争奪
第37回!
「え…?」
クラサは驚いたように目を見開いている。
神殺しの剣を受け取りに来た。
彼はそう言った。
「どういう事ですか?」
クラサは少し警戒しながらそう質問した。
クラサは当初、『ある場所』に剣を持っていく事が目的だと言っていた。
魔法都市がその、『ある場所』なのだろうか…?
しかし、同時にロッカさんの腕の話をしていた時には、最上級魔法使いは、簡単に会える人じゃないと言っていた。
つまり、僕たちのために魔法都市に行くだけで、当初の予定では、最上級魔法使いには会う気はなかったのではないだろうか。
「…今、色んな権力の人間が、その剣を欲している」
「え…?」
その言葉は、クラサを驚愕させるのには十分だった。
「何の為に…?」
「その剣の特異性。お前なら分かるだろう?」
「……」
「俺は、お前と顔見知りだからな、それで使いに出された」
「……」
クラサは唇をかみ締め、下を向いている。
「渡して貰おうか」
その答えに…。
「断る!」
僕が答えていた。
彼とクラサが僕へと驚きの表情を見せる。
この世界にとって僕は部外者だ。
しかし、この剣は譲ることは出来ない。
まだ雫はこの中に居るかもしれない。
もしくは、時間を戻すにしても、この剣がなくては話にならない。
「…クラサも、同じ意見か?」
「…はい、剣の番人として、譲るわけにはいきません」
「そうか…残念だな」
そうつぶやいた瞬間。
ドンッという衝撃がこちらまで伝わってくる。
彼が戦闘モードに入った証拠なのだろう。
ビリビリと空気の違いを感じる。
RPGでよくある、レベルの差。
それを肌で感じる事が出来た。
彼と僕たちとではレベルが違いすぎるのだ。
彼にとって、最初に出会った大柄の狼など敵ではないだろう。
男たちを手玉に取っていた。あの剣士すらも一瞬でやられてしまうのでないだろうか…。
なら、僕たちでは…勝ち目なんて…。
彼が一歩前へ踏み出す。
その時だった。
バチンッ!という音がこの裏路地に木霊したのだ。
上空から振ってきた何かが、彼の纏っているモノへと衝撃を与えたようだった。
だが、彼の周りにある空気は、ウィーネの水弾を弾いたように、天空から現れた何かの襲撃を弾き返した。
「よっと」
一回転し、その何かは地面へと着地する。
「……」
彼は上空から襲撃してきたそれを一瞥する。
当初は、一瞬の事で良く見えなかったが、それは立派な騎士の衣装を身に纏っていた。
「うちの兵がお世話になったようで…」
その声はか細い、少女の声だった。
その衣装、言動から騎士団の人間のようだ。
「ヒリナ…?」
クラサがその少女に声をかける。
その言葉にそのヒリナと呼ばれた少女はクラサの方をみて。
「危ないから下がっててね」
と、笑顔で返答した。
次の瞬間、少女は剣を構え、彼へと切りかかった。
「無駄だ。剣戟ではこれは切り崩せない」
そう言い。彼は何かをつぶやき出した。
詠唱というやつだろうか。
「そうかしら?」
そう言いながら、少女は剣を横一線に振り払った。
バチッという音と共に剣と彼が纏っていたものが合わさり合い。
彼の纏っていたものを切り裂いた。
「なっ…!?」
油断していた彼に向かい。即時に少女は次の攻撃を仕掛ける。
結論から言うと、剣は彼へとは届かなかった。
少女は剣を寸止めしていたからだ。
「帰って、最上級魔法使い様に報告してくださいます?神殺しの剣は手に入らなかったって」
不適に笑う少女に対し、彼は…。
「…そうだな。ここは引いてやるよ」
手をあげ、人を馬鹿にしたような降参のポーズをとる。
そして、クラサに向かい。
「そいつも神殺しの剣を狙ってるぞ」
彼はそう言い捨てると、その場から去っていった。
騎士とは思えない!不意打ち!
そこに痺れるあこがれるぅ!




