急行
第72話
その言葉を聞き、周りの人がざわつき始めた。
「じゃあ次は…」
その先は誰も言わなかったが、そんな事は誰でも予想ができた。
次に襲われるのは、この都市の可能性である可能性である。
それに気付いた一人が、即座に長の元へと走った。
僕には、エルフの森を襲っている者達に心あたりがある。
僕はヒリナを見る。
「そうね、魔族でしょうね」
「うん」
あの女性のようなもの。
あれが大群で高魔力を誇っていた魔法都市デンゼルを全滅させたように、次は高魔力を持つエルフ達を狩る為にエルフの森を襲っているのだ。
故に、高魔力を持たないこの都市の人達は襲われる事は無いだろう。
(これは、まずいね…)
すると、宝石の中からウィルの気まずそうな声が聞こえてきた。
「え…?」
(実は…エルフの森周辺に魔力を隠していたりするんだよね)
「はぁ!?」
僕より早く反応したのはヒリナだった。
「あんた…エルフが高魔力を所有しているって知ってるでしょ?!狙われるに決まってるじゃない!」
(いやー…魔族に襲われる前だったからね…誰かに見つかって奪われないように、エルフの高魔力に紛れ込ませたかったのさ…)
なるほど…。
あ…もしかして。
「あの場所にいたのって、その魔力を回収しようとしてたの?」
(ご名答だね…その通りだよ。一番近い場所だったしね)
「あーもぉ…どうするの?」
頭を軽く掻きながら、僕に意見を求めるヒリナ。
みすみす高魔力を渡してしまうようなものだ。
「…行くしか無いかな?」
あの魔族に対し、僕達は対抗手段を持たない。
だが、逆に高魔力を持たない僕達は魔族から狙われる事は無い。
(行くまでは楽だと思う、ただ…帰りが問題だね)
「どういう意味よ」
(君たちは高魔力を所有する事になる)
「あ…」
それは魔族の狙いが僕達に向くという事だ。
(だから、君たちが魔族への対抗手段を身につけてからにしたかったんだけどね)
あぁ…だからすぐに、その場所に寄ってくれと言わなかったのか。
だけど、僕たちにそこまで考えている時間はない。
すると、クラサとウィーネが宿の扉から出てきた。
僕達は、クラサとウィーネに先ほどの会話の内容を伝えた。
「―――と言うわけなんだけど…」
クラサは唇に手を寄せると、少し考えた。
「そうですね、行くべきかと思います。エルフの魔力だけでもかなりの量を蓄えられる上、ウィルさんの魔力まで取られてしまったら目も当てられません」
クラサの意見で、僕達の意見はまとまった。
当初、僕とヒリナと宝石内のウィルの少数精鋭で向かいたかったが、クラサもウィーネも付いて行くと聞かなかった。
多分、僕たちが心配なのだろう。
トロールの件もあり、僕は強く言えなかった。
ここで揉めている時間はない。
僕達ははさっき上がってきた階段を引き返し、エルフの森へと行く事になった。
階段を降り立った僕達は、そのまま早足でエルフの森の周辺、ウィルが魔力を隠している場所へと急いだ。
「でも、エルフが高魔力なら、先に狙えば良かったんじゃ…?」
そこへ向かう間、僕は疑問に思っていた事をウィルに話す。
(単純にデンゼルの魔法学校の生徒の魔力の方が強いからさ。この時間差ということは、君達の言う回収の方法にも、かなりの魔力と時間が必要のようだね)
「…すぐには発動できないって事?」
(一体作り出すならまだしも、数十体作り出すにはね)
なるほど…。
だから、効率の為に高魔力の者を狙って放たれるのか…。
また次に魔力を狙うとしても、まだ数日は猶予があるということになる。
ここで魔力が満ちて悪魔へと昇格しない限りは。
ダッシュ~ダッシュ~ダシュ♪ キル&ダッシュ♪




