本音
第30回!
それはとても悲しそうに見えた。
彼女に拒否権などはない。
従うしかないのだ。
自分の命を守る為にも…。
「……君はどうしたい?」
僕は、少女に質問した。
少女の意思を知りたい。
「…え?」
少女は、予想もしなかった質問に目を大きくした。
「どうして欲しい?」
続けて僕は強く質問する。
拒否権のない、そして決定権を持たない少女に向かい。
「…私には決める権利なんて…ない…」
苦しそうにそういうと、少女の腕が動きだした。
その手の照準が、僕へと向けられる。
ゆらりと、少女の右上にある水弾に反応が見られた。
僕は、あの時、泣きながら僕の怒りを止めてくれた、少女の優しさに賭けようと思う。
だから、真っ直ぐに少女を見つめた。
一向に照射されない水弾。
「…何で…?動かないの…?」
僕の行動に戸惑う少女の声。
僕はそんな少女に向かい。
「どうして、欲しい?」
もう一度、同じ質問をした。
今度はやさしく、少女の事を想って。
その言葉に、少女は涙を一粒零し…。
「……助けて」
涙と同じように、その一言だけを零した。
答えなんて決まっている。
「うん、僕が君を助ける」
途端、少女の目からはポロポロと涙が流れ落ちる。
浮いていた水弾も、少女の涙のように石造りの床へと零れ落ちた。
僕の言葉を聞き、少女は泣き崩れた。
「うぅ…っ」
そんな本音を漏らした少女の頭を撫でてあげたくて、僕は少女に近づこうとした。
その時だった。
途端に少女が苦しみだした。
「ぐっ…いっ…あぁぁあ…」
それに気付いたクラサが少女に向けて駆け出した。
僕もその異変に気付き、少女へと駆け寄る。
「キリヤードを!!!」
クラサの大きな声が部屋中に響き渡る。
その声に反応するように、僕はすぐさま、キリヤードを取り出した。
「私の言った事、覚えていますか?」
この家に来る前、宿屋から出た道で。
クラサはある可能性を話してくれた―――。
「少女も、ユウタも両方助かる可能性が一つだけあります」
「…え?」
「これも、憶測です。なので、完全に賭けとなってしまう事なのですが…」
歩を止めず、クラサは話してくれた。
「キリヤードは、ユウタだけではなく、私やその他の人の魔力も使えるかも知れないと言う事です」
「そうなの?」
「はい…。当初は、ユウタとシズクの関係が特別なものだからと思っていました。ですが、キリヤードの能力を考えるとシズクの気持ち次第で、他の人の魔力も運用出来るかも知れません」
(私の気持ち次第…)
シズクが不安そうにつぶやく。
そりゃそうだ。
自分次第で、他人の生死が決まるのだ。
「僕は、後悔しない」
そう告げる。
シズクの不安を取り除く為に。
(怖い…)
だが、そう簡単にぬぐいきれるものでもないらしい。
すると、クラサが僕の腰についているキリヤードに触れ。
「私も、後悔しません」
そう言葉をかけた。
(クラサちゃん…)
そうして、クラサはしばらく触れていた。
そんな二人に。
「本当に、分の悪い賭けだよね」
場を和ませるために、僕は軽い口を叩いた。
「はい…。ですが、これしかないかと…割に合いませんが…」
ジロリと僕を見つめるクラサ。
(あはは)
そんな僕達の冗談にシズクは笑みをこぼしてくれた。
そんなシズクの声に僕も笑みを零してしまう。
「私もシズクと話してみたいです」
羨ましそうに、クラサはそんな事を呟いた―――。
「キリヤードをこの子に、かざしてください!」
「うん!」
僕はキリヤードを刃と柄を両手の手のひらと親指の腹で持ち、少女へとかざした。
クラサはその僕の両手の間に手を差し入れ、キリヤードへと触れる。
「…準備は良いですか?」
クラサは僕へと顔を向ける。
「絶対助ける…!」
「はいっ…!」(うんっ…!)
「シズク!お願いしますっ!!」
クラサは、シズクへと呼びかける。
(うんっ!!)
その瞬間。
キリヤードから発せられた凄まじい光が、僕達を包み込んだ。
あれ…ハーレム系じゃないはずなのに、女性比率多い気がしてきた…(今更)




