情報の宝箱
自分では文章が判り難い、固い(?)気がしています。なにかあればコメントください。
19.情報の宝箱
『母様の原始太陽が爆散した後、しばらく、・・どの程度の時間かは全くわからないけどね、この場所に原始太陽系を見つけてそこに宿ったんだよ』。
話を続けるリュミエル。娘、孫娘たち(?)も黙って聞いている。スター・マインドの空間記憶は記録だから、感情とか想いは別にあるようだ。何処に保存してあるのかはわからないが・・・。だから、話を聞くということはそういったことを受け継ぐという意味もある。イリーゼが故郷に戻って母様と話をしたり、ルオーブとルエーニの郵便屋さんをやることは実はとても重要なことになるかもしれない。
『実は最後に母様から告げられた言葉があるんだ。それは、・・・子供たちをゆっくり愛してあげなさい、さ。星の海を漂っていると、他の姉妹たちに何度も会ったさ。ほとんどは岩の星に宿っていたね。記憶を交換しながら考えたね。どうせなら長寿命で私とも話ができる命を育てたいとね』。
「どうしてですか?」。
イリーゼが不思議そうに聞く。
『イリーゼ、あんたはやっぱり若いね。姉妹たちは基本一人だ。話し相手もなく子供たちを育んでいる。たまに娘を産み出してもやがて旅立ってしまい、二度と会うこともない』。
少し間を開けてじっと宇宙空間を見ていたが、
『姉妹たちも何かが足りないような感覚でいたからね。だからスター・マインド以外の子供と話してみたいと思ったんだよ。ふっ、でもこの星系が結局連星系になって、娘たちが残ってしまったから賑やかくなってしまったんだけどね』。
朗らかに笑うリュミエルだった。
「ところで、プラズマ生命体とはどんな方たちなのですか?」。
ギンガが質問をしてみた。
『私にも話をさせてください』。
カラルがやっと口を開いた。
『この波長で話をする経験は初めてですから。何かワクワクします』。
『『『『母様ズルいです』』』』。
四人の娘スター・マインドも話してみたくてウズウズしていたようだ。
『順番だよ』。
リュミエルの一言で四人はカラルに譲る。
『フレアーノ。一言でいえば、長寿で思索に時間を使う生命体ですね。プラズマの中ではモノを作るということはできません。意思の力でプラズマにベクトルを与えてカタチを構成するくらいですね。フレアから離れると消滅しでしまいます』。
「プラズマを操作するチカラ。すごいな」。
『あなたたちが物質を使って何かを作るのと同じですよ。彼らの生活空間にプラズマしかないから』。
『そうであっても、物質世界に囚われた私たちにとっては驚異ですな』。
ファザーの発言にロクサが質問を返す。
『皆さんも物質生命体ではないですよね?』。
『我々は本来は電脳空間の住民です。ですが、ギンガのおかげでこのメカ体をもらいまして、この世界での生活を楽しんでおります』。
『私も他の世界を見てみたいな』。
『無理言わないの、オランジュ。私たちは宿った星から動けないわ』。
一番若いらしいオランジュの感想をシャルーがたしなめる。
『もしかしたら電脳空間を使えば追体験できるかもしれません』。
『どういう事?』。
ふと漏らしたシスターの一言にエスポ―が食い付く。
『ギンガ、メカ体のメモリを公開可能な情報ライブラリに繋意で良いでしょうか?』。
「セキュリティはしっかりな」。
『当然です。・・・電脳空間設定、セキュリティチェック終了、準備できました。皆さま接続してみますか?』。
六体とも速攻で電脳空間に接続し、閲覧を始める。
『何これ!』。
『すごい!!』。
『こんな世界が!』。
『キレイ・・』。
2時間ほど後、リュミエルが戻ってきた。
『電脳空間というのはすごいね。居ながらにして遥かに遠くの世界を再現できるとはね。私は旅の間に少しは他の世界を見たけど、娘たちはねぇ、そりゃ夢中になるよ』。
リュミエル自身もかなり上機嫌のようだ。
『ところで、この電脳空間を連星の近くに設置できないかい?』。
「・・おそらく可能です。耐久性がどの程度か分かりませんが、イリーゼと私で真マジュ粒子フレームを作ってマジュ粒子でメモリを構成すれば」。
『やってみてくれないか?フレアーノ達にも物質世界を見せることは意味があると思う。あんたたちの星海連合に将来参加するという目標もできるかも知れないしねぇ』。
「彼らはどうやって他の世界の情報を得ているんですか?」。
『ごく稀に物質体が宇宙空間を渡ってきて、六連星に突っ込んでくるからね。そこから少しでも情報を吸い上げる方法を編み出したのさ。稀と言ってもフレアーノたちの寿命が十万年単位だから、生きているうちに何度も体験できるからね』。
リュミエルに熱心に頼まれたので、イリーゼを読んで相談する。
「なるほど、空間記憶を真似て図書館を作るのね。耐久性を上げるため真マジュ粒子でフレームを作り、マジュ粒子をデータの受け皿にするのね。面白いわね」。
イリーゼは賛成してくれた。
そこへシスターが話に加わる。
『真マジュ粒子で箱モノ的なものが作れるなら通信設備を作ってみてはいかがですか?フレアーノたちが星海連合に参加する準備にもなりますし、何より私たちファミリーが彼らに興味があります。私たちAIと共通点が多いような気がするのです。さすがにメカ体と言えども近づけませんから、接触手段が欲しいのです』。
すぐに試してみることにした。先程のデータ図書館と通信ボックス、ついでに小型高速艇(これはギンガのお遊びだ)の設計図がデータ展開された。
ノリノリになっているイリーゼが急かすのでフュージョン。初めての試みなので六体のスター・マインドはもちろん、ファミリーも全センサーを駆使して状況を見守っている。
『真マジュ粒子生成・展開。データ・フレーミング。フィックス』。
意外と簡単にできてしまった。
『ライブラリとしてどのデータをまず搭載するんだ?』。
そう言った瞬間、孫娘スター・マインドたちが姦しく議論を始めてしまった。フレアーノのためだけではなく、スター・マインドたちも使う気満々のようだ。
『シスター、データ図書館のデータのリモート管理をできる接続機能を通信装置に追加してくれ』。
『了解』。
『ロクサ、シャルー、エスポー、オランジュ、ライブラリデータは入れ替えられるからとりあえず決めてくれ』。
『『『『わかったー』』』』。
何とか収まった。選択されたデータをマジュ粒子で構成し配置。
一旦フュージョンを解除しアークフェニックス船内に戻る。
お茶のお代わりを楽しみながらフレアーノたちとの接触の準備をする。
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