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【完結】妄想オナニー女子  作者: 泉水遊馬
エピローグ 水沢しずく 実はここからが本編
72/80

水沢しずく3

警察がアパートのドアをこじ開けると、薄暗い部屋に湿った空気が漂った。

しずくは部屋の中央、床に座り込み、膝を抱えていた。

彼女の目は虚ろで、頬はこけ、唇は乾き、乱れた髪が顔に張り付いていた。

「水沢さん、大丈夫ですか?」

警官の声が響いたが、彼女の耳には届かなかった。

頭の中で、先輩の幻影が囁く。

「離れないよ、しずく…」

その声は、冷たく甘く、現実の声を掻き消した。

警官の一人がしずくの肩に触れ、彼女は小さく震えたが、反応はなかった。

部屋の空気は重く、カビと埃の匂いが充満していた。

シンクに積まれた皿、開け放たれた冷蔵庫、そして散乱したアダルトアイテムが、しずくの3日間の混乱を物語っていた。

あかねは警官の後ろで立ち尽くし、しずくの姿に息を呑んだ。

彼女の目は、かつての明るい光を失い、まるで別の世界を見ているようだった。

警官が無線で救急車を呼び、あかねは一歩近づいた。

「しずく、聞こえる?」

あかねの声は震え、彼女の名を繰り返した。


救急車が到着し、しずくは担架で運ばれた。

彼女の体は軽く、まるで魂が抜けたかのようだった。

病院の廊下は消毒液の匂いで満たされ、白い壁が冷たく光った。

しずくはベッドに横たわり、点滴の針が腕に刺さった。

彼女の目は天井のシミを見つめ、時折、先輩の笑顔が視界の端でちらついた。

「しずく、私から逃げられないよ。」

幻影の声が、頭の中で反響した。

看護師がカーテンを開け、窓から差し込む光が彼女の顔を照らしたが、彼女の心はまだ闇に閉ざされていた。医師が穏やかに話しかけた。

「水沢さん、少しずつでいいから、話してみて。」

だが、彼女の唇は動かなかった。

あかねが病室を訪れ、ベッドのそばに立った。

「大丈夫だよ、しずく。私たちがいるから。」

その言葉は、彼女の心に小さな波紋を広げた。

だが、幻影の声がまだ響き、あかねの声を掻き消した。

しずくの目から一筋の涙が流れ、頬を伝った。

彼女は、あかねの顔を見ようとしたが、視界はぼやけ、先輩の笑顔が重なった。

病院の機械音が、彼女の心臓の鼓動と重なり、不気味なリズムを刻んだ。

彼女は、現実と幻影の境界が揺らぐのを感じた。

医師はしずくの状態を観察し、カルテにメモを取った。

「重度の疲労と栄養失調、精神的なストレスが強い。しばらく入院が必要です。」

あかねは医師に頭を下げ、

「しずくを助けてください」

と呟いた。あかねの心には、しずくの笑顔を取り戻したいという思いが溢れていた。

しずくはベッドで目を閉じ、幻影の声が遠ざかるのを待った。

だが、闇はまだ彼女を離さなかった。

窓の外では、雨が再び降り始め、ガラスを叩く音が彼女の意識に響いた。




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