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花誘ふは君の香  作者: コウ
第一章:
3/13

2.香りの行方

 「で、どうだったんだよ? ちゃんと告ってきたんだろ?」


 

 校舎にいたときはまだうっすら明るかったが、いつの間にか太陽は沈んで薄暗くなっていた。

 昇降口から出たところで体育館から出てくる大野先生を見つけ、4人で校門まで一気に走った。

 落ち着いてきたところで、口を開いたのは新だ。

 他の2人も気になっていたようで、一斉に視線が集まった。



 「…どうもこうもねぇよ。あっという間に振られた。

  振られたっていうか、罰ゲームだってバレてて相手にもされなかった。…って、聞こえてただろ!」



 うっすらと汗ばんだ額を手の甲で拭い、歩き出す。

 恥ずかしさからか、みんな見てたのに蒸し返されて、ムッとする。

 耳が熱い気がする。

 気付かれないようにさっさと駅の方に向かって歩き出す。



 「俺らに聞こえたのは、最初に上げた先生の叫び声だけ。

  あとは全然何言ってるのか聞こえなかったし、馨の影に隠れてちいこ先生、全然見えなかったし。」

 「なんでー!? うまくいっちゃったんじゃないのかよー!」

 「うまくいくわけあるか!! 本気にされず、一瞬で笑って一蹴されたわ! ワハハ!」



 追いついてきた新と陽介がなおも食いついてくるので、ヤケになって笑う。

 3人は不思議そうに顔を見合わせている。


 

 「でもさ…」



 珍しく大和が食い下がってきたので、もうどうにでもなれ! と向き直る。



 「でもさ…何?」


 



 「…キス…してなかった…?」



 「――…は???」




 一瞬、間が空く。

 声が耳を通り過ぎ、言葉が頭に戻ってきた瞬間、一気に顔に朱がさした。



 「…は!?!?」



 俺は一瞬前の台詞を、目を瞬かせながら今度は違うイントネーションで口にした。



 「あれ、違うの? てっきり俺らの存在忘れて、ちゅーでもされてんのかと思ったけど。」

 「されてねぇよッッ!! なんでだよッッ!!」

 「マジか! うまくいったもんだとばっかり思ってたのに!」


 

 なぜキスをしたと思われたのかと振り返り、あることに思い当たる。



 「…ってアレか! デコピンくらってたんだよ!」

 「デコピンかよ!!」

 「色気も素っ気もねー!!」



 腹を抱えて爆笑している3人を横目で見る。



 「もういいだろ! 帰るぞ!!」 

 「馨、顔真っ赤!」



 3人は笑い過ぎて落とした鞄を手に取ると、帰りかけていた馨の肩にドン!ドン!と新と陽介の腕が乗って両側から肩を組まれた。



 「「どんまいっ!」」

 「笑いながら言う台詞じゃねぇよ!」



 そのまま駅に向かいながら、ふと頭を過った想像に、また頬が熱を持つ。



 ――ていうか、ちいこ先生が背伸びしただけじゃ絶対届かないだろ…!!



 ちいこ先生とキス…なんて言われなかったら想像もしなかったはずなのに、突然放り込まれた想像はよりリアルになり、なかなか頭から消えない。

 それでも、そんな訳あるか! と馨はブンブン頭を振って邪な考えを消し去る。



 そういえば…と、ふと戻ってきた思考に首を傾げる。

 あのとき最後に香ってきたのは、何の香りだったのだろう。

 心臓が跳ね、周りの時が止まったように感じた、あの香り。

 どこかで嗅いだことのある香りだった気がする。

 でも、思い出せない。


 自分から蒸し返すと、また騒がしくなるかな…と思いながらも、一度気になり始めると、それが何かはっきりするまでムズムズと気持ち悪さが残る。

 悩んだ挙句、もどかしさに勝てず結局自ら話題にする。



 「…陽介。ちいこ先生って何の香水使ってる?」

 


 こういうのを聞くのは陽介だ。

 女の子のことなら、大衆の流行り物から個人の趣味まで割と何でも詳しく知っている。

 顔は男の俺から見ても爽やか系のイケメンだし、女の子には優しいから、とにかく告白する人は後を絶たない。

 だから彼女がいなかったときなんてほんの少しもないけど、決して付き合う期間が被ることがないのが彼のポリシーだ。


 陽介は少し不思議そうな顔をして、口にした。



 「いや、ちいこ先生香水なんて使ってないと思うけど。先生から香水の香りなんて嗅いだことないよ。

  馨、さっきまでちいこ先生の話題、あんな嫌そうだったのに、どしたの?」

 「陽介、鼻利いてねぇんじゃねぇの?」

 「いや、マジに。ちいこ先生香水、使ってないよ。

  柔軟剤もキツイ匂いのは使ってなかったから。」

 「でも、確かに最後ふわっと鼻にきたんだよ。

  なんか嗅いだことある甘い系の香りだったんだけど、それが何なのか思い出せなくて…

  あー! スッキリしねー!」



 結局スッキリしたくて聞いたことは、より気になることに進化して戻ってきてしまった。

 髪をくしゃくしゃっとかきあげた横から、新が顔を覗き込んだ。



 「そんなにその香りが何か気になるの?」

 「なんか、こうあるじゃん。

  すぐそこまで来てるのに、手が届かなくて気持ち悪い感じ!!

  あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!! ってぐしゃぐしゃして叫びたくなる。」

 「じゃぁ、明日陽介にもっかい嗅いで貰えば?」



 …嗅いで…貰う?

 なんだか、ちいこ先生の香りを誰かに嗅がれるのは、厭な感じがする。

 


 「…やっぱいい!! 俺の勘違いかもしんねぇし!

  さっき言ったことは、忘れてくれ!!

  …そうだ!!! 今日○ャンプの発売日じゃん! 本屋寄ろうぜ本屋!!」



 慌てて話題を変えて、ちょうど通り過ぎようとしていた本屋に入っていく。

 その後はちいこ先生のことは全く話題になることなく、駅から電車に乗り、それぞれの最寄駅で降りていった。


 馨は駅から家まで歩きながら、明日また同じことを聞かれるのか…と思うとちょっと憂鬱だったが、報告する残り2人は現場を見てなかったのだから、「あっさり振られた」と流してしまえばいいや、と今日の夕飯に思考をシフトした。




こんにちは☆コウです。

馨くん、焦りまくりです。

カッコつけ気味の男の子になる予定が、動かしてみるとどんどんイジられ役になってきました。

でも、これからカッコいいところがどんどん出てくる予定ですので、もう暫くお待ちくださいませ。



*・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*

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