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帝国監視網

少しずつ話を展開させていこうと思います。大きな展開までもう少しかけます。

13.帝国監視網

 

 イリーゼは戻ると同時に、ガイとレイに会いに行ってしまった。銀河はドックの点検システムのデータを読むとチェックポイントを指示して邸に戻った。



 会議室で一人考え込んでいると、イリーゼをお茶を運んできた。


 「姉様にいただいたお茶を淹れてきました。少しアレンジしてみました」。

 「ああ」。


 考え事をしながrお茶を含んだギンガが急に気が付いたように目を見張る。

 「美味いな」。

 「ふふっ。それはよかったです」。

 イリーゼは上機嫌で微笑む。



 「ところで何を考えていたのですか?」。

 「最優先課題は、イーヴィル・ダストの現所在と【リセットの意思】の設置場所の特定だな」。


 「だが宇宙は広い。星海連合の版図だけでも広すぎる。だから、あたりを付けて探さなければとても探索は無理だ。おいおい探査システムを開発しなきゃならないけどなぁ」。

 

 話しているところにファミリーたちのメカ体が来る。

 『『『『お呼びでしょうか』』』』。

 「ああ、今後の方針を決めておこうと思ってな」。


 「ファザー、星海連合の3Dマップを投影してくれ」。


 続けて束表示の情報を指示していく。


 「ヴィオネロン帝国の措定されている版図も表示だ」。

 

 「ヴィオネロン帝国との境界星域で遺跡報告のある星系を黄色の光点で」。


 「それ以外で星海連合内の遺跡報告星系を緑で」。


 「トリューブ礫星団と廃墟星系を赤で、we-400725 を紫で表示」。

 「ルルーの星です!」。

 強い口調でイリーゼが訂正を求める。


 「・・惑星スピリット・ルルーを含む星系を紫で表示」。

 にっこりと微笑むイリーゼ。強い、ファミリー全員の認識である。


 表示されたマップを眺めながら、説明を続けるギンガ。

 「現状でトリューブ礫星団が一億八千万年前、廃墟星系が一億七千万年前。惑星スピリット・ルルーの

、ああ面倒くさい、ルルー星系が三千万年前。時系列データはこれだけだ」。


 『他の遺跡を中心に検証が必要ですが、確かにヴィオネロン帝国方向に移動しているようにも見えます』。

 ファザーが指摘する。続けて、

 『ただ、その方向を延長すると、帝国の辺境と推定されている星系になります』。


 「・・本当にその星系にイーヴィル・ダストが向かったとすれば、その星系が帝国起源の可能性があるな」。

 『その可能性はこれまで検討もされていません』。

 「推測が正しいとすれば、秘匿事項なのだろうな」。


 『イーヴィル・ダストを追っていると、恐ろしい仮説が次々と浮上しますな』。

 「スター・マインドとイーヴィル・ダストは宇宙創成と関係があるかもしれない。そして、空間記憶によりトレースも可能。そこから得られる情報は驚くべきものがあるのだろうな」。


 『アガシック・レコード?』。

 マザーが動揺したような声を出す。AIではあり得ないことだが。

 それに対してイリーゼが静かな口調で答える。

 「スター・マインドの空間記憶は直列分だけです。別れていったスター・マインドの記憶はありません」。


 「スター・マインドは宿ったのちはその星から動けない。イーヴィル・ダストは自身の空間記憶もリセットする。だからアガシック・レコードは存在しない。でもイリーゼが誕生した。イリーゼが全てのスター・マインドの空間記憶を統合すれば、アガシック・レコードとは言えないまでも凄まじい記録を持つことになるな。・・だから、アガシック・レコードの話は封印だ、いいね」。

 

 ギンガの指示に声もなく頷くイリーゼとメカ体だった。



 「話を戻そう。カタストロフィ―の種を可能な限り摘み取る作戦を実行しなければならない」。


 「【リセットの意思】は極めて危険だ。判明している遺跡は全て巡回する。効率的なルート策定を、ファザー、頼む」。

 『既にできております。表示します』。

 「ありがとう。さすがだな。すぐにはじめよう」。

 『通常運用では、三日後には出港可能です』。


 「超高感度情報収集探知機は用意できるか?数は三機。配備は、こことここ、そしてここだ」。

 マップ上の3ポイントを指定する。

 『搭載済みです』。


 「よし、三日後に出港だ。・・大丈夫か、イリーゼ?」。

 「わかった。それまではガイとセイと遊べるわね」。

 「そこは自由だ」。


 「ギンガは何かするの?」。

 「考えることは多いな。イーヴィル・ダスト探知機の開発もあるし。・・後は、お茶の改良をしようかな」。

 「!お茶作っているの?」。

 「街で、確か栽培農家が1件あるはずだ」。

 『チャリンさんです』。

 マザーが補足してくれる。


 「ちょいと街に足を延ばしてみるか」。

 「お茶だったら私も行く!」。

 イリーゼも惑星クルル訪問ですっかりお茶マニアになったようだ。



 翌日午後、チャリンさんのお茶屋を訪問する。


 「お邪魔するよ」。

 「ギンガさん、珍しいですね。おや、そちらの方は?」。

 店番をしていたチャリンさんがさっそくイリーゼに気が付いた。ちなみにチャリンさんは女性です。


 「はじめまして。銀河のパートナーのイリーゼと申します。お茶を勉強したいと思っています。よろしくお願いします」。

 「こりゃまたご丁寧に。ところでお茶を勉強したいって?」。

 下世話なツッコミをしようとしていたチャリン夫人は、それよりもお茶のほうに関心が移ってしまった。とてもナイスなイリーゼの対応である。


 「ブレンドをやりたいです。でも後々は新しいお茶を創り出せないかと思っています」。

 「そいつは素晴らしい。あたしはチャリンだ。そのあんたの夢を聞こうじゃないかい」。

 イリーゼを引っ張って隅のテーブルに行ってしまった。ギンガのことは全く眼中にない様だった。


 話が盛り上がったらしく、ギンガは3時間ほど放置された。腹いせに試供品と書かれたお茶を勝手に淹れて時間をつぶした。試供品だから良いよな?とばかりに楽しませてもらった。


 「放っておいて悪かったね。・・あらぁ、結構飲んじゃったねぇ」。

 「3時間放置で良く言うよ、チャリンさん」。


 「それより、イリーゼさんの持って来た苗、私も初めて見る種類だよ。こいつは期待できる。任せてくれるよね」。

 すごい迫力で迫られた。イリーゼを見ると舌を出した。こいつ隠れ里から持ってきたな。今度生態系の話もしておかないとな、と呆れるギンガ。ウィルスターではファミリーが生態系予測を行っているので危険なものはそもそも持ち込めないのだが。


 「わかったよ、チャリンさん。かなり香りが良い種類だと思う。増産頼むよ」。

 「頼まれるまでもないよ、まかしといてくれよ」。


 チャリンの店を後にして邸に戻りながら、

 「何処のお茶だよ?」。

 「隠れ里と妖精の里、それに竜の里で自生していた3種類です」。

 「それ、違った魔力に順応しているよな?」。

 「ええ、たっぷり与えておきましたので、良く育つと思います」。


 そう言えば、全ての属性をイリーゼは使えるんだったな。マジュ粒子も生成できるし。ウィルスターにもマジュ粒子が満ち始めるのか、と思うギンガだった。

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