3人(?)目のスター・マインド
9.3人目のスター・マインド
星系 we-400725に向かうギンガ一行。イリーゼはとても楽しそうである。母様以外のスター・マインドに会えるかもしれないということでワクワク感に満ち溢れているようだ。
「いると決まったわけでもないぞ」。
「いらっしゃいます。私の勘がそう言っています」。
ずっとこういった具合である。ギンガもこれ以上何か言うのは諦めた。居たら居たで面白い情報が聞けるだろうと思いなおした。居なかったら、今度は何故マジュ粒子が検出されたのかと言う、次に追及する課題が明確になるし、とも考えていたが・・・。
最も炭素型生物に適した環境と想定される第四惑星の外周軌道にディメンジョンアウトすると、その瞬間イリーゼが舞い上がる。
「お姉さま、いらっしゃいます」。
イリーゼの声と同時に、イリーゼよりやや年上の感じの女性のイメージが浮かび上がる。
『こんなことがあるのですね』。
イリーゼの母様と同様の精神に直接届くような声が聞こえてくる。聞こえているように感じるが、そうではなくテレパシーのように直接行けているのだろう。
しかし、AIであるファミリーにもその声は聞こえているようだ。
『不思議な経験です。これは解析のし甲斐があります』。
ファザーは感動?しているらしい。
「お姉さまは、私から三代前のスター・マインドから別れていますが、世代的には私と同じです。この星に来て三千万年くらいです」。
『私もそろそろ子供たちを育み始めようと考えていましたが、新しい試みもしたいなあ、と思っていたのです。三代前の母様から分かれた姉妹たちがどのような子供たちを育んだのかはとても貴重な情報です』。
イリーゼとの空間記憶の交換はすでに終わっているようだ。
「私の同族が来たことがあると思いますが?」。
マジュ粒子が発見された時のことを聞いてみる。
『ああ、来ましたね。でもすぐにいなくなってしまったので情報を得ることができませんでした。空間記憶もありませんでしたし』。
「マジュ粒子を使えるのはスター・マインドだけだからなぁ」。
呟くギンガに答えるように、
『そんなことはありませんわ。私がここに宿った直後に、マジュ粒子をまとった存在が通りました。でも、不思議なことに空間記憶の中身は何もありませんでしたけど』。
「イーヴィル・ダストだ!」。
全員驚愕する。
改めてイーヴィル・ダストの情報をまとめてスター・マインドに伝えるイリーゼ。記憶交換の際には、何もせずに通り過ぎたため、イリーゼもイーヴィル・ダストだとは気が付かなかったらしい。
『まあ、そんな存在もいるのですね』。
スター・マインドはおっとりと表現することが妥当な雰囲気で感想を述べている。どうやらお嬢様気質のようだ。
それ以外に情報は無く、得られたのは二点だけ。
・約3千万年目にイーヴィル・ダストはこの星系を通過した。
・その時スピードは光速をわずかに超えていたらしい。
しかし、極めて重要な情報だ。空間記憶を精査したイリーゼによれば、イーヴィル・ダストの移動速度は光速の四倍程度っだたようだ。ちなみに、スター・マインドは光速を超えることはできないらしい。ただ、イリーゼは、やり方を知らないだけだとも考えているようだ。
せっかく来たということで雑談?をしばらくしつつ、星系の情報をきっちり収集していると、スター・マインドが、おずおずというような感じで言ってきた。
『私たちは、それぞれの星では唯一無二の存在です。あなたたちは私たちをスター・マインドと呼んでいると知りました。でもそれは総称です。でも、妹はイリーゼと言う固有の名をもっているのです。とても羨ましい。・・私にも名前を付けて欲しいのです!』。
ギンガもこれには驚いた。
「私からもぜひお願いします」。
イリーゼからも熱いお願いがくる。
「we-400725-4」。
「却下です」。
イリーゼが怒る。
「命名したらそれが、惑星名になってしまう」。
「いいじゃないですか?そこにスター・マインドが宿っているということを発見したのですから。命名権を主張してください」。
「いや、発見するたびに・・・」。
「命名して下さい!」。
イリーゼの押しの強いこと。結局押し切られた。
「ファザー、惑星名でルルーと言うのはあるのか?」。
『ありません』。
「そうか。では、正式名スピリット・ルルー、愛称ルルー、でどうだ?」。
『ありがとうございます!!!」。
気に入ってもらえたようだ。ほっと一息つくギンガ。
その後、またの来訪を約束させられて(ルルーとイリーゼの両者に!)、帰路に就くアークフェニックス。
当然の流れながら、イリーゼの宣言が響く。
「次は、母様の名前を付けに行きましょう!」。
「はい」と言うしかないギンガであった。
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