セーブポイント
ダンジョンウルフとの対峙
ダンジョンウルフの赤い瞳が暗闇の中でぎらつき、低い唸り声が空気を震わせる。悠は全神経を集中させ、獣の動きを見逃さないよう短剣を構え直した。
「まずは一撃、当てるしかない……!」
ダンジョンウルフが足を一歩踏み出した瞬間、その鋭い爪が閃き、悠に向かって襲いかかる。
「速い!」
悠は咄嗟に横へ飛び退き、辛うじて直撃を避けた。しかし、振り下ろされた爪が岩壁を砕く音に、体が震えた。
「まともに食らったらひとたまりもない……!」
彼は慎重に距離を取ると、攻撃の隙を探し始めた。
ウルフが次に飛びかかってきた瞬間、悠は素早く体を低くし、短剣を振り上げるように突き出した。鋭い刃がウルフの脚をかすめ、獣が一瞬怯む。
「よし!」
手応えを感じた悠は、その隙を見逃さず前進し、再び短剣を振るった。しかしウルフはその巨体を軽々と跳ね上げ、悠の攻撃を回避すると再び距離を取った。
「やっぱり、動きが鋭いな……けど、攻撃は効いてる!」
戦いの中で少しずつウルフの動きが鈍っているのに気づく。どうやら悠の攻撃は確実にダメージを与えていた。
数分間の激しい攻防が続く中、ウルフの動きが目に見えて遅くなった。息を荒げながら悠を睨むその姿は、もはや追い詰められた獣そのものだ。
「これで……終わりだ!」
悠は最後の力を振り絞り、ウルフの横腹に短剣を突き立てた。その瞬間、ウルフは耳をつんざくような悲鳴を上げ、霧のように崩れ去った。
彼の視界に再び青白い画面が浮かび上がる。
「経験値を獲得しました。レベルが2上昇しました。」
悠は膝をつき、荒い息を吐きながらステータス画面を確認する。
•レベル: 4
•体力: 25/25
•攻撃力: 8
•防御力: 6
•敏捷性: 9
•新スキル: 『敏捷強化(小)』
「レベルが一気に上がった……それに新しいスキルまで!」
戦いの疲労を感じながらも、確かな手応えを感じた。目の前には、ウルフが残した大きな牙と黒い光を放つ「スキルの書」が落ちている。
「スキルの書:『獣の脚力』」
「これがさっきのウルフのスキル……」
悠はその場に座り込みながら、スキルの書を手に取り、使用するか迷った。しかし、これが自分をさらに強くする手段であることは明らかだった。
「ここまできたんだ……全部やるしかない!」
スキルの書を開き、「使用しますか?」の問いに「はい」を選択する。するとまたしても温かい光が体を包み込み、脚に新たな力が宿る感覚を覚えた。
「スキル『獣の脚力』を習得しました。」
戦いを終えた悠は、少しだけ余裕を持って周囲を見渡す。そして、先ほどの青い結晶が再び彼の視界に入った。
「この結晶、ただの飾りじゃないな……」
彼が結晶に手を触れると、再び画面が浮かび上がる。
「セーブポイントに到達しました。体力と魔力を全回復します。」
「セーブポイント?」
光が彼の体を包み込み、疲労がすべて消えていく。初めての本格的な戦闘を終えた彼にとって、まるで天の助けのようだった。
「よし、これならまだ進める……次はどんな敵がいるんだ?」
悠は短剣を握り直し、結晶の奥に続く通路へと足を踏み出した。彼の旅はまだ始まったばかりだった。