空白の陥穽
引き続きラーノ視点です。緊迫感を出すのは難しいです。
39.空白の陥穽
ラーノはルント氏のこれまでの成果を調べているが、懸念を抱くような事項は見つからない。時間だけが経過していった。
ルント氏へのインタビュー依頼は、忙しいの一点張りで拒否されている。これは嫌われているな、と溜息しか出てこない。私のようなBクラスだけでなく、ベテランののAクラス・コマンダーでも断られるような気がする。といっても、その上のSクラスで行動可能なのはギンガ一人だ。指導を受けたことがあるミルナ教官が健在ならなぁ、とふと思う。
そんな愚痴をこぼしていても仕方がないので、公表された調査報告書に再び目を通し始める。
遺跡の滅亡時期は推定2億年前。
文明を担ったのは、4足の昆虫に近い形態と推定される。
異なる骨格が発見されたことにより、共生生命体ないしペットのような生物がいたらしい。
滅亡の原因は全く不明。
放射能であったとしてもすでに時間が経ちすぎて検出できず。
星海への進出有無については不明。
結局のところ、2億年前に暮らしていた生命体がいたが滅んだ、しか書いていない。
ギンガは何を気にしているのだろうか?
そういえば、生物系統なんとかを研究しているロロロさんの報告書もある。骨格から見た生物としての進化の推測を論文にしたものだ。地味だがよく考えられていると思った。ただし、それだけだ。
一週後。
調査隊が帰国して三か月になる。大きなニュースが流れた。ラクエンド人の老化を抑えられるかもしれないという研究が発表された。当然のことながら、ものすごい反響が巷で渦巻いている。
まあ、自分はラクエンド人ではないので、効果はあまりないかもねと思いながらその資料に目を通す。何でも遺伝子に少し手を加えるようだ。大丈夫かなと思いながら読み進めていく。最後に研究者の紹介が載っていた。そして、ある一点でラーノの手が止まる。この研究者は。ロロロのパートナーだった。
気になる。猛烈に気になる。しかも悪い予感がする。ラーノは、すぐにロロロへのコンタクトを試みる。スケジュール調整はルント氏と違い容易で、二日後に会うことになった。
そして、ラーノは大きな判断を誤っていたことを知る。そしてそれは、致命的なミスだった。
二日後、ロロロと面会。
「再度のインタビューへの協力ありがとうございます」。
「いえ、問題ありません」。
「生物分類の観点のレポートも拝見しました。遺跡の主たちは大変澄明な種族だったようですね」。
「ええ、彼らの寿命はラクエンドの時間に換算するとおそらく一万年はあったと思います」。
「その推測はどこから?」。
「彼らの遺伝子からの推測です。彼らは自らの遺伝子を改変し、強靭な肉体と長寿を享受していたと考えられます」。
ラーノの背中を冷たい汗が流れ落ちる。
「遺伝子?」。
「私はそれを発見しました」。
「!」。
長い沈黙が続く。
「そして、貴女のパートナーはその構造を解析し遺伝子改変の方法を実現した」。
「ええ、その通りです。ラクエンド人であれば、最低でも1000年の寿命を得られると試算しました。私たちは長い寿命を使って文明を発展させ、この星海連合を指導していくのです」。
静かに、しかし見ようによってはおぞましい笑みを浮かべるロロロ。
再び沈黙。
「すでに人体実験を・・・?」。
「ええ。・・このようなチャンス、逃すわけありません。私と彼にはすでに投与済みです」。
三度の沈黙。
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