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潜む危機

明示はしていませんがここから第二章「承」部分に入ります。今後(後半や3に向けて)埋め込んでいきます。地雷にならないようには気を付けます。どうなるか、楽しんでいただければと思います。

17.潜む危機

 

 星海連合内の何もない空域にアークフェニックスを遊弋させつつ、ギンガはイリーゼ、ファミリーと状況を検討していた。


 「判らないことだらけだが、気なるのはジャアクだな」。

 『それは、危険分子みたいな個人なのでしょうか?』。

 『遺伝子的なものの可能性もある』。

 マザーとファザーが可能性を指摘する。


 「現段階では決めつけは危険だ。ルエーニによれば、滅びに導いたのは文明種族ではなく補助種族?ペットみたいなものか?だと言っていたしな」。

 『文明種族でない種族となると、遺伝子的なものでは説明しにくくなるでしょう』。

 「絞り込みは避けよう。あらゆる可能性を俎上に載せておく」。


 すると、イリーゼが別の指摘をする。

 「ジャアクが何かわかりませんが、スター・マインドの星では発生しないのですよね。そして、反マジュ粒子とも違う、と」。

 「今までの情報だとその指摘通り。マジュ粒子の無い状態で発生するのかもしれない」。

 「ジャアクの発生をマジュ粒子で打ち消せないのかな?」。

 『治療薬としてマジュ粒子が使えるかもしれない、ということも考えられます』。

 「「なるほど」」。

 マザーの指摘にギンガもイリーゼもビックリした。


 しかし、ギンガはある点に気付く。

 「クラインは何故暴走したんだ?あいつの中にジャアクが生まれていたのか?それとも、もっと別に何か原因があるのか?しかも、あいつはマジュ粒子に触れている。反マジュ粒子を産み出すためにはマジュ粒子に触れなければならないはずだ」。

 『そうですね。クラインは故郷の星系にあった【リセットの意思】に触れたわけではないはずです。イーヴィル・ダストが【リセットの意思】を放置するのは、他の星系の生命体が触れてもリセットが働くことは無いという前提に立って可能性もあります』。

 「なるほど、ジャアクにもっと別の謎がありそうだな。マザー、この議論を記録しておいてくれ」。

 『了解』。


 娘スター・マインドに会ったら再訪するという約束もあるので、ルオーブに会いに行くことにする。

 

 アークフェニックスの制御はファザーに任せて、ギンガはイリーゼに質問をする。

 「スター・マインドはどの程度マジュ粒子を生成できるんだ?」。

 「スター・マインドは何億年もかけてマジュ粒子を星に馴染ませてていくのよ。エネルギーを物質に変えていくんだから人間の感覚からしても微々たるものよ。しかも空間記憶にも使っているから。・・膨大なエネルギーでもあれば生成できるかもしれないけど・・」。


 『割り込んでよろしいでしょうか?』。

 シスターが話に加わってくる。

 『前回のマジュ粒子観測を現在も継続中ですが、他と比較すると圧倒的と言って良いくらいの濃度を観測している地点を割り出しました』。

 「高濃度マジュ粒子観測?どこだ?」。


 『es-900001 グランスィ六連星系です』。

 「・・グランスィには惑星は無いはずだが・・」。

 『肯定。データを再度点検しましたが、マルチ空間測量から間違いありません」。


 「んん?・・まさか恒星にか?」。

 『その可能性あり、と考えます』。


 「私たちは恒星にも宿れます、そう言ったではありませんか」。

 「そうは言うけどな、イリーゼ。恒星に宿ったスター・マインドの子供たちがどんな生命体なのか、想像がつかなくてな」。

 「常識にとらわれすぎです。ギンガらしくないです」。

 「・・・すいません」。


 『ギンガ、最近イリーゼに良く怒られていますね』。

 シスターにも呆れられてしまった。最近ファミリーの感情表現がかなり向上してきたような気がするギンガだった。考えてみれば、スター・マインド用メカ体開発に合わせてファミリー用もマジュ粒子合金に交換したことを思い出し、その影響かもしれないと仮説を立てた。今度調べてみよう。


 「ファザー、ルオーブ星系の後、グランスィ六連星系に行くぞ」。

 『了解しました。面白そうですな』。

 ファザーもか、やはり、感情が豊かになっているようだ。



 再びルオーブ星系。前回と同様の軌道に滑り込んだ瞬間にルオーブ用メカ体が動き出す。早速記憶交換だ。


 交換の間にマザーがお茶を用意する。すごく手慣れてきたような気がする。

 

 記憶交換終了。速やかにお茶会に移行する。何事もなくファミリーの4人もメカ体で参加。ますます困惑するギンガであった。このルーティン感覚は一体何だろう?



 『娘に会えたのね、ありがとう。旅立った子供のことを知ることができるなんて、驚きだわ。ホント、イリーゼのおかげね』。

 「これからもっと知ることができるでしょう」。

 おいおい何言ってくてるんだよ、と思うギンガ。私たちはスター・マインドの郵便屋か!


 『それにしても変わった存在が近くにいたのね』。

 しみじみと感想を漏らすルオーブ。

 

 「一億年以上も見てるだけってすごいです」。

 『イリーゼ、あなたはまだ生まれたばかりで実感はないでしょうけど、時間なんてあまり関係ないわよ。スター・マインドの時間感覚はそういうものなのよ』。

 

 この発言で、あらためてスター・マインドの凄さに感心した。時間なんてあまり意味がない、か。たぶんファミリーもそう考えているような気がした。


 『でも、ジャアクっていうのは判らないわね。私たちスター・マインドの育てた子供には現れないという事かしら?それともあなたたちが考えたようにマジュ粒子が関係しているのかしら?』。


 するとギンガのほうを見て、

 『あなたは、スター・マインドの子供ではないわね。ちょおっと待ってね』。


 ルオーブはギンガをスキャンしているらしい。マジュ粒子生成能力があるということは素粒子レベルでのスキャンができるということかもしれない。


 しばらくして、

 『ギンガ、あなたはかなり私たちに近くなっているけど、いくつか判ったこともあるわ。まず、遺伝子的にマジュ粒子との親和性がない。私の子供たちはマジュ粒子があればそれを吸収して体の構成要素の欠損を補うことができるの。その構造が無いわ』。


 「初めて聞いたが、・・そうか回復魔法と言われていたのはその効果か!」。

 『マジュ粒子が濃い場所か、マジュ粒子を溜めることのできる子しかその回復魔法は使えないけどね。マジュ粒子を作ることができるのはスター・マインドと精霊姫だけだから。まあ、寿命が長ければ少しだけ生成できるようになるかもしれないけどね』。

 「どのくらいですか?」。

 『あなたの時間で10000年くらいかな。イリーゼの生まれた星の竜族の長老ならできるんじゃないの?』。

 また、確認事項が増えてしまった。


 『もう一つ違いがあるわ。マジュ粒子の属性増幅の仕組みを持っていないわ』。

 「四属性のことですか?」。

 『そうよ。子供たちは星の一部なのだからその環境を維持する一端を担ってもらうの。その仕組みを体内に持っていないわ』。


 「なるほど。ジャアクがスター・マインドの子供たちに顕われないとすれば、今の二つの要素が関係しているかもしれない」。


 『どう?参考になった?』。

 「もちろんです。素晴らしい示唆をいただきました」。


 『感謝してくれるなら、また来てね。お茶会ってホントに楽しいわ』。

 にまーと笑って、再訪を約束させられた。まあ、そうでなくても来るけどね。


 さあ、予定通りグランスィ六連星系に向かおう。

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