父と息子の確執
昴は神界から、久々に現世にやって来た。理由は単純だった。しばらく会っていない父親に会う為だったのだ。
「父さん、居るか?」
朱色のパーカーに長ズボンという昴にしてはかなり簡素な服装で現れた事に、父親である桜弥は驚いた。
「昴、なんの用だ?」
「まぁ、ちょっとな」
昴は左手に数珠を巻きつけると、桜弥の胸に手を当てた。
「えっ…?!」
「死ぬ前にもらえるものはもらっておかないとな」
「まさか…、能力を…?!」
昴は桜弥の霊力を吸収し、前を向いた。
「なんでだよ…」
「華玄がどうして王蓮の魂を奪わなかったのか分かるか?」
「それは…」
「華玄は最初からもう一度産まれ変わるつもりだったんだよ。それで強力な力をもつ陰陽師の魂を必要としてた、それが今の父さんなんだよ」
「じゃあ何故今能力を…」
「父さんや母さんが強力な力を持ってるのは、俺の存在があるからだよ、華玄の力に耐えられるくらいの力がどうしても二人には必要だった、そして父さんは王蓮の、母さんは月輪の妻である弓姫の魂が宿ってる。だが、俺から離れれば、その強力な力も能力も誰かに移らずに消える。だから、そうなる前に回収しておきたかったんだよ」
桜弥は昴を睨んだが、昴は冷静を失わなかった。
「お前は、華玄と同じ事をしている!」
「俺は俺だよ、決して華玄じゃない。それに、俺は父さんとも違う」
「何…?!」
「未来は見通すものじゃない、自らの手で造り出すものだって」
「あっ…」
昴の目が一瞬黄金に輝いた。
「お前は…、俺を助けたり、能力を奪ったり…、何がしたいんだ?」
すると昴は、霊水晶を造り出し、それを握り締めた。
「仕方のない事だったんだ、華玄が、そして俺がこれからも強い力を持ち続けるには、月輪や日輪、紅姫や弓姫、それから王蓮の力がどうしても必要だった」
「昴…、お前は何処まで向かうつもりなんだ?」
「何処までもだよ、俺は、全てを超えてやるんだ」
昴は前を向いてそう強く言い放った。
「じゃあな、父さん」
そして、昴は桜弥に背を向けると、家から出ていってしまった。
桜弥が呆然としていると、真莉菜が現れた。
「桜弥さん?」
「昴に能力を奪われた、俺にはもう未来を見る力はない。だが、一つだけ分かる事がある」
「えっ…?」
「俺はもうすぐ死ぬ」
桜弥の目は決意を持っていて、真莉菜はそれに対して何も答える事が出来なかった。
外に出た昴は、通り掛かった駆と早苗に声を掛けた。
「お前らが、太一の知り合いだな?」
二人は昴を見ると、見ず知らずの人が太一の事を知っている事に不審を抱き、警戒した。
「あの、どちら様ですか?」
「俺は太一を知る人だよ、ちょっと太一が危なくてな…二人に来てほしいんだ」
二人は、昴を睨んで後ずさりした。
「知らない人には付いていくなって先生が行ってた!だから俺は行かない!」
「そう言って私達を騙して誘拐するつもりなんでしょ?!」
「お前ら…、本当に太一が危ないんだぞ?」
「行こう、あの人はなんか危ない気がする」
二人は昴から目を背け、逃げるように立ち去った。
「ハァ…、手荒な真似はしたくなかったんだがな、仕方ないか…」
昴は有水晶を取り出すと、次元の歪みを造り、二人をそこに突き落とした。
「あっ!」
「ええっ?!」
「悪いな、二人には少しばかり力を貸してほしいんだ」
昴もその中に入ると、三人一緒に冥界の王宮にやって来たのだった。そして、昴は二人を王宮の部屋の中に入れると、太一の所に向かったのだった。




