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第61回!
最上級魔法使いの残りカス。
男はそう言った。
どういうことだろうか…?
その言葉を素直に受け取るとしたら「最上級魔法使い」「残りカス」この二つから考えられるに、あの女性…魔族に魔力を吸われた最上級魔法使い二人のうちの一人だろう。
魔法都市デンゼルの長である可能性は薄そうだ。
クラサの幼馴染、イトキはその人を「婆さん」と呼んでいた。
ニューハーフなどの変化球がない限り、デンゼルの長は女性だと言うことになる。
だとすると、もう一人。
一番最初に魔力を吸われたと報告されていた最上級魔法使いの方だろう。
だが、どうみても、男の年齢は思っていたよりも全然若いように見える…。
力を手に入れたものは、次に若さを手に入れると言うのはよくある話だとは思うけれども。
魔法の力を使えば容易い事なのだろうか。
「信じられないかい?」
僕の意思を読み取ったかのように、男は口を開いた。
「そうね…証拠とかある?」
それに答えたのはヒリナだった。
「…そうだね。はっきり言って、この体に魔力は残っていない。本当に残りカスのようなものだからね」
男は困ったように笑った。
「魔族にやられたって聞いてるけど?」
「…もう、いろんな所に出回っているようだね。その通りだよ」
男は事実を肯定する。
「その最上級魔法使いの残りカスさんは、どうしてこんなところに居るの?まさかここでやられたわけじゃないでしょ?」
ヒリナはズバズバと質問を続けた。
「質問攻めだね…まぁ良いけどね。やられたのは別の場所だよ。ここには身を隠していたんだ。私にはやる事がまだ残っていたからね」
「やる事…?」
「あぁ、これさ」
男が握りこぶしを前に差し出し、手を開いて見せた。
男の手に乗っていたのは、一粒の赤いの宝石だった。
「…!これって…」
驚いたのは、クラサだった。
「クラサ…?」
僕はそんなクラサに声をかけた。
「…あ、これが本来のキリヤードの力を引き出す宝石です」
「じゃあ、これがあればキリヤードで戦えるって事?」
「はい…そのはずです」
魔族にも対抗出来うる力にもなるかもしれない。
それ以前に、役に立たなかった僕でも少しは戦闘で役に立つかもしれない。
「…そう、なのだけどもね…。この宝石の魔力も魔族に吸われてしまってね」
「……」
一瞬、僕たち全員、この最上級魔法使いにがっかりしてしまった。
「使えないわね…」
ヒリナは我慢できなかったようだった。
最上級魔法使いの精神を突き刺す一撃を放った。
仮にも3人しかいなかった最上級魔法使いにかける言葉ではない。
その言葉には尊敬も何もなかった。
「待ってくれ、こんな事もあろうかと、私はある何箇所の場所に自分の魔力を移しておいたのさ」
「どういうこと?」
「保険だよ。今この宝石には力はないが、集めることによって以前の私と同等の力を集めることが出来る」
流石、最上級魔法使いである。
抜け目はないようだ。
「力を蓄えているところに、君達が現れたということさ。本来入ってくるはずが出来ないこの場所にね」
「本来入ってくるはずがない?」
「あぁ…この場所は外部と遮断されているからね。魔力すら外に漏らすことはないんだけど…キリヤードがこの場所に導いたんだろうね」
男はキリヤードを指差しながら考察を述べた。
「それと同時にこれは好機かも知れないね…」
「どういう意味ですか?」
「君達と行動を共にした方が力を集めるのも今よりは楽かもしれないということだよ」
それはつまり…。
「同行させて貰うよ。君達に」
残りカスさんが仲間になった…!




