案内
第29回!
僕達はもう一日宿屋の予約を済ませると、一旦宿屋を後にした。
数分後、前回下調べした大きな家へとたどり着く。
ここから先は、もう引き下がれない。
僕は、手を強く握りしめ、深呼吸をした。
「よし」
気合を入れて、僕は入り口へと足を踏み入れた。
玄関へと続く扉の前に近づくと、クラサが呼び鈴と思われるロープのようなものを引っ張った。
カランコロンと家の中から音がする。
しばらくすると、扉が開き、出てきたのはあの少女だった。
先ほどのほつれた服ではなく、黒で統一された綺麗な服装だった。
「…はい」
出てきた少女は僕に気付くと、ピクリと体を動かせる。
当然だろう。
殴られた元凶である僕が目の前に現れたのだ。
少女の頬には、少し青じみた痣が出来ていた。
あの時叩かれたものなのか、それともその後叩かれたものなのか。
「…っ」
冷静を保ち、僕が口を開こうとすると…。
「…お待ちしておりました」
と少女が先に口を開いた。
「…え?」
まさか、待たれているとは思わなくて呆気にとられてしまう。
「こちらです」
スッと、家の中に案内される。
僕はクラサの方をチラリと確認する。
クラサも、僕の方をジッっと見つめていた。
僕はクラサに向かい頷ずくと、足を踏み込んだ。
罠かも知れない。
少女の契約を解くなら、その場でも構わない。
あの男と、この少女。あの二人にかけられた魔法を解けばいいのだ。
と…その前に。
僕は少女に呼びかける。
「これ…忘れ物」
僕が差し出したのは、水桶だった。
「…」
それを受け取る少女。
なんとなく、返してみた。
そこに意味などない。
放置しても良いものだったけど。
「…ありがとうございます」
そういうと、少女はその水桶を入り口の隅に置き、再び僕達を先導し、歩を進めた。
とことこと歩く少女。
しばらく歩くと、地下へと降りる階段へと誘導される。
僕達も後を付いていく。
薄暗く、火が点ったランタンが並んだ階段を一歩一歩下っていく。
階段を降りると、今度は結構広い部屋へとたどり着いた。
小さめの宴会場と思われるぐらいの部屋。
天井までの長さは3メートルくらいだ。
そこも、いくつかのランタンによって怪しくその造形を照らしている
何本かの石柱が天井を支え、その部屋には何も置かれていなかった。
奥に目をやると、ポツンとドアが存在していた。
あそこから次の部屋へ向かうのだろう。
歩を進めると、少女が言葉を放った。
「お待ちください」
…?
その言葉に、僕達は少女を見る。
「…ごめんなさい。あなた達をこれ以上先へと通すわけには参りません」
「…え?」
ランタンを背にしているせいか、少女の表情は影となりはっきり見えない。
すると、少女は森で僕に見せたように目を瞑り、水の弾を練り上げた。
今度は、その場にある水を利用するのではなく、何処からともなく水弾を出現させた。
後は、あの手を僕達にかざせば、あの弾はすぐにでも僕達を襲ってくるはずだ。
「待って!」
僕は少女を制止した。
ピクリと止まる少女。
「どういう事か教えて欲しいんだけど」
いや…分かっている。
多分、命令されたのだろう。あの男に。
「ここで、始末しろと…」
少女は空虚な目と声でそう言い放った。
次回決戦!




