夢日記〜第一幕〜 姉の行方
夢で見たストーリを忠実に書き起こしました。
突飛な話で一気に状況が変わったりと夢特有のものもまざっています。
この物語の家族構成、育ち、性格、年齢等に繋がりはありません。
どうぞ、私の夢の世界へおいでくださいませ。
ある日姉1人が行方不明になった。それはあまりに急すぎるお別れ。さっきまでそこに居た人が突然透明になって見えなくなった、そのくらい急な出来事だった。
兄は心配して外へ姉を探しに出て、もう1人の姉は必死に携帯を鳴らしている。弟と妹は何が起きたか分からず、私に話しかけてくる。
『ねえ、なにがあったの?』
『なんで、ねーちゃん帰ってこなの?』
ひたすら私に問いかけてくる。
私はできる限り落ち着いた声で、気にしなくていいんだよ、ちょっとお姉ちゃんの帰りが遅いだけだから。と、話す。しかし、ただならぬ家族の動揺を感じ取っているのか、全く信用してくれない。
そして、夜12時をまたいだ時、それはまた突然に訪れる。
皆、何かを忘れたようにいつもの生活に戻り始めたのだ。
兄はいつのまにか帰ってきていて家の二階に上がり部屋に戻っていった。姉はリビングでくつろいでいる。弟と妹は眠いのか、うとうとしている。
おかしい。さっきまでの出来事を全て忘れているように皆が動いている。もしかして、本当に忘れているのか?いや、そんなはずはない。人1人いなくなったのにこんなに早く忘れるはずはない。
しかし、その考えを一瞬で論破されるような光景が目の前に広がっている。
『嘘、だよね』
そういって、自分の部屋に走って戻る。部屋に戻る途中に母におやすみ、と言われた気がしたが、全く耳には入ってこなかった。
いまは、そんな当たり前の生活なんてどうでもいい。いや、当たり前じゃない。いたはずの人が居なくなって消されてしまっている。こんなことが起こるなんてありえない。
次の日の朝、当然のように皆生活していた。朝食ではコップを一つ多く出したり…ということが一切なかった。
『次の日曜日はみんなで遊びに行くか!』
父が元気な様子で話す。みんなの表情は朝の寝たげな表情から一変、一気に色が出たように明るくなる。
『やったやった!』
弟と妹は無邪気に嬉しそうに笑う。姉と兄は反応は薄いものの口角が少し上がっているのがわかる。
『じゃあ、ピクニックなんでどう?』
と、母が提案する。みんなそれに賛成らしく、表情を濁す者はいなかった。
正直、自分は乗り気ではなかった。楽しそうではあるけど昨日の出来事が未だに忘れられない。姉がいないのに、なぜ。なぜここまで普通にしていられるのか。
『ねぇ、ねーちゃんはどこにいるの?』
『私なら目の前にいるでしょ?なに変なこと聞いてんのよ』
と、少し不思議そうに返される。
『いや、もう1人のねーちゃんだよ』
そう言うと皆がまたもや不思議そうな顔をする。まるで、そんな人居たっけ?と言うような反応。ここまでくると流石に怒りそうになる。が、グッと堪える。
『まあ、それはいいとして、もうすぐ学校の時間だぞ』
『うわ、ほんとだ』
兄と姉が慌てて朝食を流し込んですぐに、いってきますと言って外に出た。
そうしてやってきた日曜日。ピクニック先は近くの河川敷だった。乗り気の兄弟と父と母。朝早くに家を出てみんなで歩いて行く。
皆にとっての楽しい時間はあっという間だったらしい。私にとっては全然…。
母が、そろそろ帰ろうか。と言った。その言葉に皆少し不満そうにする。しかし、明日は学校もあるためか少し納得している。
そして帰り道。父が不意をつくように話し始めた。
『なぁ、なんか忘れものしてなかったか?』
『してないとは、思うけど…』
と母が少し心配そうに返す。
『本当か?なんだか忘れているような気がするのだが……。そうだ、姉だ!あいつは?あいつはどこにいるんだ?』
父が少し取り乱したように話す。その言葉に皆が一斉にハッとしたような顔をする。
『今からでもいい。探しに行こう』
と言う父の言葉を合図に動き始める。
1時間ほど経った頃だろうか。父が大声で何かを叫んでいる。そこに向かうと小さい穴があった。
しかもそれは河川敷にある壁に空いている。側から見ればなんの変哲も無い穴。しかし、どうもその穴から離れることができない。何かが自分たちを押さえつけている。それは足元を完全に捕まえられて動けなくされているような感覚。
日がどっぷり落ちて、月が上がっている。
そして、その時はまた急にくる。いつものようになんの前触れもなく。
穴から、光が発せられ目の前にゲートのようなものが出現する。そして、それに吸い込まれるかのように一歩、また一歩と歩き始める。
しかし、母だけは、じっとしたまま動かない。それを尻目に声も出せないこの状況をどうするか考え続けた。が、もう遅かった。
母を除く家族は全員ゲートの中に入ってしまった。
目がさめると先ほどの河川敷と同じ場所にいた。周りには兄弟と父が寝転がっている。
先ほどと違う点といえば昼間になっていることくらいだろうか。とりあえず、一人一人起こして行くことにした。
全員が目がさめると、何か起きたのか?と言うような顔をしていて、必死に現状を理解しようとしている。
するとどこからか男の人の声がする。
『お前らを今から取り押さえる。ここにいてはいけない者たちだ』
と話す。
『うわ、やめろ!』
父が騒ぐ。父がいた方を見ると別の男に捕まっている。この時、兄弟はみんな理解した。逃げなきゃ。
父は先に逃げろと目で合図を送る。全員が走り始める。私は弟と妹の手を取り必死に走る。
どのくらい逃げただろう。いまは大きい工場団地の中にある割と小さめの塔にいる。父は後ろから追いかけてくる気配もない。
『なんだったんだ、今のは』
『わかんない。今ここで何が起きているのかも』
すると、ドアがゆっくりと開く。父親か!と思ってそこを見る。しかし、それは違っていた。先ほど父を捕らえた男だった。しかも今度はたくさんいる。ぞろぞろと部屋に入ってきた。
『お前らは先に行け。俺が少しだけ時間を稼ぐから』
といって兄が前に出る。膝が震えている。そりゃあ、こんなに大勢の男を目の前にして怖くないはずがない。姉が兄の手を握り、私も。という態度をとる。
『さっさと行け!俺らも絶対後から追いつく』
今は弟たちのためにも逃げるしかなかった。後ろの窓から、飛び降りて外に出る。なりふり構わずそのまま走り始める。後ろを振り返ることなく。
逃げても逃げても、どこかしらか変な男が現れ追いかけてくる。様々建物に逃げ込み、飛び出してはまた逃げ込む。
もやは頭脳戦に近いものがあった。走りながらも考えることをやめてはいけない。そして、何度も男たちをまくことができた。一瞬の判断において全て正しい選択をすることができた。 二つの分かれ道で片方は崖だったなんてものも多かった。
そして、またドアが開く。あぁ、また逃げなきゃ、と窓の方へ向かう。
しかし、窓の外にも誰かがいた。もう逃げ場はない。完全に包囲されてしまっている。ドアからは最初に見たあの男が立っていた。
『もう、諦めてくれないか』
『いやだね。お前らに捕まれば何されるかわったもんじゃない』
『頼むよ。私じゃお前を捕まえることはできない。君は頭がいいからどんな状況でも切り抜けてしまう』
男はそういうと近くにあるマットに座り込む。弟と妹はまだ気付いていないのか、壁の端で何やら楽しそうにしている。
そして、今この状況を打開する方法はない。逃げ道は全て塞がれ、他に出られるような場所はない。どう頑張っても捕まってしまう。下手に逃げて弟たちと離れ離れになるのだけは避けなければならない。だとしたら方法は一つしかない。
『捕まってやってもいい。だが、条件がある。まず、弟と妹に乱暴はしないこと。もう一つは、俺とこの子たちを絶対に引き剝がさないこと。守れないようならすぐに殺す。そして、お前の首を切ってやる。お前たちを殺すことは容易なことだ。いいか、この条件をのんだ場合にのみ俺はお前の希望に従う』
男はすぐに首を縦に振った。
『わかった。その条件をのもう。では、目をつぶれ。すぐに楽になる』
弟と妹はを抱きながらゆっくりと瞼を閉じる。そしてそのまま急激な睡魔に襲われそのまま寝てしまった。
目がさめるとそこは最初にこの世界に来た場所と同じ場所にいた。そこには姉も兄も父も弟も妹もいる。兄と姉が仲良く話しているところに、二足歩行の変な生き物が近づいて来て
『おい、こんなところで何をしてるんだ。あの女もそこに座っていたが、すぐにちゃんといなくなったぞ。そこは俺の場所なんだ』
と謎の供述をしている。そして、引っかかる点が一つあった。
『あの女ってどんな人?』
変な生き物はこちらを向いて姉を指差し、
『こいつに似ていたな』
という。
『ねぇ、その、ねーちゃ…女の人の居場所知らない?探してるんだけど』
『知らねーな。どっかで殺されたとかって話も聞いたけど。この世界にいる男たちに乱暴してはいけない。それがこの世界の鉄則だ。あいつを殴れば殴り返してくる。切れば切り返してくる。あいつらは死なない。常に俺らと対等であろうとする。あの女はそいつらを殺そうとでもしたんじゃないか?』
といって、先ほどまで姉がいた場所に座り込む。
『だが、その男たちの中にも、1人だけ殺せる奴がいる。それはこいつらを仕切っている奴だ。そいつと、なんでもいい。なんでもいいから一つだけでも交渉を成立させれば、ここに戻ってくる。もし、交渉決裂した場合はその男を殺すしかない。その男を殺すことができれば男たちの動きは止まり、ここまで戻ってくることができる』
随分と突飛な話だった。しかし、わかったことはいくつかある。姉が死んでいること。この世界において、正しい選択をし続けることができたという事実。姉を除く他の家族が生きているという現状。
この世界で一番いい終わり方をすることはできたのだろうか。 姉を助けることができず、ただこの世界に来て、走り回ってまた戻って来ただけ。
そんなことを考えていると、また、同じように穴からゲートのようなものが出現する。
『ほら、行けよ。お前たちはここにいていい存在じゃないんだ』
皆それを理解し、ゲートに入っていく。それぞれ思うところはあるだろうがこの世界にいてはいけないということがわかっているからゲートに入る。もちろん自分も。
ゲートを抜けるとそこはまた、変わらない、あの河川敷だった。しかし今回は母が目の前にいる。戻ってこれたんだと思うと嬉しかった。母は姉はどうした?というような顔をしている。
『ねーちゃんは死んだんだって。あっちの世界で殺されたって』
母は泣いていた。それを見ることしかできない自分は情けなかった。弟と妹を抱きしめその場に座り込む。頭をゆっくり撫でてお前たちは気にするなと声をかける。
父は母を抱き抱えた。
『とりあえず帰るぞ』
そういった父の後ろに家族がいて、帰り道を歩く。後悔と無念そして、1人欠けているが、今いる家族が無事であるという事実に対する嬉しさを込めながら。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スッキリしない方もいると思いますが、夢なのでご了承ください。
暇があれば続きや後日談等書いていきたいものですね。
では、第2幕でお会いしましょう。