攻略開始
「ステータス画面」
悠の視界に浮かぶ青白い画面には、見慣れない情報が羅列されていた。
•名前: 篠崎悠
•レベル: 1
•体力: 10/10
•魔力: 5/5
•攻撃力: 3
•防御力: 2
•敏捷性: 4
•スキル: 無し
「……なんだこれ?」
悠は戸惑いながらも、画面を手で触れてみたり、目を閉じてみたりした。しかし、画面は消えず、まるで彼に情報を突きつけているかのように漂っている。
「まさか、ゲームみたいにスキルとかレベルがあるってことか? いやいや、そんなバカな……」
しかし、現実にスライムを倒し、この画面が出てきた以上、何か特別なことが起きているのは明白だった。
悠は洞窟をさらに奥へ進むことにした。外はまだ雨が降り続いており、ここで立ち止まっていても何も解決しないと判断したのだ。
薄暗い通路を進むと、次第に道が広がり、先には広い空間が見えてきた。その中心には、まるで宝石のように輝く青い結晶が立っている。
「……なんだあれ?」
結晶に近づこうとした瞬間、通路の影から別の魔物が姿を現した。それは、2メートル近い大柄な体を持つ狼のような獣だった。しかしその体はどこか歪んでおり、鋭い牙と真紅に輝く目が異様な迫力を放っていた。
「ダンジョンウルフ」
悠の目に再び青白い文字が浮かび上がり、魔物の名前とともにその情報が表示された。
•名前: ダンジョンウルフ
•レベル: 3
•攻撃力: 7
•防御力: 5
「ヤバい、こっちの攻撃力3じゃ絶対勝てない……!」
悠は棒を構えたものの、明らかに分の悪い戦いに冷や汗が止まらなかった。しかし、目の前の魔物も彼を狙ってゆっくりと距離を詰めてくる。
「逃げるしかない!」
悠は踵を返して全力で駆け出した。洞窟の中を必死に走る彼を、ダンジョンウルフが執拗に追いかけてくる。足音がすぐ背後に迫り、捕まるのは時間の問題に思えた。
そのとき、悠の視界に別の通路が見えた。左手に曲がり、その狭い道を進むことで魔物を振り切ろうと考えたのだ。だが、その瞬間に気づいてしまった。
左手の通路は崖になっている。
「マジかよ……!」
足を止める暇もなく、悠はそのまま道を踏み外し、再び深い闇へと落ちていった。
気を失った悠が次に目を覚ましたのは、見知らぬ空間だった。そこには、先ほど目にした青い結晶が輝いていた。どうやら下の階層へと落ちたらしい。
「……まだ、生きてるのか」
悠は体を起こし、結晶に触れてみた。すると、またもや青白い画面が現れた。
「ダンジョンコアにアクセスしました。攻略を開始しますか?」
「攻略……?」
その問いに戸惑いながらも、悠は「はい」を選択した。すると、彼の手元に淡い光とともに一本の短剣が現れた。
「初心者装備:鋼の短剣」
「やっぱり、これってゲームみたいな世界なのか……?」
次の瞬間、結晶の光が一層強まり、彼の周囲に幾体ものスライムが現れた。
「この先に進むには、戦うしかないってことか……!」
悠は短剣を握りしめ、腹を括った。これが、彼のダンジョン攻略の本格的な始まりだった。