追跡
第8回!
僕の身体がやっと動くようになったのは、暗闇に広がる夜が、太陽の光によって空が明るくなる朝の頃だった。
「……」
本当に役に立たない身体だ。
(川本君?)
「……行こう」
自分自身にイライラして、つい素っ気無い答えを返してしまった。
(うん…)
「…ごめん」
(…ううん)
ドアを開け、僕は昨日の惨状を知る為に、二階から一階に繋がるの階段を下りる。
クラサはどうなったんだろう。
その場を見渡してみる。
木で作られた家。
変わった様子はあまりない。
受付にいるおばさんに僕は話しかけることにした。
「おはようございます」
この世界でも朝の挨拶ってあるのだろうか?
ふと疑問に思ったが…。
「おはよう」
受付のおばさんは、苦笑しながら挨拶を返してくれた。
「…あの、僕をここに連れて来てくれた女の子が居たはずなんですが…」
僕が恐る恐る聞くと。
「あぁ…やっぱりあなただったのね、あの子は…」
僕はつい、ゴクリとつばを飲み込んでしまう。
「連れ去られたわ…」
連れ去られた…?
「ごめんなさいね…何も出来なくて…」
なら、まだ生きている可能性があると言う事だ。
何故連れ去ったのか…。
そういえば、『しりません!』というクラサの声を聞いた気がする。
刺客に剣について聞かれたのかもしれない。
ここを襲撃し、クラサを連れ去ったヤツの狙いがあの剣を手に入れる事だとしたら…。
まだ望みはある…。
希望的観測かもしれないけど…。
「…あの!何処に連れ去られたか分かりますか?」
「…ごめんなさいね…あの後、村の男達に頼んで探してもらったんだけど…まだ連絡が無くて」
「そうですか…ありがとうございました」
「ごめんね…」
「いえ…」
どうやって探せば良いんだ…。
あの森か…?
宿を出ると、農村と言った感じの小さな村が視界に広がっていた。
少し懐かしい感じがする風景。
だが、今はそんな風に感傷に浸っている場合ではない。
右にも左にも道が広がっている。
どっちに行ったらいいか分からない状態で、少し笑ってしまう。
(…どうしたの?)
「ううん、ホント、右も左も分からないってこういう事を言うのかなって思って」
(あは…でも、やる事は決まってるよね?)
そうだ…。
昨日の騒ぎは昨日の夕方ぐらいにあった出来事のはずだ…。
なら、見た人が居るのではないだろうか。
「聞き込みしよっか」
僕は適当に村を歩き回りながら、聞き込みを始めた。
村を歩き始め1時間。
情報としては、朝頃に村の男達が総出で西の洞窟に向かったという事。
時間としては、僕が宿を出た頃だろう。
詳しく聞くと、連れ去った男に向かい少女が『西の洞窟に隠してある』と言っていたそうだ。
西の洞窟には、強いモンスターが出ると言う噂で、誰も近付きたがらないらしい。
洞窟に入るまでに連れ戻せるかどうかの問題だという事で、洞窟に入ってしまっては人間ではどうする事も出来ないという事だ。
(川本君…)
「行くよ…。行っても何も出来ないかもだけど…。行かなかったら絶対後悔する…」
(…そうだよね)
僕達は追うように西の洞窟のある方へ駆け出した。
昨日休んだので今日中にもう一回更新予定!