目指すモノ
なってきたので更新頻度アップに挑戦します。2日に1回が目標です。あくまで目標です。
でも乗っている時は文章が判り難くなるんですよね。そういう指摘もぜひお願いします。
22.目指すモノ
六連星系を辞して、ウィルスターに帰投。イリーゼは早速、ダイ一家のもとに行ってしまった。相変わらずの平常運転である。
ギンガはマザーの淹れたお茶を飲みながら、ファミリーとブリーフィングである。すっかりお茶が欠かせなくなってしまった。
「宇宙が変化を促している・・・、何だろう?」。
『何かパラメタが変わりましたか?』。これはファザーだ。
「反マジュ粒子と真マジュ粒子の出現」。
『それが変化ですか?』。マザー。
「わからん。そもそもマジュ粒子とは何か、すらわからんよ。そのヴァリエイションが増えてもさらにわからん」。
『スター・マインドの子供たちに変化は?』。シスター。
「全体の何かにインパクトを与えるような既知種族は確認できていない」。
『ヴィオネロン帝国は如何ですか?』。これはブラザー。
「何かあるかも知れない。・・・しかし、情報が無さ過ぎる」。
「現状、最も必要なのは通信手段だ。スター・マインド同士のな。しかし、今まで通信できていないことを考えれば、マジュ粒子は少なくともそのままでは光速を越えることはできないのだろう。そこだな」。
『スター・マインドの子供たちには知られないような設備で、秘密保持が可能な、超光速通信手段ですね』。
シスターが検討を始めたところでイリーゼが戻ってきた。
早速、マザーがお茶を淹れようとすると、にこやかに道具を要求する。
「マザー、私のいるときはそれは私の役割ですよ」。
『イリーゼ、そこまでお茶にこだわる理由があるのですか?』。
「極める、と言いましたか、それを実践してみたいのです。自分の感覚を研ぎ澄まして、その結果として最高のお茶を淹れる、それをやってみたいのです」。
『それは…』。
「マザー、あなたたちのセンサーを使えば簡単、そう仰りたいのではありませんか?・・でも、データを超える何かが存在する。それを信じてみたいと思いませんか?・・そういうチャレンジなのです』。
イリーゼの言葉にファミリーは思考のパワーを上げる。
『考慮の余地はありますな』。
『そうですね。その考え方こそが私たちAIの進化の可能性かも知れません』。
ファザーの考えにマザーも同意する。
「データと計算のその先にある何かか?・・夢、かもしれないな」。
「・・夢?」。
イリーゼがゆっくりと繰り返す。
「ダイたちが平和に暮らす。それは素晴らしいことだ」。
「もちろんです!」。
「でも、それは今のような生活か?そしてその未来には本当に新しい種族の繁栄があるのだろうか?」。
「それとも、かつての同族と一緒に暮らすことか?その未来には彼らの種族全体がダイたちのように進化するのかもしれない」。
「あるいは、他の種族と合流して新たな群れを形成するのか?その未来にはさらなる新しい種族としての進化があるかもしれない」。
ギンガの呟きにファザーが冷たい現実の可能性を告げる。
『いずれも非常な低確率の条件がそろった場合です』。
「そのとおりだ。・・・しかし、それは望まなければ決して訪れることは無いだろう。望んで掴むもの、それが、夢、だよ」。
「夢、か。素晴らしい言葉ですね」。
『私たちAIの夢とは何なのでしょうか?』。
『それこそが私たちが考え抜いて見つけ出すことでしょう』。
ブラザーの自問にマザーが何となく呟く。
「スター・マインドにも夢があっても良いはずです!」。
突然、イリーゼに力が入る。
「その通りだ。でも、今までだって夢を持っていたんじゃないのか?」。
「子供たちを育てること?それは、夢なのかな?やらなければならないこと、そういう気持ちは持っているけど、・・それは夢なの?」。
考え込んでしまうイリーゼ。
それを見守っていたファミリーも、考え込んでいた。
『育てる?それはどういうことなのか?』。
『コピーとは異なる?』。
『似ているという概念の意味は?』。
『・・・・・・・・・・』。
AIであるからこそのメリットが問題を複雑にしていた。ループに入っている状態である。
そこに気付いたギンガが声を掛ける。
「ファミリー!ループしてるんじゃないか?」。
ふと思考を中断し、自己点検の結果に愕然となる四体。このような状態に四体同時に陥るとは想定していなかった。あらためて自己診断ロジックの見直しを始めたらしい。ちなみに先程のギンガの声掛けは、こういう状態があるかも、という観点で作っておいたブレイクロジックである。はからずも役に立ったことにギンガ自身が驚いていた。
問題に思い悩むそれぞれが何かバタバタしていると、突然、イリーゼが叫ぶ。
「母様のところに行きましょう!」。
悩んだ時には親に頼る、生命体の一つの解決策ではある。
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