剣戟
第2回です
さわさわという音が聞こえる。
木の葉の音。それは田舎で育った僕にとっては聞きなれた音だった。
落雷に…撃たれたんだよな?
僕は自分の身体を確認した。
見た感じ、なんともないようだ。
身体は動くし、焦げ跡一つついていない。
落雷に打たれたのなら、衣服や皮膚に焦げ跡や、痺れでもありそうなものだけど…。
ガチで落雷に撃たれた人を間近で見た事ないから、確信はもてない。
ただイメージがそんな感じなだけだ。
次に発声練習。
「あー…あー…」
ちゃんと声も出る。
本当に何も異常はない。
しかし…。
周りの景色は一変していた。
先程までいた田舎のバス停の姿はそこにはない。
「あ…」
僕は一番忘れてはいけない存在を思い出した。
「小野さん!」
大声を出しながら、周りを見回したが、その姿はなかった。
只々、僕が出した大声だけが、森林に響くだけだった。
どういうことだろう…。
そもそも、小野さんと雨の中バス停に居たのが夢で、僕はここで眠り込んでいただけだろうか。
落雷によって僕がここに吹き飛ばされただけ?
何個か今の状態から、状況を推理してみたが答えに繋がる事はなかった。
とにかく情報が必要だ。
情報…。
僕はズボンのポケットに入れていたスマホを手に取った。
一番手っ取り早く情報を得る手段だろう。
探索するにしても、知らない森の中で無駄に動くと更に迷う危険性がある。
僕はいつもの動作で待機中のスマホを起動させた。
しかし、待機中のはずのスマホは反応すらしてくれなかった。
落雷に撃たれて壊れてしまったのだろうか…。
とにかく、使う事は出来ないようだった。
この事で得られえた情報は、雷に打たれた可能性は十分にあるという事だ。
周りに僕が持ち歩いていた鞄はない。
移動するしかないだろう…。
情報を得る手段を無くした僕はその場を立ち上がった。
もしかしたら、近くに小野さんも居るかもしれない。
僕は警戒をしながら、森に入る事にした。
僕の腰ぐらいに育った草むらをかき分け、前へと進むんでいると…。
「……!!」
僕が進む先の方から声らしきものが聞こえてきた。
誰か居るのだろうか…。
もしかしたら話が聞けるかも知れない。
このチャンスを逃すまいと、僕は迷う事無く先を急ぐ事にした。
しかし、近付くにつれ、その声は荒々しいものだと言う事に気が付いた。
…なんだか、まずい気がする。
すると…キィン!!と鉛を打つような音が辺りを包み込んだ。
そう、例えるならば、鍛冶屋の鉄を鍛えるような音。
「ぐぁああぁあああ!」
次は、男の悲鳴のようなものまで聞こえてきた。
「え?」
行かない方が良いだろうか…?
何かの撮影を頭に浮かべてみたが、見てみない事には判断する事は出来ない。
僕は高い草に身体を隠すように前に進んだ。
すると…
もう一つ。断末魔が聞こえてきた。
僕は、ゴクリと喉を鳴らし、それでも息を殺すように先へ進んだ。
さっきの断末魔のせいもあり、周りはシン…ッと静まり返っていた。
映画撮影であるのならば、ここで監督の「カット!」という声が聞こえてきそうなものだ。
近付くにつれ、心臓が高鳴る音が大きくなる。
掌に汗が滲む感覚が広がる…。
草の間から確認をする。
まだ距離があるが、草むらを抜けたところに、フードを被りマントで身体を隠した人影が立っていた。
身体のラインが分からないので、性別は分からないが、身長が高めな事から男性なのかもしれない。
人影は、洋風のについた血を、持っていた布で拭い取ると、鞘に仕舞い込んだ。
切り殺した当人は、僕の存在には気付いていなようだ。
その場で死体を漁りだした。
物取りなのだろうか…。
ここまで来る頃には、撮影という意識は飛んでいた。
しかし、人影は何も取った様子もなく、その場を立ち去った。
僕はじっとその様子を見つめ、その場を動けないでいた。
人影が離れてから数分後だろうか…。
少しずつ緊張が解けていく。
掌を開くと手汗がすごい事に気が付いた。
しかし、ここでこうしてても情報は手に入らない。
心拍が収まらない体に鞭を打つように
僕は、先程まで殺人が行われていた現場へと歩みを進めた。
一時間だと進みも遅いですが気長に行きます!