結界
第76回!
(ちょっと待った)
ウィーネ達が居る場所に急いで戻ろうとする僕たちに、ウィルが待ったをかけた。
「何…?」
正直、急ぐ気持ちがあるが、この人の話は聞いた方が良いだろう。
(何処に行くんだい?)
「え…?ウィーネ達のところだけど」
(…はぁ。…戻る事は、どういう事か分かってるのかい?)
ため息と共に、ウィルは質問してきた。
「……?」
(君たちは現在、高魔力を有している。つまりは…)
そう。僕たちは、既に影達に狙われる存在という事だ。
「あ……」
(思い出したようだね。今、彼女達の元に戻っても邪魔どころか、魔族の影に狙われるだけだ。私達は別々に逃げるしかないのさ)
僕は、ウィーネ達のを事で頭がいっぱいで重要な事を忘れていたようだ。
今、合流したところで意味がない。
……なら。この魔力を使い、次はこちらが魔族を引き付ける番でもあるのだ。
(分かったようだね)
「ごめん、ちょっと混乱してたみたい」
(仕方ないよ。大切なものが無くなる感覚は、正常な心を狂わせるからね)
大切なもの…。
…出会ってまだ数日しかたたないけど、そうかもしれない。
クラサもウィーネもヒリナも、ウィルだって。
今は大切な人なのかもしれない。
「大丈夫です。ヒリナちゃんは足が速いですから」
クラサが僕を安心させる言葉をくれる。
クラサ自身も心配だろうなのだろう。その表情はいつもの表情と違い、少し強張っていた。
(また合流するには、まずは自分達の安全の確保が大事だよ。大丈夫さ、本体は狙われないはずだよ)
ウィルがクラサに続けて、希望の言葉をくれる。
「うん…ありがとう」
僕は二人にお礼を良い頷いた。
(…じゃあ、魔族の影が来る前に逃げようか)
「うん」
僕達は、後ろ髪を引かれながらも、ウィーネ達とは違う方向に逃げ去った。
―――僕とクラサはそれからも、森を走り抜けた。
運よくだろうか、僕達は未だに、魔族の影はとは遭遇していない。
エルフ達を追いかけるのと、ウィーネ達にへ向かった魔族の影達で手一杯だったのだろうか。
「…ッ…ハァ」
そこで僕は少し走りを止めた。
ここまで走り続けたせいで、足がパンパンに張っている。
限界が近いのだろう。
僕達は走るのを止め、少し歩く事にした。
(……これは)
すると、ウィルが声を発した。
「…どう…したの…?」
途絶え途絶えに僕はウィルに質問した。
(二人共、止まるんだ)
「…?」
僕達はウィルの言葉で歩みを止めた。
休憩させて頂けるのなら嬉しいんだけど、そういうわけでもないようだ。
(これは…結界…?でも、魔力を感じない…?私の術とも違う…なんだ…これは)
またもブツブツとつぶやいている。
…目の前。
僕には、ここまで続いていた森が、先にも広がっているだけのように見える。
ウィルが言うのが本当なら結界が張られているらしい。
触れるとバチッっと拒絶されてしまうのだろうか。
「…あ」
次は、後ろから。
クラサの声が聞こえた。
クラサは僕の服を掴み、言葉ではなく、行動で僕に何かを伝えたかったようだ。
その時点で僕は気が付いていた。
クラサの反応で既に察しがついていたのだ。
恐る恐る、僕はクラサの見ていた方向を見た。
そこには…。
魔族の影が2体、獲物を狙うゾンビにのように、ゆらゆらと揺れるように、こちらに向かってきていた。
合流出来る事は出来るのでしょうか。




