第3話:初戦闘②
今の攻撃は俺を殺す筈の攻撃だった。
それなのに俺は生きている。
爪の斬撃が迫った瞬間、俺は死を覚悟した程だ。
狼魔族は避けたのを不思議に思ったのか、距離を置いている。その合間を縫って俺は思考させて貰う事にした。しかも、
『なんだ、使えるじゃないか』
少し不機嫌気味だったカガミさんから驚嘆の声を貰えたのだ。
んー。今のが乱舞とやらの力“身体強化”らしい。
あまり実感は無いけど、今までに無いほど速く動けたし。正に火事場の馬鹿力ってヤツだ。
よし、身体強化の感覚は何となくは掴めた。ちなみに、他にも乱舞特有の力ってあるのかな?
『“即時再生”があるね。腕の一本や二本千切れようと再生する。といっても、致命傷と再生が間に合わなかったら普通に死ぬけどね』
その力で腕を生やせたってコトか。
それって結構万能過ぎるな…。いやまぁ生存確率が上がったって事で喜ぶべきなんだろうけど…。
なんか…本当にカガミさんは化物なのだと実感した。
『他には―――鏡由来の能力もあるね』
鏡由来?
『“反射”“投影”の二つだね。反射は受けた攻撃をそのまま返すという能力。相当技量に頼るから今は難しいかな。投影は殺した生物の姿形•性質を奪える能力で、道具なんかもも投影できるよ』
そういえば、カガミさんは鏡乱舞とか呼ばれていたんだっけか。
反射は中々使えそうかと思ったが、流石にぶっつけ本番は怖い。相当な技量がいるらしいし。
投影も中々な物だ。殺す云々は置いておいて、道具を再現できるのが強いな。
と言っても現時点ではあまり意味が無さそうだ。
どうやら、カガミさんが俺の身体に宿ってから関わった物しか投影できないらしく、元の世界にあったナイフなんかは再現不可だった。
となると、“身体強化”で殴るしかないか。
そもそもこの身体強化でダメージを与えられるのかについてだが…。
「ガウルルッ!!」
狼魔族が再び攻撃してきた。様子見は終わりということだろう。
容易く避け、その隙に狼魔族の腹に反撃してみた。
反射神経が良くて本当に助かったと思った。
まぁ、反射神経が良かろうと身体強化が無ければ、対応出来ずに死んでいたのは間違いないけどね。
さて、反撃の結果だが―――割と手応えがあった。
その証拠に狼魔族は怯んで、数歩退いたのだ。
結構堪えてそうだし、中々通用しそう。
そうしてまた、爪の斬撃が俺を襲う。
「よっ」
勿論、全部回避する。
一撃でも当たれば瀕死…最悪、即時再生があるのだが痛い事には変わりない。痛覚に悶えて動けなくなってしまっては昨日の二番煎じ。
即時再生があるから大丈夫、と油断しまくるのは良くないのである。
この戦いに於いて得た経験は、狼魔族は攻撃の後必ず隙ができると分かった事だ。仮にも野生生物なのだから、そんな隙だらけで良いのか…とも思うが、
恐らく天敵が居ない為に戦い慣れていない様に思える。
そう考えるとカガミさんの言う通り、割と練習相手には丁度良かったのだと思う。
『ふふん』
カガミさんが愉悦に浸ってる気配。
今一体どんな顔してるのか見てやりたい気分になった。
そんな事を考えながら、また狼魔族に一撃を入れる。
殴って、蹴って…そしてまた殴る。
勝負は―――突如として終わりを告げた。
急に狼魔族が項垂れたかと思えば、
カガミさんから『もう死んだ』と告げられたのだ。
終わったと理解した瞬間、俺は腰が抜けてしまった。
その場に座り込み、ふと自身の呼吸が荒くなっている事に気づいた。
体力の限界が近かったのか―――。
もし体力が尽きていれば…と思うとゾッとした。
身体強化のせいか疲労感が強い。
『お疲れ様、チハヤ』
ああ、ありがとう。
俺は生きている事に安堵してホッと胸を撫で下ろした。




