目的
第18回!
それから数分後、部屋のドアをノックした後に、クラサが部屋に入ってきた。
「お待たせしました」
ご飯を持ってきてくれた時と同じ音調で。
「ううん、ご飯ありがとう、おいしかった」
「いえ、ありがとうございます」
謙遜しながら、クラサは椅子に腰掛ける。
「それで聞きたい事とは?」
そして、僕に質問しやすいように促してくれた。
まず僕は…。
「ロッカさんはどうなったの?」
ロッカさんについて聞いた。
一番気になっていた事だ。
「…はい、無事に村へ戻られました。いえ、無事ではありませんね…。片腕を失ってはいますが命に別状はありません」
「そっか…」
「…はい」
「あのさ…」
少し空気が重くなったが、僕は話を続けた。
「この世界の魔法で、ロッカさんの腕はなんとかならないの?」
そう、この世界には魔法がある。
魔法と言うからには、奇跡を叶える力だってあるだろう
それを使えば何とかなるんじゃないだろうか。
「…そうですね…。簡潔に言うと何とかなるかもしれません。ですが…」
言葉に詰るクラサ。
詰るという事は、とても難しいことなのだろうか。
「時間が経ちすぎているため、並みの魔法使いでは無理だと思います。私も魔法にはそこまで詳しくありませんが」
並みの魔法使いなら無理…?
「なら、もっと上の魔法使いなら…なんとか出来るって事?」
「…そうですね。最上級の魔法使いなら…或いは…」
最上級の魔法使いか…。
僕が少し考える振りをするのを見て、クラサは僕の考えを読みとったのか、すぐさま口を開いた。
「ですが、最上級の魔法使いは現在世界で3人居ると言われています。その魔法使いに簡単に会えるとは限りません」
「…どうして?」
「一人は居場所は分かります。私たちが向かう場所です。魔法都市の長がその人です。あと二人は分かりませんが…噂では世界を歩き回っているとかいないとか…」
世界を歩き回っているか…。
その2人を見つけるのは難しそうだ…。
でも…学長の方は居場所がわかっている。
「その長に会えば、ロッカさんの腕の事も、剣に入った雫も何とかなるんじゃないの?」
これから僕達はそこへ向かうのだったら一石二鳥ではないだろうか。
「先程言ったように、簡単に会えるとは限らないんです。それに、会えたとしても…その…一人の民の為に動く事はないかと」
「え…?」
どういう事?
「魔法の頂点に居る方なので…その…言葉が悪くなってしまいますが…何処の身分かも分からない者においそれと魔法を使う事はないかと」
「……案外ケチだね」
その言葉を聞き、明らかに不機嫌になった僕を見兼ねて、フォローを付け足してくれた。
「いえ、仕方ないと思います。全ての者に等しくしていては、命がいくつあっても足りないので…」
僕はこの世界での魔法をよく知らない。
使えば寿命が縮むとか、そういうデメリットが付いて回っているのだろうか。
でも…。
「それでも…やっぱり聞いてもらいたい」
僕は感情のままそんな事を口走っていた。
「…何故ですか?」
真剣な顔で僕に質問をぶつけるクラサ。
そんなクラサに向かい、僕は。
「僕の気が晴れないから!」
はっきりと、わがままを言ってみせた。
それを聞いたクラサは、目をパチクリとさせ。
くすくす笑いながらこう返事をしてくれた。
「そうですね、私も気が晴れません」
お互いに笑うと、クラサは話を続ける。
「では、次の目的地は魔法都市デンゼルでよろしいですね?」
「…うん」
「あと、聞きたい事はありますか?」
えっと、あとは…。
「あ…ここは?以前の宿屋とは違うみたいだけど」
キョロキョロと周りを見渡し、クラサの答えを待つ。
「あ、はい。以前の村には迷惑を掛けられないので、村の離れの家を紹介してもらいました」
確かにそれが懸命なのかもしれない。
あの強い敵の男は武器を奪われ、不利と感じ一度は引いたが、また武器を持って現れるかも知れないからだ。
「あの男は現れたの?」
クラサに聞いて見る。
「…はい…ですが、私たちが村に居ないと知り、去っていったようです。狙いはキリヤードなので…」
案の定だったようだ。
「…村に被害は?」
「なかったみたいです」
……確かに、あいつは村の男を切った時も命までは奪おうとしていなかった。
あそこで引いたのもロッカさんの命を考えての行動だったのか…?
いや…深く考えすぎか…。
「…敵視しているのは、私と…私の仲間達でしょうから…」
ぼそりと…クラサが苦笑しながらつぶやく。
「……」
またしても、暗い話になってしまった。
僕は話を変える事にした。
「出発はいつにする?」
ここでのんびりもしていられないだろう。
一週間も僕はここで眠りについていたのだ。
クラサだって急いでいる身の上かもしれない。
「そうですね…病み上がりで申し訳ありませんが…明日の朝にしようかと思ってます」
「うん、分かった」
僕は出来るだけ元気に答えることにした。
「はい、それまでゆっくり休んでいてください。夕ご飯はもっとおいしいものを用意しますね」
ふふと、優しい笑顔で笑うと、クラサは椅子から立ち上がり、ドアを空けこの部屋から立ち去った。
「…ふぅ…」
僕は一息つき、ベットへと寝転がった。
とりあえず目的の場所は決まった。
「明日は、ロッカさんに挨拶に行こう…」
僕はそうつぶやきながら、また眠りについた。
次回から、魔法都市に向かってレッツゴー!




