プロローグ
天高くそびえ立つ山脈、その地は古くから最強の生物である竜が住む禁忌の地とされていた。その山の麓の比較的開けた場所にはその山に住んでいると思われる数百を超える竜が集まっていた。その中心には他の竜よりも更に巨大な竜が横たわっている。その竜は他の竜を統べる存在で他の竜からは尊敬と畏怖から龍帝と呼ばれていた。
しかしそんな龍帝にも勝てないものが一つあった。それは寿命だ。龍帝はいま死へと向かっていた。龍帝は長い時を生きた、もはや龍生に悔いは一つも無い。唯一あるとすれば自分が死んだ後の世界や他の竜達のことだった。龍帝はその悔いを晴らすためにある遺言を残した。それは『自分が死んでから五百年後、竜の秘術を使い生き返る』というものだった。
竜の秘術とはその名の通り竜に伝わる秘術で一度だけ生き返ることができるというとんでもないものだった。しかし欠点がありその竜が持っている力に応じて代償を払わなければいけない、つまり持っている力が強ければ強いほど代償が大きくなるのだ。だが龍帝は記憶を失ってもいい、力を失ってもいいから未来の世界をその目で見たかったのだ。
龍帝はもう自分に残されている時間が少ないことがわかっていた。最期に周りの竜の顔を見回し、満足そうに目を閉じた。
そして龍帝は他の竜に見守られながら息を引き取った。
五百年後の世界を、そして五百年後の竜達の姿を楽しみにしながら。