ネットワーク構築 4
36.ネットワーク構築 4
続いて、ルルーの星だ。ルルーにはまだメカ体を用意していなかったので、新たに準備し衛星軌道上に滑り込む。まだ知的生命は育成途上だが、念のため衛星の裏側にした。
すぐにルルーがやってきて、六精霊姫に驚いたようだがまずイリーゼと記憶交換を行う。すぐに要領を掴んでメカ体が起動する。
開口一番、
『この体、素晴らしいです。ありがとうございます!』。
そして、初めてのメカ体でのお茶会。テンション爆上がりである。
「これがお茶かぁ。ホッとするし、何か新しい何かが湧き上がってくるような・・」。
ほっこりしながら、精霊姫たちの頭を撫ぜている。
ひとしきりお茶を楽しんだ後、接続確認に入る。
問題なく接続成功。もはやネットワークに関しては問題ない。サービス機能は今後考えていく。
そして、通話確認だ。
「ルルー姉様の母様が発見できればよかったのですが・・」。
少しばかり申し訳なさそうにイリーゼが言いかけると、ルルーが遮る。
『それは仕方ないわ。いずれ見つかるかもしれないし・・。私はイリーゼの母様、クルル姉さまとお話ししたいの」。
妙に積極的である。ということで、クルルをコールする。
『もしもし、こちらはクルルです』。
『はじめまして、ルルーと申します』。
『ああ、イリーゼが初めて会ったスター・マインドね。私もぜひお話ししたかったわ』。
話はぐんぐん盛り上がる。どうやら、ルルーは知的生命体の育成に入る予定らしく、環境を補佐してくれる精霊姫をどうするか考えあぐねていたらしい。そこにイリーゼに会ったので、その母であるクルルに助言が欲しかったのだそうだ。恒星精霊姫たちを見て、そのテンションはさらに上がっている。
スター・マインドたちの通話の間、ファミリーたちとルルーの母様の座標推定を検討してみるが、ここまでの情報ではかなりの広範囲の探索が必要になることが判った。いずれスター・マインド探索の方法は必要になると思われるので、その第一優先対象として管理することにする。
結構長い通話をいったん終了し、お茶会に復帰する面々。
『シナリオは見えたわ。精霊姫を生み出すスケジュールに入るわ。聞きたいことはたくさんあるから、クルル姉さまだけでなく、ルオーブ姉さま、ルエーニ姉さま、それに精霊姫ちゃんたちの母様たちともお話してみるわ』。
「六連星系にはこの後行きますのでしばらくお待ちください」。
まるで敷設工事中の業者だ。
そして、さも当然の成り行きとして、お茶をどう育てるかという議論が始まった。ギンガにしてみれば、なぜここでお茶なのか、全く理解できていない。しかし、そんなことを口にすれば、イリーゼの長いお説教が始まることだけはわかっているのでいる。だから、・・黙って聞いていた。
お茶会が一段落し、精霊姫たちがお眠になってきたところで、星系ルルーを後にした。
「これから、ここに知的生命が誕生するのか。感慨深いな。彼らに会えないのが残念だよ」。
ギンガの独り言にイリーゼが首を傾げる。
「なぜ、会えないのですか?」。
「物質生命体の寿命はそんなに長くはないさ」。
「何を言っているかわかりました。ギンガはもう物質生命体ではありません。精霊姫たちの修行でフュージョンを繰り返していましたから、完全に進化しています」。
「??何だって??」。
驚いているのはギンガ一人。しょうがないなぁという感じで、マザーが説明を始める。何故か溜息をついている。
『現状で未解明の事象が多く、事象しか報告できません。ギンガの体組成は惑星クルル降下前と数値上は変わりません。しかし、詳細に分析すると、センサーがそう検知するように影響をうけていると推定されます。つまり、現在のセンサーの検知速度を上回る速度でセンサー情報を上書きしている状態です』。
「要約すれば、私自身はもう以前の人類ではなく、センシングの際に検知を上回る速度でセンサーに以前の情報を与えているということか?」。
『その通りです。一例をあげれば、ギンガは現在抜け毛がありません。抜ければ実体としての毛髪を維持する手間が発生するのでそうしていないだけです。毛が伸びない、爪が伸びない、などです』。
「・・なるほど。・・それで、事態はどうなっているんだ?」。
『センシングできない以上、わたしたちにもわかりません』。
「イリーゼ、私は何か変わったのか?」。
ギンガの質問に微笑んで首を横に振るイリーゼ。
「・・私は私。とりあえず、それで良いか・・」。
「ファミリー、引き続きセンシングは続けてくれ。おそらくエネルギーというか、素粒子センサーがメインになるんだろうな」。
『推測ですが、・・』。
「なんだ、ファザー?」。
『我々ファミリーとしては、まだ存在が予言されているだけの波動属性、静止属性が関係しているのではないか?と考えています」。
「それは、予言ではない。真マジュ粒子にはその属性が付与されている。しかし、現状ではそれを認識できない。そういうことだ」。
『肯定します』。
ギンガは自分自身の謎にも向かい合わなければならないようだ。
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