保身のためには知らないほうが良いこともある。自分では全く対応できないなら、知らなかったで済ませたいんだろう」。

 『人というモノは面白いものですな』。


 君たちAIもそうなりつつあるんじゃないのかい?と、またもやチラッと思うギンガであった。



 『搭載艇ランデブー』。


 『ラーノの診断状況表示します』。


 マザーの報告と同時にスクリーン上にバイタルを含む情報が表示される。


 じっと見つめるギンガ。

 イリーゼと六精霊姫も見ているが意味は解っていない。ファミリーはスクリーン以上のセンサー情報を瞬時に共有している。



 データを見ていたギンガ。

 「病変部分の生体反応は全くないな」。


 「ラーノ、病変部分は何の感覚も無いのか?」。

 「無いです。澤っても何の感覚もありません。聞いた話ですが、指全体に病変が広がった患者は、全く動かすことができないそうです」。


 「マザー、病変部分の状態は均一なのか?」。

 『均一?・・中央部の獄微小な範囲ですが異なる反応があります。・・解析中・・お待ちください』。


 その時なぜか船外の搭載艇の法を見つめていた精霊姫たちが相談を始めた。そして、その話をイリーゼも聞いている。


 ギンガは気になったが、今は邪魔をする時ではないと考え黙っていた。



 『センシング完了。中央部の獄微細部分ですが、分子崩壊しています。いえ、正確には素粒子崩壊しています』。

 「何だと?」。

 『原子レベルで数個レベルですが、原子そのものが崩壊し、素粒子とに還元されつつあります。非常にゆっくりした反応です」。


 こちらの議論を聞いていたラーノが話に参加してくる。

 「どういうことですか?」。

 「原因はまだわからない。こんな現象は初めてだ」。


 「確かにそのような現象は聞いたことがありません。さすがはアークフェニックスのファミリー。私の装備では何もわかりませんでした」。

 「ラーノの持つ解析装置でわからないということは、ラクエンド・アカデミーでも何もわからないということか?」。

 「指摘の通りです。政府もかなり焦っているようです」。

 「だろうな。君が到着する直前に主席からコンタクトしてきたよ」。


 「説明したのですか?」。

 「【魔帝の乱】との関連を示唆したら引き下がったよ」。

 「・・酷いですね。・・でも引き下がるでしょうね」。


 「しかし、これでは原因究明に時間が掛かるかも知れない」。

 『ラーノの浸食速度から計算すると、回復可能限界まで240時間と推測されます』。

 マザーが冷酷な宣告を伝える。


 溜息をつきながらラーノが、

 「その前にラクエンドの人たちがその限界を迎えます」。

 「むう」。



 重苦しい沈黙が支配する中、議論をしていたイリーゼたちが区切りがついたようだ。


 「イリーゼ、何かわかったのか?」。

 「はっきりとはわからないけど・・、マジュ粒子の属性に似た反応を感じるの」。

 「何?」。

 「でも、それが、私も、精霊姫たちも、知らない属性なの」。


 「??・・まさか、残りの静止と波動属性か?」

 『概観した場合、生命活動の停止すなわち静止属性。素粒子崩壊は波動属性の影響。そういう推測も成り立ちます』。

 ギンガの閃きにファザーが推測を重ねる。


 「イリーゼ、リュミエルとコネクトできるか?」。

 「もう繋がってるわよ。状況は記憶に乗せて送ったわ」。

 「時間が惜しい。フュージョンしよう。それと、ファミリー、話の内容は声に出すからできるだけ記録してくれ」。


 ギンガとイリーゼはフュージョン。精霊姫たちは参加するためギンガに密着する。


 すぐにリュミエルと繫がる。向こうは六人のスター・マインドが全員参加している。


 『状況は理解したわ。あなたの予感どおり私たちの協力が必要のようね』。

 リュミエル続いて、カラルが指示を出す。


 『ラーノで治療を試すわ。可能性を上げるためこちらに来て頂戴。せれから、娘たちの感知内容から考えると現時点で、恒星四属性の反応はないから真空空間感染や非生命体汚染の可能性は現時点ではないわ』。


 カラルの言葉をギンガが声に出していたため、ファミリーは搭載艇を格納。直ちに六連星系で長距離ジャンプに入った。

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