熱気
第57回!
僕はそれを見た瞬時に理解した。
精霊族だ。
ウィーネはただただ戸惑っている。
すると、その精霊族と思われる少年は、乱暴にウィーネの腕を取り引っ張った。
「…っ!」
いきなり腕を引っ張られ痛かったのだろう。
ウィーネは顔をしかめた。
「ちょっと!」
僕はそれを制止する為に動いた。
だが、少年の体に触れる瞬間。
指先に熱気を感じ。
「熱っ…!」
僕は瞬時に手を引き戻した。
その熱気は、もう少しで指が火傷する程のものだった。
腕を掴まれているウィーネは大丈夫なのだろうか。
肩を押さえてはいるが、それ以上に痛がっている様子は無い。
あの熱気を放っているのは体だけなのだろうか。
「なんだ、オマエは」
僕に向き直り、少年はそう質問した。
「僕は…」
あまり考えた事のない質問に僕は少し戸惑う。
僕はウィーネのなんだ?
ウィーネが僕を見る。
その目は何かに脅えたような目だった。
僕はそんなウィーネを守りたい。
きっと、戦闘では守れないだろうけど…せめて心だけでも。
「僕は、ウィーネの保護者だ」
間違ってはいないはず。
「こいつが精霊族って知ってる?」
次に、少年は僕に確認するかのように質問を続けた。
「うん…」
「神が人間族と精霊族の関係を切った事は?」
「知ってる」
そこで少年は、目を空中に彷徨わせた。
そして。
「……馬鹿なの?」
と呆れた顔で言ってきた。
「……」
いや…まぁ…?
自覚はしてるよ…?
「そうだね…」
目を反らしながら、そう僕は答えた。
そこで彼は一息つけ。
「じゃあさ、邪魔しないでくれる?」
と、ギロリと僕を睨み付けた。
その言葉を皮切りに、彼の周りには先ほどの熱気が発生した。
さっきと少し違うのは、色がはっきり見えるという点。
それは、赤く…オーラのようにも見えた。
「これは、種族の問題だから」
目を見開き、完全に怒っているような表情だ。
先ほどの熱気、あれに触れそうになった瞬間でも僕の肌は熱で火傷寸前になっていた。
だが、彼が熱気と呼べるオーラを発生させても、今の僕はなんともない。
その理由は一瞬で分かった。
ウィーネが彼に対し、青い水のようなオーラで僕を守ってくれていたのだ。
「…ぃ」
何かをつぶやくウィーネ。
それよりも、僕はウィーネの表情を見て驚きを隠せなかった。
「は…?」
「ユウタを傷つけたら許さない」
明らかに怒っている。
ウィーネのこんな表情は初めてだった。
二人はその状態でしばらく睨み合い続ける。
すると…。
先にオーラを解いたのは少年の方だった。
「オマエと喧嘩する気はない」
そう言いながら、少年はウィーネを掴んでいた手を離した。
僕がそんな事を考えていると。
「迎えに来たんだよ」
少年はそうつぶやいた。
「え…?」
僕とウィーネはその言葉に驚いてしまう。
「えっと、精霊族の仲間がいるところに…って事?」
「そうだよ」
「何で…?今更…?」
少しイラッとしてしまう。
もっと早く迎えに来てあげれば、ウィーネはあんな苦しい思いをしなかったはずだ。
精霊族の力は分からないが、もしかしたら最上級魔法使いの魔力を打ち破る方法もあったかもしれない。
たとえ無かったとしても、仲間が居ると言うだけで、気持ちのありようも全然違っただろう。
「何でって…最近になって、死んだと思っていたコイツが生きている事が分かったんだよ」
遅すぎないか…?
何年もたっていきなり…。
あ…。
僕は思い当たる節がある。
「契約書か…」
最上級魔法使いの魔力が、ウィーネの気配すら打ち消していたのだとしたら、精霊族がウィーネを探し出せなかった理由も分かる。
「契約書…?」
その言葉にピクリと、少年が反応する。
「うん、この子は、人間族の契約書で縛られてたんだ」
言ってから僕は『しまった』と思ってしまった。
こんな事を言ったら…。
僕は少年を見るが遅かった。
それを聞いた少年の目は怒りの炎が灯ったようだった。
「本当か?」
と、少年はウィーネに確認を取る。
ウィーネもその気配を感じ取ったのだろう。
けして頷こうとしなかった。
それを少年は肯定と受け取ったのだろう。
「報告する」
「待っ…!」
僕が言葉を放つ前に、少年はその言葉を残し。
熱気と共にその場から姿を消した。
残された熱気が薄れていくなか、僕とウィーネはただ呆然と立ち尽くしていた。
突然ですが、12月18日までお休みします~!
追記:23日まで…お休みします(震え声)




