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煌刃

前作の最後で砕けた愛刀の鍛冶を書いてみました。こういう話も面白いので取り入れていきたいと思っています。

2.煌刃


 翌日、朝から2人は工作棟に来ていた。


 魔族皇帝クリムゾン7世との戦いで折れてしまった太刀を打つためだ。


 これまで通りの、気を込めた太刀を初めに打つことにした。ここはイリーゼは見ているという。


 インゴットを選び、炉に入れて溶かし始める。炉は家の一部だがここは武器を作るというのでブラザーが管理している。その温度制御は万全だ。

 金属が軟化したところで、気を流しながら鍛え始める。気を流しながら打つことで気の通りが格段に向上する。それにより、ギンガが使えば浮上に使い勝手の良い武器だが、気を練成できない者、つまりギンガ以外には普通でしかない太刀が打ちあがる。


 お茶で一服しながら、温度が下がるのを待つ。


 そこには輝く一振りが出来上がっていた。研ぎを入れ柄と鍔、鞘をあつらえて完成。再び愛刀を手にしたギンガは満足そうな顔をしていた。


 「手順は判ったわ。でも気と真マジュ粒子では性質が違う。気は循環するけど、真マジュ粒子はそこに存在しもっと静的な状態で力を発揮するの。そこをどうするか、ね」。

 イリーゼの指摘に、ちょっと考え込むギンガ。


 「静的なもの・・・。波紋を刻むカタチか」。

 「どういうモノなの?」。

 「この部分だ。刀の個性のようなものだ」。

 「何がどう違うの?」

 「普通の太刀では美しさ以外には差はないかな。切れ味に差が出るかもしれないが、実感レベルには差が出ない。気を練りながら打った太刀では明らかに気の使い方で性質が変わる。切断性に重点をおいたり、打撃性に重点をおいたり、だな」。


 「じゃあ、真マジュ粒子の太刀で実装すべき機能は?」。

 「もちろん、反マジュ粒子の浄化だろうな」。

 「完全に同意」。


 夕食語も様々な条件を討議して翌日を迎える。真マジュ粒子を測定することも、ギンガとイリーゼのフュージョンのセンシングも初めてのことだ。ファミリーも投入可能な全センサーを投入しこの鍛冶を見守る。


 炉の前に立ちインゴットの準備を確認後、

 「「フュージョン!」」。

 イリーゼがギンガの中に飛び込む。同時に、真マジュ粒子の生成が始まる。


 今回は真マジュ粒子の大量生成ではなく、金属の練成への合成と太刀を討ちながら波紋としての定着を目指している。イリーゼとしても細心の生成・練成・循環を行う必要がある。


 しばらくして、真マジュ粒子の放出が収まりギンガの体の表面を煌めく数多の色の光が循環を始める。


 「準備完了だ。鍛冶を始める」。


 ギンガが機能と同じく太刀を打ち始める。しかし、昨日と違う点もあった。炉に入れたインゴットが虹色に輝いている。実際に鎚を打つ前にインゴットが刀身に変化を始めた。


 ギンガとイリーゼはその変化を受け入れているが、AIであるファミリーさえもその状況に仰天していた。

 回路内部で交わされるAI同士の会話。

 ファザー『金属が変形していく。どういうことだ?磁力の作用か?』

 ブラザー『磁力、重力作用無し』

 シスター『ギンガからの超常能力検知できず』

 マザー 『ギンガから未知のエネルギーの伝導あり。これは?生命反応?まさか!』

 ファザー『どういうことだ?』

 マザー 『真マジュ粒子、現時点で解析不能』。

 続けて 『しかし、真マジュ粒子が同化したインゴットに生命反応類似の兆候あり』。


 ファザー『真マジュ粒子は非生命存在に生命を与えるのか?』。

 マザー 『現状、回答不能』。


 シスター『インゴットにエネルギー反応』。

 他三体 『何?』。

 シスター『嘘でしょ!核融合、核分裂反応検知。しかし外部へのエネルギー漏出無し』。


 シスター『原子核の組み換えを確認。続いて分子構造の組み換え確認』。

 続けて 『インゴットが全く別の物質に変わっていきます』。


 インゴットが太刀の形に変形していく。炉も鎚も水さえ使っていない。しかし、見事な波紋をもち輝く刀身が現れる。刃を見つめるギンガの隣にイリーゼが現れる。


 「うまくいったようですね」。

 「ああ、そのようだが・・・。ファザー、これは何だ?どういう金属だ?」。


 素晴らしく美しい太刀が打ちあがっていた。いや、打っていないが・・・。

 虹色の光沢を持ち、重さは絶妙。早速誂えを施してみると、完璧な太刀、と言えるものがそこにあった。


 「解析できたのか?」。

 ギンガの問いに代表してファザーが応える。

 「原子構造及び合金としての解析は完了。結論から言えば、未知の合金です。ギンガとイリーゼによる練成以外の方法での作成は、現状では不可能です。形状および重量は、ギンガの使用に対して理想的です。太刀としての性能はほぼ究極と言ってよいでしょう。ただし、特殊性能については推測不可能です」。

 「特殊性能?」。


 「この合金はエネルギー伝導率が極めて高く、かつエネルギーの性質によっては増幅も可能と推測されます。生成過程から推測するならば、気さらには真マジュ粒子との相性が想定されます。試しを行う場合は実験衛星での実施を推奨します」。

 「そこまでか?」。


 「私も使いこなしには訓練が必要と思います」。

 イリーゼの意見に苦笑いをするしかないギンガであった。


 「わかった。そこまでのものなら銘が必要だな。・・・煌刃、これでどうだ」。

 その時、太刀が一瞬光を放った。


 「その銘、太刀も気に入ったようです」。

 ニコニコしながらイリーゼ。


 「そうすると、こちらも銘があったほうが良いな」。

 昨日打った太刀を見て、

 「気迅、としよう」。

 澄んだ鍔なりの音がした。

 「そちらも気に入ってもらえたようです」。


 新たな二振りの太刀が生み出された。

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