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意外な手掛かり

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15.意外な手掛かり

 

 アークフェニックスで、cse-002564-2、同-3 の間にある小惑星帯に滑り込んだ。同時にシスターは周辺探知と通信傍受に入る。念のためだ。


 そう、すぐにイリーゼが、

 「お姉さまが来られます」。

 予想通りの成り行きである。


 スピリット・ルルーの場合と同様、女性のイメージ像が現れ、イリーゼと空間記憶の交換を行っている。すぐに終わるけどね。スター・マインドのデータ処理能力は凄まじい。さすが、惑星を管理する情報処理能力はスーパーコンピューターの比ではない。ファミリー(既知最高性能のスーパーコンピューターの集合体)ですら、自分たちの何倍くらいの能力か見当も付かないと言っている。計算直列速度が速いわけではなく、並列度が兆とか京とかを超えるらしい。


 空間記憶交換を眺めながら(とはいえただ話しているようにしか見えないが)、ふとスター・マインドは光速を超えられるんだろう、と思った。この場所から第五惑星まではそれなりに遠い。でも彼女はすぐに表れた。光速を超えるスピードか光速以上で稼働するネットワークを星系全体に展開しているかどっちだろうか?


 『初めまして。妹のパートナーさん』。

 イリーゼより少し年かさのビジネスパーソンのような外見の像が挨拶してきた。


 「ギンガです」。

 自己紹介すると早速予想通りの話になる。

 『その固有名良いわよね。私にもつけてよ』。

 「あなたの星の住民たちは、あなたもしくはあの星に名前を付けているんじゃないのか?」。


 『私の子供たちは、星を地球と呼んでいます。文明が発展し始めた時から見守るにとどめていますから、地母神ガイアという名前で宗教の中では呼ばれています』。

 「地球もガイアもありふれていると言って良いくらいの一般名称ですね。うーん・・、イリーゼ、世代的にどうなんだ?」。

 「私から見て五代前に分かれた後、三世代目です。始祖から8世代かな」。

 「系統的には少し離れた親戚だなあl」。


 「ファザー、ルオーブと命名された星はあるか?」。

 『ありません』。


 「スピリット・ルオーブでどうですか?」。

 伝えた途端に踊り出す。


 『素晴らしいわ!ルオーブ!私の名前!』。


 『ありがとう!イリーゼ。あなたが来てくれて本当に良かった!』。


 「第五惑星が星海連合に加盟を望んだときに、ルオーブ星系とか惑星ルオーブが選ばれるかどうかは・・・」。

 『まだ時間はあるわ。ガイアではなくルオーブという地母神名を浸透させる』。


 さらにメカ体も欲しがった。さすがに第五惑星には持っては行けない(オーバーテクノロジーで危険)というと、アークフェニックス内限定でということで何とか説得できた。早速外見を調整して起動すると、イリーゼとお茶会を始めた。スター・マインドは本当にお茶を好きになるようだ。


 ギンガもお茶会に参加する。

 

 惑星ルオーブ(仮)は非常にゆっくり発展してきたようだ。25億年前に宿り、じっくり種を育んできたらしい。現生生命体の寿命は比較的長いようで、知的成熟を果たしていると判断できる。ギンガが聞いている範囲では、連合加盟が認めらえるだろうと思った。ただ、星系外への進出にはもう少し時間がかかるだろうと思えた。


 そして驚くべきことが語られる。隣の遺跡星系が滅亡した経緯を知っていたということだ。ルオーブは、隣の星系からマジュ粒子が流れてくることは知っていた。隣にもスター・マインドがいるのかと思っていたそうだ。


 そこで、最初の娘スター・マインドを送り出す時に、隣の遺跡星系に向けて送り出したそうだ。その星系を見て、そして、空間記憶を送り返してくれるように頼んだ。


 イリーゼが評価した年代では、娘スター・マインドを送り出したのは、20億年前。空間記憶が齎されたのは19億年前。遺跡星系の滅亡も19億年前。

 イリーゼによると、娘スター・マインドは1億年ほど遺跡星系に留まっていたらしい。その間、イーヴィル・ダストとも話をしていたらしい。


 話の内容から推察すると、イーヴィル・ダスト自身はその星系で2億年ほど観察を続けていたようだ。これまでにない古い遺跡であるが、2億年も観察するとは・・・。生命サイクルが不明なので長いのかどうかも判らないが、イーヴィル・ダストの時間感覚も惑星発生型の生命体とはかけ離れていることだけは理解できた。


 さらに、イーヴィル・ダストが語ったことは、生命進化はいくつものチェックポイントがある。それをどうたどるかにより、他の星系に悪影響を与えるか否かをイーヴィル・ダストは判断しているらしい。その基準を語らなかったようだ。


 スター・マインドの空間記憶は宿った星系の事象を記録していくもので、スター・マインド自身の感情・思考は記録されていない。有体に言えば、伝言には向いてない。空間記憶を通信手段に使うなど創造主(存在すると仮定して)にとっては想定外だったようだ。ルオーブとその娘がそのことを考え付いたことがすごいのだ。足りない情報は直接聞くしかない。

 娘スター・マインドはすでに文明化しつつある星にはあまり関心を持たないので、何が起こっていたのかは記録されていなかった。イーヴィル・ダストと何を話したかもほとんどわからない。


 娘スター・マインドを探すことが非常に重要になってきた。スター・マインドが方向を変えることはまずないそうなので(重力場・磁場などの影響は受けないらしい)、遺跡星系を越えて旅をつづけたという前提でファミリーに検討させることにした。


 ここまでの情報を整理し、ルオーブ星系をお暇することとした。当然のこととしてまた来訪することを確約させられた。特に娘スター・マインドを見つけ出したら必ず来ることことになった。もちろんイリーゼの決定である。



 遺跡星系の方向、マジュ粒子観測、時間要素(宇宙は動いているのです)などをもとにファミリーが推測を行っている間に、予定のルートで遺跡を確認していく。94件の遺跡巡り(確定15件、推定79件)を完了した時点で【リセットの意思】を確認できなかったのは3星系のみ。1件は既に判明していたリセット前の自滅と推定される事例、残り2件は文明の発祥した遺跡ではなく、何と衛星規模の宇宙船の残骸であった。しかも同タイプと推定される。


 衛星船については、推定20億年以上前に活動を停止しているという結果であり、別途徹底的な調査が必要という結論を出した。報告書を、重要情報として提出しておく。この情報も八神将が活動できない以上ギンガしか閲覧できない。連合内部には立入禁止星系として通達される。違反すればギャラクシーコマンダーが介入するのでそんな無謀なことをする星系は星海連合にはない。まあ、そこまでの地位を確立するまではいろいろなことがあった歴史がある。それはまた別の話。


 手掛かりのあった【リセットの意思】の掃除を終えたところで、ルオーブの娘スター・マインドの所在推定が産出された。場所は星海連合の境界外を含む半径1000光年の範囲。ちょっと広すぎるが、とりあえず中心点に向かうことにした。

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