焦燥
第31回!
「…はっ!」
僕は目を覚ました。
何日たったのだろう…?
僕はいつもの通り、状況を確認する為に、周りを見回した。
薄暗く、ランタンの火だけが僕達の姿を浮き立たせる地下の世界。
近くには、少女とクラサが倒れている。
少女の身体の上にはキリヤードが置かれている。
場所は変わっていなないようだった。
どういう事だ…?
キリヤードを使えば、僕は最低でも一日は眠っていたはずだ。
クラサの魔力がそこまで強力だったのか…?
もしや失敗したのでは…?
すぐさま、僕は少女の口元に耳を近づける。
…大丈夫だ。
息をしている。
なら、一体何が起こってるんだ…?
色々頭の中で考察してみたものの、僕に分かるわけがなかった。
きっとこの自体を把握しているのは、雫だけだろう。
僕は、雫に話しかけることにした。
「雫…?」
少女の上に置かれていた、キリヤードに触れる。
…?
反応がない。
「雫…?」
もう一度、僕は雫の名前を呼んだ。
しかし…依然として反応がなかった。
どういう…事…?
僕は焦ってしまった。
「返事して!!」
僕の大声が、地下の部屋に響く
僕の声で目が覚めたのか、クラサがむくりと起き上がった。
「私達は…」
僕はクラサに向かい声をあげた。
「雫が、反応してくれない…!」
「え…?」
クラサが驚いた表情を見せる。
「…えっと…」
何か答えを出そうと、戸惑いながら、目を泳がせるクラサ。
そんな、クラサにイライラが溜まっていく。
しばらく考えたクラサは小さい声で答えた。
「…ごめんなさい、分かりません」
「分からないって、どういう事だよ!!」
そんな答えに、僕はつい自分の不安を怒りとして、クラサを怒鳴りつけてしまった。
「…っ!」
クラサはビクリと、身を固め、叱られた子供のような反応をする。
そんなクラサの反応を見て、僕は自分がした事を恥じた。
クラサにだって分かるわけがない…。
キリヤードを使った代償は全て憶測だ。
何が起こるか分からない。
そんなの…誰にも…。
それなのに、僕は頼ってしまった。
その不確かで、不完全な力に。
「…ごめん」
目を伏せ。
小さい声で僕はクラサに謝った。
ただ…。
僕が決めた事だから、僕に代償が伴うのは仕方ないと諦められる。
覚悟もあった。
まさか、今まで何の代償がなかった雫に代償が求められるだなんて…。
自分の決めた事で、好きな人が傷ついた。
その現実がとても、辛かった。
僕は、キリヤードを見つめていた。
嘘だろ…こんなの…。
ただ、無音のキリヤードがそこにあった。
これが現実なのだと…訴えかけるように。
その時、ガチャリと、奥のドアが開け放たれた。
そこから姿を現したのは、あの男だった。
様子を見に来たのだろう。
ドアから離れ、キョロキョロと見回し。
僕達に気がついた。
倒れている少女を目にし、目を丸くした男は。
「殺したのか…!?」
驚愕しながら声を放った。
「いや…それなら、何でお前も生きてるんだ?契約はどうなったんだよ…?は?何が起こったんだよ」
男は、わけが分からないといった様子でぶつくさと呟く。
「ごめん…クラサ…」
すくりと、僕は立ち上がった。
「え…?」
怒りが抑えられなかった。
僕は石畳を蹴り全速力で走り、男に近づいた。
「ひっ…!」
僕の行動に気付いた男は、ドアの方に逃れようとする。
もう遅い。
僕はすぐに追いつき、その男の服を掴み取る。
服を握られ、動きが止まる。
その男の頬を目掛け、思いっきり右拳を振り下ろした。
雫さんぇ…。




