傷口
第24回!
―――数十分後。
ご飯を食べ終わった僕たちは部屋に居た。
お腹いっぱいすぎて気持ち悪くなり、僕はベットを占領させて頂いていた。
「食べすぎです」
くすくすと笑うクラサは、椅子に座っている。
その言葉を聞き僕は『少しがっつき過ぎたかも』と、恥かしさを覚える。
「胃薬も貰えたから…暫くすれば大丈夫だと思う…」
かなり苦い胃薬だったけど…。
「そうですか」
僕が薬を飲んでいた時の事を思い出してか、クラサはふふっと思い出し笑いをしながら答えた。
「それより…!」
僕はクラサの方に顔を向ける。
「…はい」
僕の表情をみて、クラサも真剣な話と察してくれたようだ。
「…色んな手を考えた結果。キリヤードの力に頼るしかなさそうなんだ」
「はい…わかっていました。それ以外に対抗する術はないかと、はっきり言って今のキリヤードでは勝算は低いですが…」
僕の意見に対し、クラサは目すぼめ、気まずそうに下を向いた。
「…多分、失敗すれば死ぬか、上手くいっても何十日かは目を覚まさない可能性がある」
そんなクラサに僕は予想を口にする。
「…はい」
「その時は…」
「嫌です」
僕が決断を言う前から、クラサは拒否した。
「…え?」
「置いていけ、と言うのでしょう?…言いましたよね?一緒に行くと」
少し声を荒げ、クラサは言葉を繋げる。
「これは私の決断でもあります。貴方達と進むと、私の決意を甘くみないでください」
珍しく、クラサは怒っていた。
「…ご、ごめん」
「あ…いえ、その…ごめんなさい」
怒った事への謝罪だろうか。
何についての謝罪かは分からなかったが、クラサは一緒に進むと言ってくれた。
「じゃあ、お願いしていいかな?その後の事は…」
「…・・・はい」
話は一段落ついた。
「あの…」
と思ったのだが、何故かクラサが言葉を繋げた。
「…?」
僕は再びクラサの声に耳を傾ける。
「…貴方は…」
一度言葉に詰り、もう一度最初から、クラサはその言葉を発音する。
「貴方は、死が怖くないのですか?」
いきなりだったので少しびっくりしてしまう。
だが、変に核心に触れられたような感覚だった。
「どういうこと?」
「…なんだか、軽い気がして…。自分の命だというのに…」
「……軽い…」
確かに、なんだかふわふわした感覚はある。
この世界に来た時、あの男に人が殺されたのを見た時、大柄な狼に襲われた時、ロッカさんが腕を切られた時。
確かに、恐怖はあった。
だけど、現実味がなくて、僕の居た世界とは違いすぎて。
何だかゲームの中のような、夢の中の出来事のような感覚だった。
もしかしたら、死ねば…元の世界に戻れるのかもという考えもある。
どう答えれば良いんだろう。
「…分からない」
僕はポツリと呟いた。
「…この世界は、僕が居た世界と違いすぎて、もしかしたら脳が混乱してるのかもしれない」
分からない、分からないからこそ、僕は本音を口にした。
「……」
すると、クラサは立ち上がり、僕が装着していたキリヤードを手にした。
(え…?)
雫がびっくりした声をあげる。
次に僕の手を取り…。
「ごめんなさい」と一言謝り。
刃で僕の左手の甲を横一筋に軽く切った。
「…っ!!」
ズキリと…痛みと共に、傷口から僕の血が流れだす。
そこから流れ落ちた鮮血がベットに一滴落ちシーツを赤く染めた。
「あ……」
僕から血が出ている…。
僕の血…。
「見てください。痛いですよね。貴方は生きています。この世界に生きているんです」
クラサは傷口を身ながら、はっきりと断言した。
僕は、目を閉じ左手の甲の痛みと血の流れを感じる。
「…うん。痛い」
そして、苦笑しながら、僕はクラサに笑いかけた。
それに対し、クラサも苦笑する。
「あ…すぐ手当てを…!」
と、言いながらキリヤードを僕の膝に置きクラサは僕から離れ、荷物の中から傷の手当用の道具を取り出す。
傷薬なのだろうか。
ビンのふちにつけ、液体状になったそれを布に付け。
まず、置かれていた水で血液をふき取ってから、傷薬のついた布を僕の傷口に押し当てる。
「っ…」
少し痛い。
「ごめんなさい。こうした方が分かりやすいと思って」
「…うん」
その傷はズキンズキン痛み、少し熱を持っている。
クラサがしてくれた、この心の薬は、確実に僕の心に響いていた。
最後に白い布を巻きつけて手当ては完了した。
「シーツ汚れちゃったね…」
「そうですね…少し汚れを落としてきます」
パタパタと、汚れたシーツを持ってクラサは部屋を出た。
(…雄太君?)
すると、雫が声をかけてきた。
「…まさか、切られるとは思わなかった」
素直な感想を言う。
(だね…でも、きっとこの世界じゃ、こういう事も普通なのかも)
…普通。
切られる事が普通。
「うん…」
僕は、ズキリズキリと脈だつ左手の甲を右手で覆い、その言葉を噛み締めた。
生きてるって何だろ生きてるってな~に?




