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神殺しの剣―キリヤード―  作者: からあげ丸・イッシ
第三章~天然都市・ファンノン~
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返還

第67回!


ズシンと、足音が聞こえた。

目の前にはトロールの巨体が広がっている。


僕がショックを受けている間に、近づかれていたようだ。


僕に勝ち目はない。


不意に笑いが込み上げてきた。

それは、情けなさから来るものだ。


自分の力じゃないくせに、カッコつけて戦いに来て、このザマなのだ。

カッコ悪すぎて、情けなくて、笑みがこぼれてくる。


(逃げないのかい?)


ウィルが僕に話しかけてくる。


逃げる?

その発想が抜け落ちていた。


トロールが握りこぶしを振り上げている。


あの手が振り下ろされたら僕はつぶされる。

今から動いても手遅れだ。

ウィルの魔力も切れている。


いや、トロールの渾身の一撃ではウィルの魔力があっても無事ではすまないかもしれない。


ドンッという音と衝撃が僕を襲った。


だが、それはトロールが放つ上からの攻撃ではなく、斜め後ろからのものだった。


僕はトロールの横に倒れこむ。

その後、トロールの攻撃が先ほどまでいた僕の場所を直撃していた。


僕は僕にぶつかってきた何かと共にその場を少し転がった。


後ろからの衝撃と、転がった痛みをこらえ、僕はぶつかってきた正体を確認した。


僕にぶつかってきたものは…。


「クラサ…?」


そう、あの少女だった。


「ここは邪魔になります。逃げますよ」


即座に、クラサが僕の腕を引っ張りそこから離れようとする。

僕はそれに従うように、ヨロヨロとその場を離れた。


「ぐあぁあ!」


不意に僕たちの後ろから、トロールの悲鳴が聞こえてきた。


僕はその声につられトロールの方向に視線を移した。

戦っていたのは、ヒリナだった。


ザシュザシュとトロールの肉を裂き、トロールの遅い攻撃など当たる気がしなかった。

長いポニーテールを揺らし、まるで洗練されたダンスのようにトロールの周りを離れず斬撃を与えていく。

攻撃すれば、腕の肉が削がれ、攻撃しなければ、足の肉が削がれる。


耐えかねたトロールは後ろに退いた。


そこに、ウィーネの水弾と思わしきものが飛び込む。

水弾は、大きいトロールの体に次々と着弾していく。

流石の耐久力。

地面に穴を開ける程の水弾もトロールの身体には穴を開ける事は適わなかった。


だが、トロールの心を怯ませるには十分な威力だった。


トロールは、本能的に絶対に勝てないと悟ったのだろう。

その場から去っていった。


そんなトロールを、ヒリナもウィーネも追う事もせず、ただ見送った。


この二人が来たら一瞬で物事が解決してしまった。

僕はいつの間にか立ち止まり、呆然とそれを傍観していた。


「大丈夫ですか?」


そんな僕にクラサが話しかけてきた。


「あ…うん、ありがとう…助かった…」


まずは、お礼を言う。


「…はい」


何から話せば良いんだろう。


いや、まず…しなくてはいけない事があるだろう。



―…君は、キリヤードの本当の持ち主じゃないからね―



僕は手に持っていたキリヤードをクラサへと差し出した。


「え…?」


「キリヤードはクラサに返すよ」


「何故…ですか…?」


不思議そうに僕を見上げるクラサ。


「これは、僕が持っているものじゃないから…」


「?」


疑問符を浮かべるクラサに。


「本当の持ち主はクラサだよ。僕じゃ扱えない品物だった」


そうはっきりと言葉にした。

当たり前の事だ。

これはクラサのもので、クラサの厚意に甘え僕はこの剣を手にしていたに過ぎない。


ヒリナとウィーナが近寄ってくる足音が聞こえる。


「いえ…それはユウタが持っているべきものだと思います」


「え…?」


「だって、それがないと言葉分かりませんよね?」


クラサが少し困った風に、意地悪な言葉を繋げた。


「うっ…」


確かにそうだ。

これが無ければ、一文字だって理解できない。


「それに…」


そして、クラサは僕の目をしっかりと見つめて。



「それがあなたの戦う理由だからです」



そう口にした。


「戦う理由…」


「はい…」


そうだ。

そうだった…。


ホントに馬鹿だ…。

勘違いの上に勘違いを重ねていた。


僕はこれを手放してはいけないんだ…。


ポロポロと感情と同じように、涙がこぼれてくる。


悔しさから来るものか、情けなさからくるものか、嬉しさなのか理解できない。


「ユウタ?」


僕はただ…答えをくれた少女の前で涙を流すだけだった。


返還させないスタイル!

豆腐メンタルが崩れながらも前に進むスタイルが好きです!

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