恒星精霊姫、大地に降り立つ
やっとウィルスターに帰還です。さてどうなりますか?
29.恒星精霊姫、大地に降り立つ
六精霊姫を預かり、ウィルスターに帰還。
着陸する前から六精霊姫のテンションはマックスである。3Dスクリーンに投影される映像に齧りついている。面倒見の良いイリーゼがあれこれ説明している。
結構性格は違いがあり、積極性の塊が締め役(何度も言うがまとめ役ではない)のパツィ。
おしゃべりなのがテポとラヴィ。
ルチェとネーロは落ち着いていて二人でよく議論している。二人とも質問魔。
オーレは物静かであまりしゃべらない、しかし、好奇心は一番のようだ。
六人とも食いしん坊。甘いお菓子ばかり食べている。大丈夫かと思ったが、イリーゼによれば、精霊姫にカロリーは関係無いそうだ。
退艦するなり、イリーゼはいつも通りにダイ太刀のところへ向かう。当然六精霊姫も一緒だ。まあ、イリーゼに任せておけばよいだろう。
ダイ一家四頭とも新顔六人に驚いていたが,紹介が終わると遊び始めた六人と二頭に雰囲気が和む。
「ガイもレイもかわいい~」。
「もふもふ~」。
「そんなに舐めたらくすぐったいよー」。
「ぎゃう~」。
誰が何を言っているのかわからない。そんな状態で転がりまくっている。
「良い友達になれそうね」。
イリーゼはダイとセイを撫でながらつぶやく。
「クウ」。
セイがそうだというように軽く鳴いた。いや、実際にそう言っているんだろう。
「たまには、一緒にご飯を食べない?」。
イリーゼがダイとセイを誘う。
「ガウッ」。
うれしそうにダイが答える。せいも尻尾を激しく振っている。
イリーゼが、ダイ一家と精霊姫たちを引き連れて戻ると、ギンガが庭でバーベキューの準備をしていた。
それを見たパツィが、
「何をしてるんだ?」。
「あれはバーベキューという料理よ。とってもおいしくて、楽しい料理よ」。
「「「「「「!}}}}}}。
イリーゼの答えに精霊姫たちのテンションが爆上がりする。
アークフェニックスでの食事で、食べるということは経験済だが、その時聞いた「料理」に全員興味を持った。それが見られるのだ、興奮するのは当然だろう。
ギンガが肉と野菜を焼き始める。すぐにワイルドだが食欲をくすぐる匂いがしてくる。
「さあ、いいぞ」。
ギンガの声と同時にテーブルに肉と野菜がドンと置かれる。ダイ一家には食べやすくカットしたものが置かれる。意外なことにダイは焼いた野菜のほうが好きで大きめに切った野菜が山盛りだ。
一斉に手と口が出てきて貪り食う。
ソーセージを齧りながら追加を焼いているギンガのもとにルチェとネーロがフヨフヨと飛んできて注文を付け始める。
「この黄色のつぶつぶのやゆもう少し焼いたほうが甘くなると思うのよね」。
「私はこのお肉をもう少し表面だけ焼いたほうがおいしいと思う」。
「へい、へい」。
ご注文を聞いたギンガはその通りの焼き加減で給仕をする。
「「おいしいーーー!」」。
二人の叫びが響く。
それを見ていた四人と二頭も調理加減の注文を付けはじめる。ちなみにガイとレイの分はイリーゼが通訳した。その結果は、
「「「「おいしいーーー!!」」」」。
「「ガウウー!」」。
この日のパーティは、ギンガとしてはかなり忙しかった、としておこう。六精霊姫はただの食いしん坊ではなく、とんでもなく大食らいの食いしん坊だった。
翌日、イリーゼはお茶屋のチャリンさんのところを訪れていた。当然お供の六人を連れて。
お茶の種類は様々なものがあり、淹れ方を含めて好み探しに盛り上がった。チャリンさん自身も新しいコトを求めているのでこういうのは大歓迎だったらしい。
そして何といっても、お茶請け、である。ここの議論は白熱したようだ。六精霊姫にとっては、甘い物は正義、である。
チャリンさんはそこに課題を投げ込む。
「甘みのあるお茶に対しても、甘い焼き菓子なのか、そこが問題なのよ」。
そう言いつつ、テーブルに薄緑色の冷却ポットを出す。
「「「「「「?」」」」」」。
頭に疑問符をつけた精霊姫が並ぶ。
「これは、私が辿り着いた至高の、・・抹茶オレ、なんだよ」。
ゴクリ!、とイリーゼを含めた全員の喉が鳴る。
「まず飲んでおくれ」。
小さなコップに注がれた抹茶オレをみんなで飲む。
「!。すごくおいしいです。お茶でもなく、ミルクでもない。でもお茶だし、ミルクです」。
お茶にはうるさいイリーゼがべた褒めである。
六精霊姫はというと、踊り狂っていた。
「これおいしい!」。
「甘ーい。苦いけど甘ーい」。
「香りもすごーい」。
「完璧ー」。
「とろける」。
「・・・・・」。
そしてチャリンさん。
「抹茶オレは良いの。・・良い?判る?この抹茶オレと一緒に出すお茶菓子が問題なの!」。
ハッとして考え込む七人。重い沈黙が下りる。
甘い物は常に正義とは限らない。そういう難しさを知った六精霊姫であった。
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