童話:花束のしごと
人の役に立つって、
どんなことだと思いますか。
このお話は、
その答えを知っている花束のお話です。
――あなた達は、僕をどうしようって云うの?
ぼくは花束。
白いバラと、やさしい色のガーベラ、ふわふわのカスミソウが集まっている。
細いりぼんで結ばれて、静かに息をしている。
朝の光はやわらかく、
白い布がゆれて、音楽が遠くから聞こえる。
ぼくは、二人の小さな手に持たれていた。
男の子の名前はルキ。
女の子の名前はミオ。
五さいの二人は、少し大きなきれいな服を着ている。
靴はぴかぴかで、歩くたびに小さな音を立てた。
まわりには、きれいな洋服の人たちが並んでいる。
みんな静かで、でも、顔はやさしい。
ぼくは、ここに集まった人たちの気もちが、
同じところを見ているのを感じた。
前のほうに、白いドレスの人と、黒い服の人が立っている。
二人とも、少し緊張した顔。
けれど、目が合うたびに、
ゆっくり、同じ笑顔に変わっていく。
ルキとミオの手に、力が入る。
二人の胸の音が、早くなる。
それに合わせて、前に立つ二人の気もちも、
同じ速さになっていくのが、ぼくにはわかった。
合図の音がして、
ルキとミオは一歩前へ出た。
ぼくは、ていねいに、両手で差し出される。
白いドレスの人は、口に手を当て、
黒い服の人は、まっすぐうなずいた。
そのとき、まわりの人たちの表情が、
一斉にほころんだ。
拍手が広がり、
あたたかい音が、空気を満たす。
ぼくは、胸の奥が静かに満たされていくのを感じた。
白いバラは「約束」。
ガーベラは「希望」。
カスミソウは「感謝」。
声にしなくても、
その気もちは、ちゃんと届いている。
そのあと、ぼくは近くに飾られた。
ルキとミオは、ほっとした顔で手を振っている。
白いドレスと黒い服の二人は、同じ方向を見て立っている。
ぼくは思う。
人の役に立つというのは、
前に出ることじゃない。
大切な気もちが、迷わず進めるように、
そばにいることだ。
そのはじまりの場所で、
ぼくは静かに、きらきら輝いていました。
この物語は、
「人の役に立つって、どういうことだろう」
という問いから生まれました。
答えは、いつも静かで、
すぐそばにあるのかもしれません。




