笑顔
第19回!
早朝、僕達は旅の支度を整え、一週間ほどお世話になった家を後にした。
面白い作りの家だった。地下に何室かの部屋があり、地上から見た建物としては、小さな小屋にしか見えなかった。
因みに、僕の支度と言えば顔を洗い、クラサが用意してくれたこの世界の服を装着し、クラサが作ってくれた朝食を食し、雫の入っている剣を腰の鞘にしまうだけの簡単な作業である。
なんだ…この圧倒的ヒモ男感は…。
ぼ、僕も何かしなくては…。
使命感に駆られ進言したところ。
おろおろとしている僕を見兼ねたクラサさんは…。
「大丈夫です。支度はなれていますので」と…やんわりとした口調で、僕への戦力外通告を告げた。
その後も、ショックを受ける僕の横でテキパキと支度をなされていました。
違うところでお役に立たせていただこうか…。
そして現在に至る。
ここから数日歩くことになるらしい…。
野宿も当然するようで、ちょっと冒険感が出てきてわくわくしているのも事実である。
「…さて、行きましょうか」
そとに出たクラサが僕へと、出発の合図をする。
そこで僕は、家へ向かいペコリとお世話になったお礼をする。
それを不思議そうにみていたクラサが口を開く。
「なんですか?今の」
「うん、お世話になったから、お礼に頭を下げただけ」
「…そうですね。私も」
ぺこりと僕の真似をする。
頭を下げる意味など知らないだろうに。
クラサは僕の行動に合わせてくれた。
(お世話になりました)
雫も言葉でお礼をする。
何だかそれが面白くて、僕は少し笑ってしまった。
―――今は、平坦な道をロッカさん達が居る村へと歩いている途中である。
結構荷物は多く、僕はクラサに荷物を持つと進言したものの。
「ユウタはまだ病み上がりじゃないですか」と…譲ってくれない。
変なところで頑固である。
ロッカさん達の村へついた。
あの日から一週間…。
罪悪感もあり、ちょっと足の歩みが重い気がする。
クラサは何度かこの町に来て、食料を買いに来ていたという。
その度に、ロッカさんの家や、宿屋にお世話になったお礼をしたという。
「…よし」
僕は足を踏み出した。
これはケジメだ。
僕達は真っ直ぐにロッカさんの家へ向った。
早朝に挨拶もどうかと思ったが、クラサの話によると村の朝は早く、もう起きているとの事だ。
僕達は、ロッカさんの家に辿り着くと、入り口に備え付けられているベルを鳴らした。
「はい」
ロッカさんの奥さんと見られる方が顔を出した。
この人が…。
「あら、クラサちゃん、えっとそちらは…」
ドキリとする…。
「はい…ユウタと言います」
それ以上は言えなかった。
僕は罪悪感から顔を下に向けてしまう。
「そう…アンタが…。」
とつぶやくき。
「ロッカに会いに来たんだろ?入りな」
と優しい声で迎え入れてくれた。
罵倒されると覚悟していたのだが、そんな事もなかった。
僕達は中に通され、入り口付近に荷物を置かせてもらい、ロッカさんが居る部屋へと通された。
家を一歩一歩、歩く度にドキリドキリと心臓の音が高鳴る。
「ここだよ。私はお茶を入れてくるね」
「ありがとうございます」
二人でお礼を述べる。
ノックをし、中からロッカさんの声が聞こえる。
ドキリとするが、僕は一度呼吸を整え、意を決しドアを開け放った。
「よぉ」
あの時と同じ気さくな挨拶で、ロッカさんは挨拶してくれた。
「お久しぶりです」
僕的な感覚としては、一日ぶりなので変な感じはするものの、僕はそう返事をした。
「まぁ、座れよ」
ロッカさんは椅子へと促してくれる。
少しの苦笑。何に対しての苦笑だろうか。
僕に会いたくなかった苦笑だろうか…。
「腕…本当にすみませんでした」
僕は座ると同時に謝った。
どんな罵倒も受ける覚悟で。
「やっぱりな…」
またも苦笑する。
その苦笑が僕の心を引っかく。
「クラサにも何度も言ったんだが、気にする事じゃない。あれは俺がしたくてしたんだよ」
そう言われてしまうと何も言えなくなってしまう。
僕は胸の痛みに顔を歪めてしまったかも知れない。
「……それにな…謝られるたびに、甘えたくなっちまう。お前達を恨んじまう。俺はそれが嫌なんだよ」
それが本当に嫌なのだろう。
それまで見せなかった悲痛な表情を僕達を見せた。
だから…自分のせいにしたいのだろう…。
本音…。
ロッカさんの本当の心を見せられて、僕達は何も言えなくなってしまった。
すると…
コトンと…。
木作りコップがテーブルに置かれた。
「バカだろう?こういう人なんだよ」
ロッカさんの奥さんがそうつぶやく。そして…
「だから、もうこれを最後に謝らないであげて」
悲しそうな優しい表情で僕達を見つめた。
「はい…」
出会ったロッカさんはいつも笑っていた。
だから、笑って居て欲しいから。
その後、僕達は少しの談笑をした後、ロッカさんの家を後にした。
「……」
言えなかった。
魔法で腕を治して貰えるかも知れ無い事を。
希望を持たせる事は、悪くないと思う。
でも…その希望が失望に変わった時、きっともうロッカさんは笑えない。
ロッカさんが嫌だと言った事を、僕達の手で決定付けてしまう事になりそうで。
僕達は、希望を口にする事が出来なかった。
「……」
家を出た僕は沈黙をしてしまっていた。
「…言えませんでしたね」
口にしたのはクラサだった。
「うん…」
同じ気持ちなのだろうか…。
それ以上、僕達は口を開く事が出来なかった。
守りたいこの笑顔(キリッ




