思案
第22回!
僕達は、先程の二人をつける事にした。
まずは、あの二人の確認からだ。
契約破りが怖いのか、それともあのおじさんが怖いのか、村人達はその男を避けて歩く。
それを自分の力と勘違いしているのか、その男はのしりのしりと闊歩している。
村の人はこの二人の事情を知っているのだろうか。
…いや、この契約書のルールを知っている者なら、すぐに察しられることなのだろう。
依然、少女は大きな荷物を揺らしながら歩いている。
すると…
少女は何かに気付いたように、こちらに振り向いた。
突然振り向くものだから、ふいに少女と僕たちは目が合ってしまう。
手を振った方が良いのだろうか…?
ごまかす振りをした方が…?
しかし、少女は僕達を見なかったかのように、またとぼとぼと前へと歩き出した。
僕達では、何も出来ないと悟っているのだろう。
前を闊歩する男にも報告する気はないようだ。
「……」
(諦めてる…感じだね)
「…うん」
雫の言葉に相槌を打ちながら先に進む。
後を付けると、結構大きな家に辿り着いた。
その中に二人は入っていく。
あそこが二人の暮らしている家なのだろう。
とりあえず、住処は特定した。
あとはどうやって契約を破棄させるかだ…。
目には目を歯には歯を…騙すという手は有効なのだろうか…。
色々と考えたものの、僕は順番にクラサに疑問を投げかけた。
まずは、契約書。
『それを破ろうとするものには、最上級の魔法使いの魔力をその身に受けることになる』
そうクラサは言っていた。
それなら、その契約を利用すれば、簡単にモンスターなども倒せたりするのではないだろうか…。
もしくは、それを使えば、殺人すらも…。
「クラサ、ちょっと良いかな?」
「どうかしましたか?」
「こんな時になんだけど…」
「…?」
僕はさっき考えた事を話してみる。
「なるほど…そういう使い方も出来る…と…。…いえ無理ですね」
「そうなの?」
「まず、紙に契約をしますが、魔法がかかるのはその二人の関係です。そして、それを破ろうとする意思に反応するはずです」
「善意や悪意関係なしに?」
「多分…そうですね。詳しくは私も分からないですけど…多分、そこまで複雑な事までは組み込まれていないかと」
あくまでも、契約を破ろうと行動した者のみに粛清が下ると…。
「…あのさ…」
僕は次の疑問を口にする。
「このキリヤードに、最上級の魔法使いの魔力に対抗する術はないの?」
剣をチラリとクラサに見せる。
神殺しの剣と言われているのだ、そのくらい出来そうなものだけど…。
「そうですね…。本当の力が使えれば、出来そうではではありますが…今の状態では…」
なるほど…。
後は…最上級の魔法使いに解いてもらうやり方。
またそこか…。
ロッカさんの時といい…。
「力か…」
すこし羨ましくなった。
そういう力があれば悩まずに済むだろう。
でも…。
きっと、違う問題に行き当たり、頭を悩ますことになるんだろうな…。
「なら、相手を騙そうとしても…?」
「ダメでしょうね…意思に反応してしまうので、契約を破るという意思を持っていると…」
バッサリと切られてしまう。
ぐぬぬ…。
この契約。単純なだけに、すり抜けにくい構造になっている気がする。
しばらく考えていると、空が暗くなり始めていた。
だが、良い考えが全然浮かばない。
「…とりあえず、今日は宿屋に行きませんか?」
と、クラサが提案してくる。
僕と違って、クラサも大荷物を持っている。
僕も長旅で疲れているが、クラサも相当疲れているのかもしれない。
あれ…これって僕もあのおじさんとあまり変わらない事してるんじゃ…。
だから、あの少女も僕達の姿を見ても助けを求めなかったのでは…?
そんな嫌な考えが頭をよぎる。
「宿屋に向かうだけだけど…お荷物…持たせて頂きます」
僕は罪悪感に苛まれながらそうつぶやいた。
クラサの顔を真正面から見れない。
「…いえ…大丈夫ですが…。…あ」
僕の意図に気付いてくれたようだ。
「ふふ、ありがとうございます。じゃあ宿屋まで」
くすくすと笑いながら背負っていた荷物を渡してくれた。
結構な重さだ。
その重さに、また少し罪悪感を膨らませながら、僕たちは宿屋に向かった。
宿屋につき、クラサが予約を入れている間も僕は考え続けた。
契約を契約でぶつけてみるか…?
いや、その時点で僕の意思は、相手の契約に見破られているだろう。
何か穴はないのだろうか…。
「取れました。部屋に行きましょう」
「…うん」
クラサの後に続き、階段を登り、部屋の前へと辿り着いた。
「ここです」
クラサはドアを開ける。
木のつくりの部屋。
大きなベットが一つ。
一人部屋にしては、大きな作りだと思う。
僕は荷物を降ろし、背伸びをした。
「ん~良い部屋だね」
「そうですね」
ふふっと、柔らかく笑うクラサ。
悩みは晴れないけど…。少し緩和された気がする。
「では、一階で食事の用意が出来てるようなので、夕食を頂きましょう」
「うん」
そう言いながら僕たちは部屋を出る。
そういえば…
「クラサの部屋は隣?」
後で作戦会議がしたいのでクラサの部屋の場所を聞いてみた。
「…いえ?ここですが?」
不思議そうな顔をし、クラサが指差したのは、今まさに僕達が出た部屋だった。
デスヨネー…




