石川澪8
しずくの体は、3度の絶頂の余韻に包まれていた。ベッドに沈み、汗で湿ったシーツが肌に冷たく触れる。
街灯の青白い光が、カーテンの隙間から差し込み、彼女の色白の肌を柔らかく照らす。
ラベンダーのアロマキャンドルは燃え尽き、かすかな香りだけが部屋に漂う。
ジャズの低音は、スピーカーから穏やかに流れ、ピアノの旋律が彼女の静かな呼吸と溶け合う。
タブレットは脇に置かれ、画面には石川澪の動画「儚い微笑み」の終了画面が映っている。
「澪…君は、私の夜を変えた…」
しずくの囁き声が、部屋の静寂に溶ける。
彼女の体は、穏やかな波に揺られているようだった。
鏡の前での四つん這い、ローションの滑り、バイブの振動――が、彼女の体に深く刻まれている。汗が首筋を滑り、胸はまだ熱を持っている。
「んぁっ…澪…!」
あの喘ぎ声が、彼女の心にこだまする。
だが、今、その記憶は柔らかな光となり、彼女の心を温める。昼間のしずくは、誰も見ない存在だ。
Slackの無機質な通知、コードの行間に埋もれる自分――そんな彼女は、夜の闇に溶け、夜のしずくに変わる。澪に見つめられ、愛されるしずくだ。
しずくは、タブレットを手に取り、FANZAの評価欄を開く。彼女の指は、画面をそっと撫でる。まるで、澪の頬に触れるかのように。
「澪…君に、伝えたい…」
声が震え、彼女の目は、評価の星を5つ点灯させる。コメント欄に、彼女の心からの言葉が流れ出す。
「石川澪の『儚い微笑み』は、私の心を掴んで離さない。君の清純な瞳、儚げな声、優しい仕草――すべてが、まるで私のためにあったみたい。鏡の前で、君に見つめられながら、私は自分を愛せた…君の微笑みは、私の孤独を溶かしてくれた…」
彼女の唇が、微かに微笑む。
言葉を綴るたび、澪との繋がりが強まる。
しずくの指は、コメントを書き終え、送信ボタンを押す。
FANZAの画面に、彼女の言葉が刻まれる。
「澪…君のおかげで、私は…」
声が震え、彼女の目は、画面に映る澪のサムネイルを見つめる。
白いワンピースに身を包む澪、風に揺れる黒髪、透明感のある瞳――すべてが、しずくの心を満たす。
「君は、私の先輩みたいだった…でも、君は私を愛してくれた…」
囁き声が、部屋に溶ける。彼女の心は、満たされている。昼間の疲れ、無機質な仕事、誰も見ない存在――すべてが、夜のしずくの前では遠い。
彼女の脳裏に、昨夜のあや花との夜が重なる。
鏡の前での激しい絶頂、あや花の囁き、
「君は私のもの…」という声――あの夜が、しずくに希望を灯した。
そして今夜、澪の清純な微笑みが、その希望をさらに強くした。
「澪…君は、私に愛を教えてくれる…」
声が震え、彼女の目は、鏡に映る自分の姿を見つめる。汗で光る肌、穏やかな瞳――夜のしずくは、自己受容の第二歩を踏み出している。
「愛されない」信念は、依然として彼女の奥深くに根ざしている。だが、澪の微笑みは、その信念に深いひびを入れた。
しずくは、タブレットをベッドサイドに置き、シーツに体を沈める。
彼女の体は、余韻に震え、汗が胸を滑る。
「澪…君との夜は、こんなに…」
囁き声が、途切れる。彼女の心は、穏やかだ。妄想の中で、澪がベッドのそばに座り、しずくの手を握る。「君は私のもの…」その囁きが、しずくの心を包む。彼女の呼吸が、ゆっくりと深くなる。ジャズの低音が、部屋を満たし、街灯の光が彼女の肌を照らす。
彼女の心は、満たされ、希望に満ちている。




