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因縁と覚悟の果て

 太一が帰って、しばらく経ってからの事だった。桜弥が自分の部屋のベッドで眠っていると、何処からかガラスが割れるような音がした。そして、魂が抜け、冥界へ昇っていく。

「えっ…?」

「桜弥さん!」

冥府仙女の姿になった真莉奈がそれを追い、冥界の上空で追いついた。

「俺、死んだんだよな…?」

真莉奈が魂だけの存在になった桜弥の腕を掴もうとすると、黒い翼を持った怪に邪魔された。

「あっ!」

「ごめん、今の俺戦えない…」

「待って!」

真莉奈は鎌を手に持つと、怪の方に向かって行った。怪は翼を紫色の気で包むと、真莉奈の方に近付いて来る。

「『弓月斬破』!」

真莉奈は、一発で怪を消滅させると、桜弥の元に近づいた。

「桜弥さん!待って…」

 桜弥は真莉奈を抱こうとした。だが、霊体になってる桜弥と、無水晶の力で無の状態になってる真莉奈だ、お互いに触られる訳がなかった。

「全く、最後の最後くらい触らせろよ…」 

「なんで、こんな時に限って…!」

真莉奈は、桜弥の目の前で泣き崩れた。

「昴の事よろしく頼んだぞ、俺はもうここには居られない」

 桜弥は泣きながらも笑っていた。そして桜色の光の粒となり、冥界の上空の中で散っていった。

「そんな…!」

真莉奈は目頭を抑え、その光が散った先を見ながら泣いていた。季節外れの桜が一斉に咲き、川面に花弁を散らしていく。

「こんな別れなんて…、こんな別れだなんて…!」

 真莉奈は、自分が何に対して悲しんでいるのか、泣いているうちに分からなくなってしまった。だが、桜弥の存在が、真莉奈にとって何よりも大切だった事は確かだった。


 泣き疲れてしまった真莉奈は、神化が解け、地上に落ちていく。それを、黒い龍の姿をしたグルーチョが拾い上げた。

「真莉奈様、大丈夫でしょうか」

「ごめん、こんな姿見せて…」 

 グルーチョは何も言わずに桜を見ていた。冥界の桜は紅く、川は血が流れたように見える。それは、桜弥の存在がさっきまでそこにあった事を示しているかのようだった。


 真莉奈と同じように、桜を見上げている者が居た。

「昴様、どうなされましたか?」

昴は、王宮の庭にある桜の木を見上げていた。右の手の平には桜色の水晶があり、意思があるかのように光を放っている。

「父さん…」

昴はそう呟くと、水晶を握り締めた。

「しかし、どうして御父上様の魂を消滅させたのですか?華玄なら、魂を取り込むはずですのに…」

蜥蜴の姿のゼッタは肩に乗り、一緒に桜を見ている。

「俺は華玄じゃない。それに、父さんの魂だって完全には消滅させてない、この桜の木に植え込んだんだよ。父さんの魂だって強大な存在だ、残っていれば怪とかに狙われ、争いが起こる。俺はそれを止めようとしたんだよ。そして、父さんにはこれからも俺の側に居てもらう」

「そうですか…」

「なぁゼッタ、華玄は本当に悪い奴だと思ってるのか?」

「えっ…?」

ゼッタは、突然の昴の問いに答える事が出来なかった。

「確かに華玄は様々な禁忌を犯した。月輪と紅姫と日輪の魂を取り込み、強大な存在になろうとした。だが、これは華玄が月輪の力に限界を見たからなんだよ。そして、自分が冥王になろうとしてした事だった。」

「月輪様の力に限界が…?」

「まぁな、華玄にもある程度は未来を見通す力があったんだよ。それを見越して冥王になろうとした華玄は、自分の魂を更に大きくした。だが、吸収しようと思えば出来たのに、弓姫と王蓮の魂は吸収されなかったんだよ。」

「どうして、なんでしょうか…?」 

「華玄自体にも限界はあったんだよ。そして、自分の力に耐えられなかった華玄は、自分で自分を封じ込んだ、ように見えた。だが、実は、一度限りなく死に近い状態にして、もう一度産まれ変わる為の準備だったんだよ。それが分かった人は誰も居なかったがな。」

ゼッタは、華玄が居た頃の事を思い出していた。

「華玄かそれ以上の存在を再び産み出すには、引力と、同じように強大な魂が必要だったんだ。その為に華玄は、王蓮と弓姫の魂を一度封印して、頃合いを見て解き放った。二人を産み出すにもまた引力が必要なんだよ、それを見つけるのは大変だった。まぁ…、それがあの父さんと母さんなんだけどな」

「そうだったのですか…」

「その事を、父さんと母さんには言い出せないけどな…」 

 昴は、もう一度水晶を握り締めた。

「なんか、梨乃様が亡くなった時を思い出しますね…」

 梨乃が死んだ時、王宮に植えられていた梨の花が一斉に開いた。その時も、昴はずっとその木を見上げていた。

「後何回、この別れがあるのだろうな…。杏や靖だっていずれ死ぬし、死神である祖父さんや母さん、朝日もそうなんだよな…。俺は送られる側にはなれない、大切な人が目の前で消えていくのを、見る事しか出来ない」

昴の悲しそうな顔を見て、ゼッタはその頬に擦り寄った。

「昴様…、俺達はずっと昴様の元に居ますよ」

「ゼッタ…」

昴はゼッタに指を握らせ、前を向いた。

 

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