早朝
第56回!
「…ん」
あのまま眠ってしまったのだろう。
目が覚めた頃には朝になっていた。
と、言ってもまだ日も昇りきっていない、少し薄暗い時間帯だ。
なんだか、最近はこういう時間に起きる事が多い気がする。
そういえば、昨日の夕ご飯を食べ損ねてしまった。
結構この世界の料理も悪くないと思っているので、少し残念だったりする。
でも、食事は宿泊と料金が別なので、節約という意味では良かったのかも知れない。
とりあえず、僕は体を起こし、ベットから出た。
しばらくボーっとしていたが、やる事がない事に気がついた。
スマホの電源が入れば、ネットに繋いで時間を潰せるのだろうけど…。
一応、スマホは今も持ち歩いてはいる、ズボンのポケットに常に入れている状態である。
別に邪魔にもならないから入れているけど。
お高いものだし…。
などと考えていると、机の上に軽い食事が置かれているのに気がついた。
クラサが気を利かせて、昨日の夕飯で冷めても大丈夫なものを購入してくれたみたいだ。
いつもこうやって気を使ってもらっている気がする。
とてもありがたい。
朝御飯までまだ時間もあるし、食べてしまおう。
「ありがとうございます。頂きます」
僕は少女達が寝ている部屋の方向に手を合わせ、一礼すると、その食事をありがたく味わった。
食事を済ませると、これまたやる事もないので、キリヤードを装着し外へと向かう。
外に出ると、僕は背を伸ばし、一気に空気を肺に流し込んだ。
部屋の中の空気も変わらないだろうが、なんとなく外に出た時はこういう事をしてしまう。
そこで、僕は少しデジャブを覚えた。
確か…この時間帯だったかもしれない。
クラサを起こさないように雫と宿屋の外に出て、ウィーネを見つけて、一緒に森の中にある湖に行ったのは。
そんな事を思い出していると。
「…あ」
あの時と同じようにウィーネを発見した。
まだウィーネがあの男から開放されて、数日しかたっていない。
まだまだあの頃の生活習慣は直らないようだ。
でも、なんだかあの頃のような感じとは少し違ってみえた。
あの頃は、トボトボとなんだか無機質な歩みだったが。
今は楽しそうな歩調なのだ。
僕はウィーネに話しかける事にした。
「おはよう」
最初はビクッとなったウィーネだったが、僕に気がついて挨拶を返してくれた。
「…おはよう」
これもあの時の名残なのだろう。
あの村では、『契約』を恐れるあまり誰もウィーネに声をかける事をしなかった。
だから、あまり人と触れ合うのには未だになれないのかもしれない。
「散歩してたの?」
僕はあの時のように世間話をする事にした。
「…うん、最近の日課なの」
「へぇ~…僕も一緒していいかな?」
邪魔だったり嫌そうだったら、その時は引き下がろう
そう思っていたが。
「…うん!」
意外にもウィーネは笑顔で頷いてくれた。
二人して、朝の道を歩く。
特にあれこれ話す事もなく、ウィーネの隣で、ウィーネの歩調に合わせて歩く。
それがちょっと楽しかったりする。
自然の中を歩くウィーネはなんだか、神秘的な雰囲気をまとっている。
精霊族って、こういう感じの種族なのだろうか。
ウィーネの動きに合わせて、空気が踊っているような。
その神秘的な雰囲気に、ウィーネには自然が合っている気がした。
今回向かう部族の人達がいい人達なら、本当に任せた方が良いのかもしれない。
そう考えると、なんだか今の時間がとても大切なものに思えた。
そうやってこの時間を楽しんでいると、前方から身長の低めの人影が近づいてくるのに気がついた。
身長はウィーネと同じくらいだ。
子供…?
こんな朝早くに…?
この世界の子供は早起きが多いのかと疑ってしまう。
顔はフードを被っていて分からない。
しかし、その子供は少し変わった雰囲気をまとっていた。
なんだか…ウィーネに似たような。
でも、ウィーネのような柔らかい水といった感じではなく…。
火のような…。
燃え盛る炎をまとったような雰囲気だった。
その子が僕達の前へと辿り着き、立ち止まる。
戸惑う僕達を前に、その子はフードを剥ぎ取り隠していた顔を現した。
「やっと見つけた」
そう言ったその子の頭には角のようなものがついていた。
またしても、新キャラ登場!




