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第三世代からのヒント

タイトルの第三世代はリュミエルさんのことです。

次回登場人物を整理して、第三部分に入ろうと思います。

25.第三世代からのヒント


 その時、シスターから報告が上がる、


 『六連星系からの通信が入っています。これは、リュミエル1からですね。・・ん?オランジュさんもいらっしゃるようです』。


 「ここに繋いでくれ。こちらにはクルルもいると伝えてくれ」。

 『了解』。


 『私も参加して良いの?すっごく良いタイミングね』。

 クルルもノリノリになっている。



 シスターが中継器になって、通信設備のマジュ粒子/シグナル/音声変換を行う構造だ。通話は今回が初めてである。


 『こちらシスターです。聞こえますか?』。


 『あー、リュミエル1です。これ面白いですね。』。

 『ちょっと、私も話すぅ。オランジェでーす』。


 「イリーゼでーす。聞こえる?」。

 『イリーゼもいる。すごーい!』。


 「試しに映像送ってみよう。シスター頼む」。


 『映像をオンにしました。・・見えますか?』。


 『これは、ライブラリと同じイメージ。見えます。これが見るということですね、すばらしい』。


 リュミエル1が感動していると、リュミエル、カラルと三姉妹も来たようだ。

 『これが物質界との通信か、面白いな』。


 「母様、今のがリュミエル姉さまです」。

 『本当に興味深いわね。クルルです』。


 『素晴らしいわ。初めまして、なのかはよくわからないけど、リュミエルです』。

 『カラルです。本来会わないはずのスター・マインド同士がこうして話せる。記憶交換はできないけど、素晴らしい体験ができますね』。


 スター・マインド同士の話が始まると止めどもなくなりそうなので、まずリュミエル1の用事を済ますことにする。

 どうやら、リュミエル1の用事はコンテンツの入れ替えだったようで、早速シスターに対応してもらったら、ホクホクと上機嫌で退席してしまった。スター・マインド同士の会議には興味が無いらしい。まあ、面倒が無くて良いけれども。


 スター・マインドたちはいろいろおしゃべりを続けている。ま、初めての経験だから仕方がないことだろう。ファミリーも興味深げに聞いているようだ。


 リュミエルが例の指針で聞きたかったことを質問している。

 『ギンガにイリーゼを託したことですよね?・・よくわからない、というのが応えですね。そうしなければならない、と思ったんですよ』。

 『その結果が何を起こすかは知っていた?』。

 『それで、私の星が滅びることは無くなる、そういう確信はあったと思います』。


 『なるほど。・・これから話すことは空間記憶には残っていないことだから』。

 そう言って、リュミエルが話し始める。


 『私の母様が最後に残した話だけどね、この宇宙には大きな意思みたいなものがあるっていうの。より大きな世界を築くために頑張りなさいという意思、のようなものを母様の母様、イリーゼの言う始祖スター・マインドだね、その始祖はいつも感じていたそうだよ』。


 「その意思については、私とイリーゼが感じていたことです。イーヴィル・ダストの存在とその行動なども一つの意思の存在を示しているような気がしていました。ただその示す先が何なのか、それはまだわかりません」。


 『そうだね、それについては私にもわからない。でも、私たちスター・マインドが子供たちを生み出したいという強い思いはとても前向きなものととらえたいけどね』。


 ここでカラルが話しに加わる。

 『私は同じ場所に、母様と娘四人がいる。何を考え、何を試しているか、知ることができる。でもそれは特別な条件。普通のスター・マインドは母様の事実だけをトライするだけ。そしてその結果を、そこまでの結果を娘に伝えるだけ。そうよね?』。


 『仰るとおりよ、カラル姉様、今まではね。でも今はイリーゼがいる。リュミエル姉さまの私信は受け取れた、それだけでも大きな変化よ。・・そして今。離れた場所にいるスター・マインド同士が情報交換ができる。それによって今までのトライの成果を知る可能性が出てくる、ということね』。

 クルルが頷く。


 『そう、記憶交換ができればもっと素晴らしいけれどね。・・でも、これはスター・マインドがもっと先に行くためのおーきな一歩だわ』。


 ネットワークの重要性は認識してもらっているようだ。ギンガから話を切り出そうとすると、オランジェが口火を切ってくれた。


 『こういう設備を他のスター・マインドの星にも置こうよ。いろんな姉様と話したい!』。

 『そうだ、そうだ!』。

 加勢しているのはエスポ―である。この二人はいつも元気だ。


 「そう簡単なことではないんだよ、オランジェ、エスポー。このような長距離の通信手段は高度なテクノロジーと指定されていて、文明段階がそこに至っていない星には提供できないんだ。設置すれば見て真似することができるかも知れないからね。フレアーノはエネルギー生命体だし、文明段階が物質文明と異なるから認めたんだ。それにここ、アークフェニックスのシスターとしか通信できない」。


 『クルル姉さまはたまたま、いらっしゃっていたのよね』。

 カラルが軽くフォローしてくれた。


 『そうなんだー。何とかならないの?ギンガ?』。


 ここでギンガはリュミエルに相談を持ち掛ける。


 「こちらでもスター・マインドのネットワークをマジュ粒子で構築できないかと思って、クルルの記憶を見せてもらったんですが、・・正確には判らないのですが、最近の世代では認識されていない属性が存在するのではないかと思うんです」。


 『ほう、例えば?』。

 含み笑いのような感触でリュミエルがノッテくる。


 「予想も含んでいますか、空間、時間、重力、たぶん次元の四属性は存在するのではと考えています。そのような精霊姫は知識にないし、どうやってマジュ粒子にその類の属性を付加できるのか、ご存じないですか?」。


 途端にリュミエルは笑い始めた。

 『物質世界で子供たちを育てる姉妹たちにはその知識が継承されなかったようだ。その四属性の精霊姫は存在する。というか、恒星系のスター・マインドは、光、闇、空間、時間、重力、次元の6人の精霊姫から誕生する」。


 『えぇっ?!』。

 クルルが滅茶苦茶驚いている。イリーゼは絶句している。


 『ふふっ、だって、火属性はともかく他の三属性は恒星では役に立たないよ。火属性だってそれを上回るエネルギーが吹き荒れているからね』。


 「なるほど、スター・マインドのタイプが生まれそれに適した属性の精霊姫が誕生するようになったわけだ」。


 『そうだね、始祖と第二世代はそれを使い分けていたようだ。私は恒星のスター・マインドになるべく育てられたんだろうね。それに、・・・』。


 「それに?、まだあるんですか?」。


 『ああ、どんな星に宿るスター・マインドになるのか知らないが、光と闇ではなく、波動属性と静止属性が空間、時間、重力、次元の四属性と組み合わせになる場合もあったはずだ』。


 それを聞いたギンガが冷や汗とともに掠れた声で尋ねる。

 「もしかしてブラックホールに宿るスター・マインド??」。


 『私も会ったことが無いからわからない。母様の記憶にあるだけだ」。


 「う~ん・・・」。

 『どうしました?』。

 ギンガが唸っているとファザーが聞いてきた。


 「組合せの問題だが、波動と静止、地水火風の六属性のスター・マインドもあり得るのかな?と思っただけだ」。

 『私たちAIでもその組み合わせは推論できませんな。データ不足です』。


 「今はそれは後回しだ。・・リュミエル、あなたたちは空間ないし次元属性のマジュ粒子を生成できるのか?」。

 『可能だが、そのようなネットワーク構築と維持に必要な属性マジュ粒子を機動的に供給するのは難しいと思う。理解してしているのはあなただし、それを支えるのはあなたと一緒にいるイリーゼだから』。


 「では、どうすれば?・・」。

 

 ギンガの質問には答えず、リュミエルはクルルに質問する。

 『ねえ、クルル。イリーゼ誕生のタイミングはどうやって判った?』。


 『そういうことね。娘たちにギンガの気が満ちた時よ』。

 リュミエルの質問の真意を理解したクルルは、さらに続ける。


 『私はずっと見ていたけど、今ならイリーゼが判断できるはずよ』。


 満足の逝く答えを得たのか、リュミエルがギンガに応える。

 『ギンガ、私たちで、恒星スター・マインドの六精霊姫を生み出すわ。その子たちをあなたとイリーゼに預ける。気、だっけ?それをイリーゼと同じように馴染ませてね。そうすればイリーゼの妹としての新たなスター・マインドが誕生するわ。イリーゼ、頼むわよ』。


 「わかりました。何時迎えに行けばよろしいでしょうか?」。

 「恒星スター・マインドの精霊姫を生み出すためのエネルギー蓄積はかなり大変だけど、幸い私と娘たちで六人。一人一体なら行けるわ。すぐでもいいわよ。』。

 「了解です」。


 また、私を蚊帳の外に置いたまま話が決まってしまった、ギンガはそう考えて、溜息をついた。ちなみにファミリーはマジかで精霊姫を観察できるので滅茶苦茶興奮しているようだ。


 二人目のスター・マインドがフュージョンしてくるという問題に関しては、ギンガの中ではすっぽり抜け落ちているようだ。何とかなる、そういう心持になっていた。本格的に人類でなく新たな生命形態に進化しつつある影響のようだ。


 この新たな盛り上がりを、クルルは面白そうに眺めていた。

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