一話目
初投稿です。
異世界に逝って来て。第一話
「俺が、私が召喚されました」
「これは・・・・成功という形でいいのでしょうか・・?」
「なんとも返答に困るのう・・・。一応は成功と見ていいのじゃろうが・・・。」
「だからソッチには間接はまがらないぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!???もう一つ間接増やす気かお前はぁあああああああああああああ!!!!!」
とても広く、暗い空間に、少し野太い男性の声と、少し成熟した少女の声。そして俺、[立花恭介]の悲鳴が響いている。周りにいる人間達も、その微妙な空気に飲まれて、誰も動こうとしない。まあ俺でも動きはしないだろうが。
「・・・・・こんなことになったのも恭介の所為だから。反省して。」
「だからって右手の間接極められながらすることじゃないぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」
それは俺の上に乗りながら、右手の間接を曲がらない方向に捻じ曲げている幼馴染のせいである。少しゆっくりとした喋り方と凛とした声は、普通は大人しい少女のものなのだが、言っていることはいじめっ子のそれである。
本来別空間に飛ばされた人間の反応は、「何処なんだここは!!」とか、「誰なんだ貴様は!!何の目的で俺をさらった!!」なのだろうが俺はそうじゃない。間接を極められながら痛みに耐え、シリアスを貫き通すという高等テクニックを俺はまだ習得していない。
「あのぉ・・・おぬしら?出来れば先に話しを進めたいのじゃが・・・。よいかの?」
そんな俺が苦痛に耐えていると少女が俺を解放するようお願いしている。何とかその姿を見ようととりあえず視線をさまよわせた先にいたのは綺麗な緑色のドレスを着ていた、十代辺りの少女の姿だった。髪の毛は茶色だが、その眼の色は鮮やかな緑で、とても澄んでいた。さらにまだ幼さが抜けていないにもかかわらず、綺麗なドレスを着こなしていた。まあ俺にしては早く開放されたいからそこら辺はどうでもいいのだが・・・。
「・・・・・・・恭介のお仕置きが終わったらにして。後10分ぐらいかかるから」
「ちょっ!!後十分もこうしてなきゃいかんのか!?さすがにこれ以上は背骨がありえないほうこうにぃいいいいいいいい!!??」
「・・・・・・黙ってお仕置きされる。口答えは駄目。」
「ああああああぁぁああぁあぁあぁあぁああぁあぁぁあぁあああああああああああああああ!!!!!!!」
とりあえずなんでこうなっているのかだけ回想しておこうと思う。現実逃避なのだろうがこうして無いと多分俺は死ぬだろうから。
少年回想中
少し肌寒い季節、俺は幼馴染と一緒に学校から帰宅していた。他の友人が言うには羨ましい事この上ないらしいが俺はそんなこと知らない。やましい気持ちなんて一切無いからだ。少なくとも今現在はそうだろうな。ちなみに俺の名前は「立花恭介」だ。ちょっとオタクなところがあるが基本的には普通であると自覚している。
・・・・・そういう自覚って大抵は普通じゃないやつばっかりだよね。
「・・・・・・ねぇ、これ・・・何・・・?」
隣で呟く一般人その2、俺の幼馴染にして巷で言う『クーデレ』系の少女。「一条律花」、そんな幼馴染の言葉に少し頭をひねって答えを出す。
「さあ・・・どっかのオカルトマニアが適当な黒魔術の本でも拾って走り書きした痕じゃね?」
「・・・・・・それにしては光っている。しかも虹色。」
「んな事知らねえよ。おおかたどっかの最新技術でも使ってんじゃねえか?どうでもいいけど。」
「・・・・・・こんなのに最新技術使う人の気が知れない。」
「俺もだよ、何で道端のど真ん中に陣を最新技術で書いてんだよ、馬鹿じゃねえの。」
そう、今俺たちの目の前に不気味に虹色に光っている『魔方陣』が在った。・・・なんで魔方陣だってか?どっかの小説でみた魔方陣とそっくりなんだよ、分りやすく例えるならRPGツクールの魔法陣に似ている。いわゆる六亡星というやつだ。
「・・・・・・しかも道の真ん中に堂々と・・・邪魔」
隣で少し怒気を含んだ声が聞こえてくる。確かに邪魔だ、道の真ん中にこうもあからさまに六亡星があるとムカついてくる。しかしここで六亡星を突っ切るのは素人のやることだ。ここは遠回りして・・・
「・・・・・・早く行くよ、もう無視する。」
そういいながら俺の腕を引っ張り、六亡星を突っ切る幼馴染。意外と引っ張る力が強かったのはおそらくむかついた為だろう。気が短いやつだ
「・・・・・・!?」
そして俺らがちょうど上に乗っかったとき、それは起きた。
「・・・・・・・魔法陣の光が・・・強く・・!!」
「あ~あ、やっぱりか。」
「・・・・・・なんで言わなかったの!!」
「言う前に突っ切ったから。」
その言葉を区切りに俺たちは光に包まれ、この世界から消えた。何でこうこの幼馴染はたんきなんだろうな?
・・・はいそんなわけで回想が終了いたしました。一応補足として召喚時、周りの兵士諸君の感嘆の声や話しかけようとしていた爺言葉を使う少女を思いっきり無視して口論を始めた俺ら。一方的な口論は約三十秒で終了し、後に間接を決められKOされました。ちなみに回想には十分ぐらいかかったのだけどその間ずっと両手をあらぬ方向に捻じ曲げられていたんだぜ?
一種恐怖だな。
「ところでそろそろ10分なのじゃがもう良いかの?」
「・・・・・・・恭介が反省してなさそうだからこのまま聞く。話して欲しい。」
なんでぇ!?って言うかなんか大事なシリアスシーンなんだろうがそれをこのままで聞けと!?
さあ皆さん想像してください。おそらくこの綺麗なドレスを着こなしている爺言葉少女から俺らがいきなり別の場所に移動させられたことについて知らされるだろう。それはおそらく少女にとって、俺らにとっても大事な話だろう。そしてそれを聞こうとする両腕をあらぬ方向に曲げられた少年とその少年にまたがって間接を決めながら笑っている(であろう)少女。
・・・・・・・・・・・・・とてもシュールだな。
「・・・・・・・なに考えているかわかりやすいよ、恭介。」
そしてさらに力を強くする幼馴染に俺は涙を禁じえない。おそらくどんな感動の映画よりも泣けるのではないだろうか。俺限定で。
「凄く話辛いの・・・。出来れば場所を替えて話したいのじゃが・・・。」
とりあえず危機を脱出出来そうになった。移動となれば流石にこの馬乗り状態から開放されるだろう。そしてそのままこいつが忘れてくれれば・・・・。
「・・・・・ここでして。」
誰かぁああああ!!!ここに鬼がいるぅううううううう!!!!!!!
とまあ本気9割9部の冗談は置いておいてそんな幼馴染の言葉が気に食わなかったのか、周りにいたであろう兵士の一人が口を開いた。
「おい貴様!!姫様の言葉に反抗する気か!!!」
「・・・・・・・・!!」
荒々しく叫んだその兵士の言葉に若干体が硬直する律華。しかしな?その所為で余計に腕にかかる力が強くなってんだよぉおおおおおおお!!そんな俺の気持ちをぶつけるべく、痛いのを我慢して上半身をそいつの方に向けて吠える。
「オイ!!てめえは何勝手なことほざいてんだ!!女の子相手に恥ずかしくないのか!!ついでに俺の間接にも謝れぇ!!」
「なっ!!その女が姫様に楯突くからだ!!大体貴様の間接など・・・「そこまでじゃ!!そのもののいうことは間違っておらぬ!!」・・・しかし姫様!!」
兵士がまた何かほざこうとしたのを凛とした声が止めた。その声が下方向に顔を向ける。さっきまで律華の行動にうろたえていた少女と同じ人物であるかどうか疑ってしまうほど、その少女の表情には威厳が感じられた。律華もその威厳にひるんだのか、関節技が緩んだのは俺にとってうれしい誤算である。次の瞬間さらに強いものにはなったが・・・。
「すまなかったの、我が兵が迷惑を・・・。」
「・・・・・・・・・大丈夫、恭介がかばってくれたから。」
「その庇ってくれた筈の恭介とやらはお主の下で虫の息じゃがの。」
その言葉に少し顔を赤くして律華が関節技を解き、俺から離れる。20分からそこら辺の拘束からようやく解き放たれた俺は少し体を伸ばして、姫様(仮)と向き合う。ちなみに救出が後一分遅れていたら多分俺は三途の川を渡っていただろう。異世界に三途の川があるのかどうか知らないが。
「とりあえず助かったといっておく。だけどこれとそれとは別だからな?話してもらうぞ。」
自分の空気をギャクモードからシリアスモードに変更して姫様(仮)に礼を言う。そして同時に俺らがここに居る理由を問う。周りの兵士も、シリアスな空気になったことを感じ取ったのか、緊張感を高めた。しかし姫様(仮)はさっきの威厳を消し、自然体で話を進めた。
「はっはっは、分っておる。まあここじゃなんじゃろう、もっと明るい空間で話すべきじゃ。」
そして姫(仮)はマントを翻し、出口と思わしき方向へ歩いていく。俺と律華の周りにはさっきの兵士含む十人ぐらいが周りを囲み、誘導していった。
こうして俺らの物語は始まってしまった。しかも全くもって痛い始まり方である。主に俺の間接が。
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