ギンガ
伏線多すぎてわかりにくくなってしまいました。メモ作ってますが何とか頑張ります。
21.ギンガ
「あの連星系の中に入って何ともないなんて、本当に私はどうなっているんだ?」。
フュージョンを解いたギンガの第一声である。
それには、リュミエルがコメントを返す。
『私の見立てではすでに90%程度元の肉体組織とは変化しているよ。自分の意思で今までの姿を維持しているが、実体は特殊な意志エネルギー体だな』。
「特殊な意志エネルギーというのは気で強化されたマジュ粒子です。私も同じ構成ですね」。
事も無げにイリーゼが補足する。マザーがそれを聞いて、自分たちのセンサーのデータを検証しているらしい。
『特殊な二人がさらにフュージョンすることであの真マジュ粒子を生成できるんだろうねぇ。イリーゼの母様、クルルだっけ?、それを狙って精霊姫をギンガに預けたのかはちょっと興味があるな。今度里帰りしたら聞いておいてくれないかい?ああ、そういう私信を渡したほうが良いね』。
するとロクサが質問する。
『でもリュミエル母様、そういう内容は空間記憶に残らないのですか?』。
これにはカラルが答える。
『あなたたちは、母様と私の傍で星に宿ったので、記憶だけを持って旅をしていません。このように聞けば私たちが答えてきたので、判らないことを思索するという感覚が無いのです。空間記憶には星の事実だけが残ります。その事実を創り出すためにスター・マインドが何を考えたか、は含まれていません。さらに別の選択肢があったかもわかりません』。
『何故ですか?』。
これは末っ子(今のところ)オランジェ。それにはイリーゼが答える。
「それは、母様たちが子供を育むために行ってきたことを素に、さらに新しい試みを娘としてチャレンジするためではないでしょうか?」。
リュミエルとカラルが頷く。
『正解だ。あなたたちは話ができる近さに姉妹がいる。その環境ですべき新たな試みは何か?よく考えるんだよ』。
『『『『はい!』』』』。
こうしたスター・マインド同士の話し合いも普段は無いんだよな。この会話もファミリーが記録し自分たちで議論をしているようだ。
マザーが解析状況を報告する。
『今回のフュージョンでかなりの情報が取れました。マジュ粒子そのものの解析は未だできませんが、フレアーノの体はマジュ粒子が光属性というフレーバーで属性付けされたものという結果です。イリーゼの情報では、フレーバーは光、闇、火、水、地、風がありますが、ギンガ、イリーゼの肉体は全てのフレーバーが気という意志の力で統合されていると推測されます』。
「マザー、理解不能だ。気の解析ができるのか?」。
『その点も依然解析不能です。マジュ粒子の振る舞いが一部観測できたと考えてください』。
「そうか」。
まだまだ判らないことだらけだ。フレアーノの存在にはスター・マインドが大きくかかわっていることはわかった。ただ、スター・マインド無しでプラズマ生命体が存在するかなど新たな疑問も出てきたようだ。そもそも、スター・マインドが消えた後その子供たちはどうなる?そこに大きな謎がありそうだ。
「結局どういうことなんだ?この肉体は以前と違うのか?」。
『通常のセンシングでは違いが判りません。完全に人体が再現されています。しかし、マジュ粒子観測が可能になったファミリーのセンサーでは、マジュ粒子が全てのフレーバーを備えて存在しているという結果が出てきます。しかし、何がどう機能してこの結果になっているのかについては全くわかりません』。
「それは何もわからない、と言っていないか?」。
『その通りです。ただ以前のセンシングのようにただ騙されてはいない、それだけです』。
進化というのは一体何だろうな、と思うギンガだったが、それをイリーゼは的確に見抜いていた。
「進化は偶然起こる、そう思っているでしょ?」。
「よくわかったな」。
ギンガは驚いているが、イリーゼは全く予想外のことを言う。
「最近の私たちの行動を考えれば、ギンガの進化はおそらく必然です。わかりますか?・・・あなたの進化が必然ではなくて、スター・マインドの中から私という存在を生み出すため、あなたが必要だったのです。私がなぜ必要なのか?その理由はまだわかりませんが・・・」。
『そうね。今までと根本的に違うこと、例えば、スター・マインド同士が継承ではなく何らかの情報交換をする必要がある、そういう状況が発生している可能性もありうるわね』。
リュミエルの発言は衝撃的だった。カラルがすぐに反応する。
『この宇宙に何か変化が起こっていると?』。
『それも良くないことかもしれないわね』。
『リュミエル殿は何か気になる点がおありですか?』。
珍しくファザーが話に参加してきた。
ファミリーはこれまでギンガのサポートという役割に徹しているような振る舞いだったが、ここにきて新しい生命体として考えるようになってきたようだ。生命形態の多様化ということはこの新しい謎に挑むには良いことかもしれない、ギンガは何となくそう考えていた。
『推測でしかないわよ。今までスター・マインドは自分の子供たちを育んでいれば良かった。それが、スター・マインド同士が情報を交換しその経験を集約しなければならない状態に向かっている』。
『そのためにイリーゼが誕生した、ということですか?』
『それだけではないわ』。
何かありげに話の間を空けるリュミエル。そこに食い付く末っ娘。
『リュミエル母様、どういうことですか?』。
『オランジェ、わからないかしら?こうしてお茶をいただけるいうことよ』。
『『『『????』』』』。
四姉妹は全員意味が解らず首を傾げている。
代わりにイリーゼが答える』。
「メカ体ですね。私がギンガのパートナーとなった大きな成果」。
『そうよ、他の存在とゆっくり話ができるチャンスをくれた。この恩恵は計り知れないものよ!』。
『それは私たちAIも同じですね』。
リュミエルの指摘にファザーをはじめとするファミリー全員が頷く。
『スター・マインドが交流可能な種族として認められる可能性が生まれた、そういうことよ』。
カラルのまとめに驚いた表情になる四姉妹。
知的生命体の母なるスター・マインドが、産み出した生命体と同じ立場で交流する。そうしなければならない状況とはどういうことなのか?ギンガさえもその意味するモノに思い至れなかった。しかし、確実に何かが起こりつつあるようだ。
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