決断
第74回!
僕達はエルフから情報を引き出した。
やはり、エルフの森を襲ったのは魔族の仕業のようだ。
いち早く魔法都市デンゼルの全滅の情報を掴んでいたエルフ達は、戦う事はせず即座に散り散りに逃げ出したという。
とても賢い選択だと思う。
イトキのあの魔法ですら打ち消せなかった麻族の影。
そんなものに対抗しても無駄死にしかない。
エルフ達はいつでも実行に移せる準備はしていたようだ。
まずは、生き残る事を優先した結果なのだろう。
僕達は、それだけを聞き、エルフを即座に解放する事にした。
この場に長く止まらせるわけにはいかない。
いつまた、魔族の影が追ってくるかもしれないからだ。
こちらの身としても、一緒に行動するべきではないと判断した。
共に逃げる事も考えたが、ソロで逃げた方が効率が良いだろう。
僕達の理解に対し「ありがとう」と礼を述べ、エルフはその場を去った。
あの魔族の影が何処まで追っていくか分からない。
何処までも追っていくのなら、時間稼ぎぐらいにしかならないだろう。
「大丈夫かな…」
僕がそう呟くと。
(君達が言う魔族の影は魔力で動いているんだ。なら、魔力が切れれば本体に戻るはずさ)
ウィルが解釈を述べてくれた。
ウィルの解釈は予想の範囲内でしかないが、最上級魔法使いの彼が言うからこその説得力。
それに少し安心した。
逆に、そうして逃げてくれる事により、魔族本体の魔力を少しでも消耗させてくれるのはとてもありがたい事だ。
エルフが逃げて行った方向を見つめ、少しばかり後ろ髪を引かれる思いで僕達は先に進んだ。
(もうすぐだね)
それから何kmか進んだ所で、ウィルがそう言った。
僕たちの中で魔力を感知できるのは、ウィルだけだ。
(……やばいね)
次の瞬間、ウィルが気まずい声をあげる。
「やばいって…?」
(複数の魔族の影が、僕の隠した魔力の方へ向かっている。速度は遅いが、こちらが着くより早く魔力を取られてしまうだろうね)
確かに最悪の展開だ。
エルフ達が俊敏に逃げた事により、思った以上に早くウィルの隠した魔力の発見が早まったのだろう。
どうする…?
(君達ではあれには対抗する力はない。諦めるしかないようだね)
本当にそうなのか…?
せっかく、少しずつでもエルフ達が魔族の魔力を消費させてくれているのに、僕達は何もせずに魔族に増大な魔力を与えるだけなのか…?
(すまないね…今の僕の魔力じゃ、魔族の影を引き付ける囮にすらなれそうもない)
何も良い考えが思い浮かばない。
ウィルと同じく、僕なんかじゃ到底囮にもなれない。
…くそっ。
僕は握り拳を強く握る。
悔しい…。
力がないのが…本当に悔しい。
…すると。
そっと、そんな僕の握り拳に触れる温かいモノがあたった。
え…?
ウィーネの手だっただった。
「魔力があれば…いいんだよね?」
僕を見上げ、ウィーネがそう口にした。
「ウィーネ…?」
「私がここで、魔力を集める」
(その手があったか…!精霊族は大気から魔力を集められる。その気になればいくらでも…)
でも、それじゃあ…こんな小さな子に囮をさせる事になる。
「…危険じゃない?」
ウィーネの足の速さは、人並みだ。
エルフのような俊足ではない。
魔族の影に、ウィーネ本体を狙われる事はないとしてもだ。
「私も一緒に残るわ」
僕と同じ考えに至ったのかヒリナがそう答え、ウィーネの方へと一歩踏み出した。
「安心して、私がウィーネを絶対連れて逃げてみせるから」
ヒリナがウィーネの頭に手をポンと置くと、ウィーネは安心した表情をした。
「……」
ヒリナが居てくれるのなら安心だろう。
しかし…心配が尽きる事はなかった。
(時間はないよ…?どうする?やるなら今すぐからでも始めてもらわないとね)
そう、迷ってる時間はない。
「……」
「私も、力になりたいから…っ!」
僕達に向かい、ウィーネがそう告げた。
そんなウィーネを見ると、ウィーネはとても強い意思を持った目で僕たちを見返していた。
「……っ」
そんなウィーネを、クラサは力いっぱい抱きしめた。
すると、ウィーネが頬を赤く染め、照れるように笑った。
そんな姿を見た僕は…。
二人を信じる事にした。
「うん…任せた」
さて、どうなる事やら!
一週間程お休みします!




