感謝
第55回!
僕達は、天然都市ファンノンへと向かう。
魔法都市とは位置が異なり、僕達が来た森からは、首都グランモールを軸にしてL字に曲がる形の進行となる。
そこで僕たちはグランモールからの手紙を渡し、天然都市ファンノンの長の協力を仰ぐ算段だ。
天然都市。
この名前からは、どんな都市かは想像もつかない。
やっぱり、名前から察するに自然がいっぱいの都市なのだろうか…。
「……」
…それは…都市と呼べるのだろうか。
つい自分の思考にそんな突っ込みをしてしまう。
そんな複雑な思考を持ちながら、僕たちは街道をてくてくと歩いていく。
首都を出た頃は、出店が並んで賑わっていたが、数十分も歩くころにはその姿はなくなっていた。
こちら側は森が深いようで少し薄気味悪い。
たまにすれ違う商人は、傭兵のような人数人雇っているのが目に見えた。
「この道は、結構モンスターが出るの」
僕がそういう人を気にしていたのが分かったのか、ヒリナが声をかけてきた。
「あ、そうなんだ…?もしかして結構強いの?」
「ん~…そうね…私からしたら雑魚だけど…」
相当腕に自身があるのだろう。
雑魚という言葉が飛び出してきた。
さすが、首都の師団長様である。
「一般人からしたら強いかも知れないわね」
すみません。一般人で。
「……あ」
なるほど…。
僕はそこである事に気がついてしまった。
「ここを通るから、ヒリナはついてきてくれたって事?」
僕の推測に。
「…ま、まぁ…?息抜きもしたかったし?」
空いている手で髪をいじりながら、少し照れたように答えた。
「はは、ありがとう」
僕はその気遣いに嬉しくなり、ちゃんとお礼を述べておく。
「どうしたんですか?」
すると、クラサとウィーネが僕たちの会話に入ってくる。
「あぁ、ヒリナがついてきてくれたのは、この道が危ないって知ってたからなんだよ」
僕がヒリナが付いてきた理由を二人に説明すると、二人も納得したようで、それぞれにお礼を述べた。
すると、照れの頂点に達したヒリナは顔を真っ赤にして。
「いいから!もういいから!!」
と、手をぶんぶんと振っていた。
その感じがヒリナという人となりを十分に表していた。
そんな出来事もありながら、僕達は先へと進んでいく。
夜に近づき、周りが暗くなる頃、僕達は中間地点とも言える村へとたどり着いた。
モンスターに一度も鉢合わせする事無く。
「私必要なかったかなぁ…」
そんな風にちょっと落ち込むヒリナ。
皆にお礼を言われてやる気を出していた分、余計に脱力を感じているのだろう。
「そんな事無いです!ヒリナちゃんが要るだけで、安心して歩けました!」
そんなヒリナを必死にフォローするクラサ。
それに必死に頷くウィーネ。
なんだか平和な世界だなと思いました。
村に辿り着いた僕達は、宿へ向かい部屋を取る。
今回は二部屋。
グランモールで支度金も頂いたので余裕で二部屋取れた。
クラサ・ウィーネ・ヒリナで一部屋。
僕で、一部屋。これで二部屋だ。
これまで一緒の部屋だっただけに、ちょっと寂しい気持ちはあるにはあるけど…。
今までがちょっとおかしかっただけなのだ。
部屋に入り、久しぶりに一人になれた時間を利用し、僕はこれからの事を考え始めた。
まず、雫の事だ。
小物置き台に置いた剣をとり眺める。
「…雫?」
呼びかけるがやはり反応が無い。
ため息をつき、僕は剣を小物置き台の上に戻した。
ファンノンへ行き、長に協力を仰ぎ、精霊と強い結びつきのある部族を介して精霊達の協力を得る。
その時、精霊に時間の巻き戻し方を聞く、もしくは時を司る精霊の居場所を聞く事だ。
僕としては、前者・後者、両方大事な事ではあるが、特に後者の方に重点を置かなければならない。
本当にうまくいくのだろうか?
とても現実的な話ではない。
…が、今はこれに縋るしかない。
自分を強く持とうとすればするほど、つかみ所のない焦燥感は消えなかった。
重苦しい雰囲気にため息が止まらなかった。
…すると、隣からは笑い声が聞こえてきた。
あの三人の部屋からだろう。
その声を聞き、僕は優しい気分になっている事に気付いた。
もし、一人でいたのなら、ずっとこんな感じでずっと悩んでいたかも知れない。
僕はこれまでの旅が、一人ではなかった事に感謝した。
落ちた肉まんにぃ感謝ぁ~☆




