覚悟
第42回!
クラサは少女の言葉に対し。
「いいえ」
とはっきり答えた。
一瞬でピリッとした緊張感が、僕たちの辺りの空気を包み込む。
「これが、最終警告なんだけど?」
「はい、わかっています。…ただ。お願いがあります」
「…お願い?」
「…はい」
ジッっと、お互いの心の内を探り合っているのか、二人は見つめ合う。
「……とりあえず、話してみて。それを叶えるかは聞いてから考えるから」
「ありがとうございます。あの…ですね」
「うん?」
「キリヤードを手に入れたいと言う、あなた方の権力者に会わせてください」
結構驚くべき事を言ったのはずだが、目の前の少女は落ち着いる。
「何故?」
一言、そう告げた。
その視線・声の性質は今までと違い、とても冷たいものだった。
これが本来の、主君を守る騎士としての彼女の姿だろうか。
「……その方の真意を確かめます」
そんな彼女にクラサも少しとまどったものの、目を反らす事無く言葉を交わす。
「……論外です」
少女は目を瞑り、クラサのお願いを切って捨てた。
「え…?」
「貴方が持っている、キリヤードはどんな力を持っているか分からない状態です。我が主君に近付けると思いますか?」
言葉遣いすらも変わっていた。
さっきまでの彼女は、あくまでも友達として『お願い』に来ていたのだろう。
「……」
「それに、会っても変わりません。我が主君はこの首都を守るために動いている。どんな事を言われても意見を変える事はないかと思われます」
少女は、冷静に、冷酷に、淡々と、事実を言い放つ。
「私のせいで……」
「?」
膝の上にある右手で左手を握り締め、クラサは自分の罪を吐露した。
「……私のせいでね……。私の安易な憶測のせいで、この人の大切な人が消えてしまったの……」
途切れ途切れ。
それは、自分の頭の中に浮かぶ言葉を口にしたようだった。
今までのクラサとは違い、幼い印象を感じる。
これが、本当のクラサなのだろうか。
「私は、自分の使命も大事だけど……あの剣はユウタの希望でもあるから……渡したくない」
昨日、クラサが少女の申し出を最初に断ったとき。
僕の事を一瞬、見た。
きっと……この事を気にしていたのだろう。
「話が見えません」
あくまで冷静に、少女はクラサへと言葉を放つ。
そんな少女へ、クラサは僕達が出会い、旅をしてきた経緯を話した。
「―――そうですか」
少女はまず、そうつぶやいた。
「あたかも信じられない話ですが…私はクラサを信じています」
「ヒリナちゃん…」
これが本来、クラサが少女を呼んでいた呼び方なんだろう。
「どうしたら良いかなぁ~…」
ここで、少女の口調が前に戻った。
「クラサのお願いは聞いてあげたいけど…。あーもぉ…」
少女は、頭を手でかきながら考えを捻り出そうとしている。
そんな姿に僕は笑ってしまった。
「…何?」
そんな僕を、少女はジロリと睨む。
「いや…ごめん、良い人だなって思って」
「別に…?友達の事なんだから当たり前でしょ?」
「あはっ」
「…笑わないっ…!」
ムスッっとしながらソッポを向く少女。
「君はさ、クラサが君の君主に刃を向けると思う?」
「……思わないけど」
「なら、会うくらい良いと思うけど…?」
「考えを変えるとは思えない」
「それはどうだろう…?新しい話し合いって、新しい意見を生む場だと僕は思うよ?一緒に考えれば、きっと新しい可能性に気付くと思う」
きっと、騎士団員、部下では、君主にものを申せる立場ではないだろう。
だが、僕たちは違う所から来た人間だ。
なら、そこから生まれる意見もあるだろう。
「……」
少し考える少女。
「確かに今の意見は、この都市の凝り固まった意見なのかもしれない。……でも、主君の前に出るということは、一つ間違えば命の保障は出来ないけど、それでもいいの?」
少女は僕たちに確認を取ってくる。
僕は、クラサとウィーネを順に見る。
二人とも覚悟は決まっているようだ。
「うん、腹は決まってるよ」
「そう…分かった」
諦めたように、そうつぶやく少女。
「ヒリナちゃん…!」
「えへへ、その呼び方懐かしい」
クラサに向かい、人懐っこい笑顔を見せる少女。
「…うん」
それに対し、クラサは少し照れている。
少女は、改めて僕たちを見回す。
そして…。
「案内します。主君の下へ」
僕たちと君主への面会を約束してくれた。
さて…どうなることやら…




