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鏡乱舞物語  作者: ニシキ
一章:昇華編
8/10

第7話:新天地にて

 知らない天井。目が覚めて一番に視界に入った。

木造の家だ。暖炉の火が付いている。

 いつの間にか俺の血の付いた服から着替えさせられている。モコモコのファーが付いててお洒落だ。

 いや今はそんな事よりも、だ。


「此処は…どこ?」


 確かカガミさんと交代してそれから………。

それからの記憶はまるで抜け落ちた様な感じがする。

思い出そうとするとまるで頭に靄がかかるような。

まぁそれは追々カガミさんに訊くとして。

 どうやら俺はベッドに寝かされていたらしい。

俺の布団よりかは硬いし手触りも悪い。が、少なくとも瓦礫だらけの場所で寝るのと比べれば天と地の快適さ。うーん、暫くゴロゴロしていたい…。


「おい。此処は俺の家だ。目が覚めたならさっさと起きろ」


 急に声を掛けられたので思わず驚いて飛び起きた。

反射的に声の主の方向を向くと、そこには白髪の男が居た。

 人………?アルフさんじゃ…ないよな?


「誰…だ?」


「ん?ああ、アンタ今は鏡乱舞じゃないのか。俺は格異(かくい)の一柱、怠惰の“スロフ=トレデット”」


 スロフ=トレデット?

分からない。今は一体どういう状況だ?


「ちなみにアルフも格異で、憤怒を名乗っている」


「格異………?」


「む。知らないか」


 知らないも何も…この世界の事殆ど、分かんないことだらけだし。常識とか求められても。


「格異ってのは、この世界の頂点。言い換えてみれば王様だな。それぞれ別の土地を治めてる強者って思ってくれれば良い」


 格異………。確かにアルフさんも尋常じゃない風格があった。目の前のスロフさんからも。


「さて、アンタの名前は?」


 さっきの会話的に俺の中にカガミさんがいる事はバレていそうだし、多分何話しても大丈夫だろう。

 アルフさんみたいに、乱舞という存在に恨みがあるなら寝てる間まで殺されていた筈だ。


「永瀬千剣破。異世界から来た……らしいです」


「チハヤ。良い名前だ。それにしても―――異世界から、か。そりゃ災難だったな」


「それはもう、散々でしたよ」


 本当に。狼みたいな奴に腕を喰われたり、やっと人と出会えたかと思えばまた腕を斬り落とされたり。

 それにしても…カガミさんは?


『…ふわぁ、呼んだ?寝てたんだけど』


 何とも呑気な………。って今はそんな事は良い。

全くもって分かんないんだけど、今どういう状況?


『そうだね…。私とアルフの殺し合いを仲裁したのがこの男。私達はこの男の監視下に入ったらしい』


 かなり省略されてる気はするがまぁ、大まかに内容は理解する事が出来た。

 そんな中、スロフさんは俺に堂々とこう言い放った。


「さて、チハヤ。突然だが、アンタには三つの試練を課す」


「試練…?スロフさん、一体何を……」


「師匠と呼べ!その方が気分が良い!」


「は、はい。師匠」


 一体俺は何をさせられているのだろう…。


「いいか?この試練はアンタがこの世界で生きる為の試練でもある。せいぜい励め」


「…はい。分かりました!」


 何をさせられているのかは分からないが、きっと俺にとって必要な事なのだけは分かった。

 アルフさんとの戦闘で酷く思い知った。

俺はカガミさんに頼りきりなのだと。

俺だって力をつけてこの世界を生き延びて、五体満足で元の世界に帰らなくてはならないのだ。

 その為なら俺は全力で試練を熟せると思う。

 師匠は指を立てながら俺に説明してくれた。


「一つ目の試練は、戦闘の試練」


 ほう。


「二つ目の試練は、言語の試練」


 ほうほう。


「三つ目の試練は、俺の事務仕事を全部」


 ………?

一体この人は何を言っているんだ?

ちゃっかり自分の仕事を押し付けようとしてないか?


「三つ目も俺が…?」


「ああ。そうだが?」


 悪びれもせず、当然かの如く振る舞っている。

こんなに清々しく言われると、むしろ俺の方が間違っている気分さえしてくる。


「一つ目は言わずもがな。戦力を付ける。まぁこれに関しては追々深く説明していく」


 試練の詳細は深くは語らなかった。


「二つ目は言語を会得してもらう。郷に入っては郷に従え。今俺とアンタの会話が成立してんのは……あー、あの可愛い人形のお陰だ」


 師匠は棚の上にある気色の悪い人形を指差した。

目玉が飛び出そうなデザイン。まるで呪いの人形だ。


「可愛いですか…?あれ」


 俺は苦笑いしながら言った。


「さあ?誰かさんが言うには可愛いらしい。あの人形は特殊な魔具。数十メートル以内の人物の対話を完璧にするらしい。とはいえ、あの人形持って出歩くのは嫌だろ?だったら勉強してもらったほうが早い」


 うん。確かにあの人形を持ち歩くのは嫌だ。

 にしても、魔具か。そんな便利な物もあるんだな。


「んで三つ目。これは…俺の面倒事を減らしてくれればいい。一応、俺もお偉いさんなんだ。仕事がたんまりある。だから、な?」


 師匠はウィンクをしながら頼んできた。

 怠惰の称号を冠するに相応しいと俺は思った。

まぁ、言語の試練の延長戦と考えれば良いか。


「はぁ、わかりました。やりますよ」


「恩に着る」


 俺は小さくため息を吐いた。

 きっと俺はこの世界で色んな事を経験するのだろう。

見知らぬ世界。見知らぬ力。見知らぬ運命。

だが、不思議と胸は重く感じなかった。



 こうして俺―――永瀬千剣破は、

スロフ=トレデットの弟子となり、元の世界へ帰還する力を得る為の茨の道を歩み始めたのだった。

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