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アンブロークン・ラインズ  作者: 深月 慧
ブロークン・ラインズ 霊気荒廃近域・新崑崙
8/8

Route IF / されど、道が続くなら

 周囲がエーテルへと還っていく中で、蒼怜のいるその場所は奇跡的にまだ存在していた。

 彼の意識はもう朦朧としており、そのまま彼の人生が終わるのも時間の問題であった。

 そんな中で声が生まれる。


『正直、これは予想外だったよ』


『……あぁ。君の懸念はもっともだ。なんなら確実に来るだろうね』


『そう、みんな必死なんだ。だから誰かが踏みとどまらせないといけない』


 誰が話しているのだろうか。

 そして誰と話しているのだろうか。


『でも、これは彼との最後の約束なんだ』


『無理をさせてしまってすまない。だが、頼む。あいつを送ってくれ』


『文句言う割には、気遣ってくれるんだな』


『そうさ、しばらくはこの姿にはなれないね。でも道具はその道具らしい姿であるのが一番さ』


 沈黙。


『……さて、聞こえているだろう。これから君を『想域』に送る』


『そこがどう言う場所なのかは……細かいことは私にもわからない。私も置いて行かれたからね』


『……その手帳、読んだのだね。なら、君は返す言葉を探すべきだ』


『継いだものが現れて、だから滅びを受け入れるべきだなんて——あまりにも悲しすぎるだろう』



 †



 大量失血により薄れゆく意識の中で彼はあるものを見た。

 幅広の短剣だった。

 ただ、普通の短剣というには変なものではあった。

 金属製のように見えたその表面は透明な結晶体によるもので、そう見えていたのはその下の層にあったものだ。

 そしてその層の表面にはびっしりと細かな紋様が刻み込まれていて、柄頭と鍔には材質不明の宝石のようなものが埋め込まれている。


 見たことだけはある。龍剣(キャスター)ってやつだ。

 代議官になった方士に渡される短剣。ステータス以上の価値はないと思ってはいたが、先ほどのキョンシー兵の制御といいこの外見といい、変な剣だと思う。

 ちなみに蒼怜の分はない。先代がそれごと行方不明になってしまったためだ。


 話を戻そう。

 ……一番変なのはその短剣が宙に浮いていることだ。

 失敬なことを言う奴だなと抗議するように、宝石のようなものがチカチカ光る。


 ……変なことが立て続けに起こる日だな。


 幻覚ではあるだろう、多分。


 直後、蒼怜の胴体に何かが絡み付いた。

 何がと思う前に、彼の体は持ち上げられ、いつの間にか蓋が開いていた井戸の中に引き摺り込まれた。


 ——全く。なんて一日なんだ。


 次の瞬間、その声も体も、等しくエーテルの海へと叩き込まれた。



 †



 そして、その地域——天泊は、龍脈遺跡を中心に消滅した。

 消滅に際し、光と闇が、大気の消滅とその運動が大挙として訪れた。その大きさは直径約数十キロメートルにも及び、その光は遠いところに位置している新崑崙からも確認されたほどであった。


 爆心地たる遺跡で生じた現象——エーテル転化を伴う爆破消滅は、まず大地を抉ることから始まった。

 そして地下の龍脈に到達し、それも連鎖的に炸裂する。

 炸裂して開いた穴に大気が殺到して、その被害をさらに拡大していく。

 新崑崙に向けて連鎖が進まなかったのは、運が良かったとしか言いようがなかっただろう。


 高いエネルギーを内包した物質は、それを放出することで初めて安定化する。


 風とともに舞い上がったエーテルが冷えて、夜の海に大地に剣を突き立てたような状態がそれであった。


 翌明朝、天導連盟は一つの判断を下す。

 今回の事件により、レイライン計画における重要拠点である当該遺跡を失わせた芦淵流派に対し、責任を追及すること。その対応として、実行犯である蒼怜を重要参考人として引き渡すことと、芦淵流派一部施設——すなわち実行犯が立ち入っていた痕跡のあるものである——立ち入り調査を実行し、その間代議官の選出権を封印し代議官の証たる龍剣を直ちに引き渡せというものであった。


 しかし、彼の消息は依然として知れない。








Route α……END


Connect to……『Route β』


……Wellcome to ReConnection WORLD!!

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