1日目 リュベリック王国と私の生い立ち
色とりどりの果物が所狭しと置かれたお店に、商人が世界各国を旅して集めたという、美しい宝石や雑貨を売っているお店。
もちろん屋台も沢山あって、良い匂いが漂ってる。
私のおすすめは、この国の名物でもある水牛肉のジャンボ串と、可愛らしい花びらの形をした真っ白な砂糖菓子!
角を曲がった先にあるのは、幼馴染のウィルのお父さんが経営している酒場ね。
私も小さい頃からよく遊びに行っていたの。(もちろんお酒は飲んでないわよ!)
このリュベリック王国の市場は、近隣の国々でも特に栄えていて、稀にとんでもないお宝が売られていることもあるんだとか。
各地の商人にとっては、天国のような場所だって評判みたい。
あら、リュベリック王国を知らない方もいるかもしれないわね。
きっとこの伝記は海を跨いで色々な人々に読まれると思うもの。
リュベリック王国は、海に囲まれており、世界各地の商人が集まる貿易国。
海に囲まれているとはいうものの、緑豊かな森林もたくさんある広大な国よ。
そうね、王国の歴史については述べておこうかしら?
この王国は、昔からの長い歴史がある国なのだけど、その弊害として王族が力を持ちすぎていた時代があったの。
王族が民衆から搾り取った税金で贅の限りを尽くす一方、人々は貧困に喘ぎ、その日暮らしの生活を続けていたみたい。
でも、そこで立ち上がったのが前国王であるアラン様。
騎士団長だった若かりし頃のアラン様は、王様直下の騎士団をまとめ上げ、クーデターを起こすことで、王族を全員処刑した。
まだ幼かった次期王子まで処刑したことには、一部で批判もあったようだけれど、長い間苦しめられてきた多くの民衆にとっては、そんなこと何の問題もなかった。
そして、ヒーローとして崇められたアラン様は、そのままリュベリック王国の国王になったのだとか。
アラン様の手腕と、海の真ん中という王国の素晴らしい立地、そしてこの国独自の様々な技術によって、今では世界有数の交易中心地として繁栄するようになったの。
あら、いけない!
自己紹介が遅れたわね、ごめんなさい。
私は、ここで食堂を経営しているベンおじさんとアメリアおばさんに育てられた、マリエッタ。
みんなからは、マリアって呼ばれてるわ。
え?どうして2人のことをお母さん、お父さんって言わないかって?
実は、2人は私の本当の両親ではないの。
18年前、この国で初めてピンクの雪が降った夜、食堂のドアがノックされてアメリアおばさんが外に出ると、桜の形の髪飾りをつけた赤ちゃんと手紙だけが入った籐籠だけが置いてあったみたい。
その手紙には、
「マリエッタ すぐに迎えにきます。」
と走り書きで書いてあったんだとか。
そう、その赤ちゃんが私。
おばさん達は、私の両親に何かのっぴきならない事情があって一時育てられなかったんじゃないか、って思ってとりあえず預かることにしたそう。
でもその後18年間、私の両親は私を迎えに来なかった。
もちろん、アメリアおばさんとベンおじさんは本当によくしてくれている。
本当は血が繋がっていないなんて思いたくないほど、家族として温かく育ててくれた。
でもふとした時に、本当の両親のことが思い浮かぶ。
そして、彼らはもう迎えに来ない。私は捨てられた子なんだって自覚して、涙が溢れるの。
でもそんな日々も、ある日突然終わったわ。
この国の歴史を後世に残すために、私の体験をそのまま本にしてみれば?って提案されて書き始めたのだけど、思った以上に熱中してしまったわ。
今日は予定があるので、ここでお暇するわね。ごきげんよう。